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60話 2度目のケンカに負けはない


今回は少し長めです! どうぞ!




「リサード……ッッッ!!!」



オボロはリサードの上体を少しあげ、呼びかける。

呼吸は何とかしているようだが、いかんせん浅い。

コヒューコヒューとか(よわ)い呼吸の音が(のど)から鳴らされている。



「……耐えてくれ。 リサード。」



〈インベントリ〉を発動し、緑色の液体の入ったポーションを取り出す。

だが、これで必ず助かる訳では無い。 回復薬とは言わば、細胞活性剤(さいぼうかっせいざい)と言ったところで、治すのはリサードの体なのだ。

それに、瀕死(ひんし)の状態で使えばリスクも伴う。

無理やり、流し込めば体が負担に耐えきれず死期(しき)を早める可能性が高い。


そのため、初めはあまり負担のかからない低いポーションを少しずつ与える。



「……頑張れ、生きろリサード。」



口の中に微量(びりょう)ずつ含ませる。 そして、様子を見て繰り返す。



「………………………………。」



「…………クッ。」



依然(いぜん)として呼吸は浅い。 正直生きているのが不思議なくらいだ。

そこらに()まっている血の量は致死量(ちしりょう)とやらを超えているのではないかと言うほど出ているように見える。


だからと言って……


諦める訳にはいかない!


その時だった────────



「これは………………」



オボロはつい目を(うば)われてしまった。


リサードの血……。 何気ないその赤の中。


まるで、生きているかのように美しい(へび)が映っているように見えた。


────────────。



「…………ハッッッ!!!」



「……フン!!」



大きな衝突。 魔力と魔力がぶつかり合い、轟音(ごうおん)を掻き立てる。


オボロはいつから確信していたのだろうか。

彼女の潜在(せんざい)能力を。


あの、氷の女王ミラと張り合っている力を。


────────氷系魔法


────────氷系魔法



「「……フリーズ・スピア。」」



同じ魔法がぶつかり合い消滅(しょうめつ)する。

だが、少しミラの魔法の方が威力が高いように感じる。

互いの魔法は消滅するものの、マリンの方に寄ってから消滅する。 これは威力に差があることを意味している。



「……ふむ。」



ミラは攻撃の手を止める。


すると、マリンもまた攻撃の手を止める。


さきほどからミラは疑問を抱いていた。


それは、


マリンが自分と同じ魔法しか()ってこないことだ。


時間稼ぎ……?


しかし、ダンジョンが崩壊(ほうかい)したとはいえ入口はまだ持つ。 入口が消えるのはまだまだ先のはずだ。

このままそこまで耐えきるつもりなのか……?


いや……


……その線はない。


ミラはマリンから目を離さず、冷静に頭を回転させていた。



「……もう終わりですか? 」



「……フッ。」



耐えきるという線がない理由は明確だ。


リスクが大きすぎる。


自分と対等の魔法(まほう)を撃てるマリンであれば自分を倒して、進むとした方が普通(ふつう)だ。 魔法の威力が同じでも、ミラとマリンではそこに()めている魔力(まりょく)の量が違う。

長引かせれば圧倒的振りに(おちい)ることになる。 そうであれば、出し惜しみせずぶつかりあった方がリスクが少ない。


だが、何故そうしてこない……。



「……勝つ気がないのか……?」



「……? 何を言いたい訳?」



マリンは無表情を貫く。



「……小童(こわっぱ)が……。」



すると、────────


ミラはなにかに気づく。


(おそ)らく────────



「……そうか。」



「……………………?」



ミラは何か確信めいた表情を見せる。

すると、両手を広げてあろう事かオートの防御魔法を無くして見せた。 これで正真正銘のミラ。 彼女を守るものは無い。



「ああ……。」



「ッッッ……。 何を?!」



マリンの表情がここで初めて(くず)れた。

思い出しかのように、指を鳴らす。

すると、────────



「ッッッなぁ?!」



「……ッッッ!!!」



リサードとオボロの周りを巨大な氷の壁が(おお)う。



「あなた何を考えて……」



「こうせねば後ろから攻撃されてしまうだろう?」



無防備な状態を貫いているミラ。


そして、────────



「……チャンスをやろう。」



「……チャンス?」



「そうだ……。」



無防備な状態のまま、前にゆっくりと歩き出す。

先程よりも(しん)に近づけた。


しかし、何故だろうか……


その姿には気迫(きはく)があった。


ジリっと下がるマリン。



「……私は今から1分間。お前の攻撃に対してのみ、防御及び回避行動を制限しよう。 」



「……は?」



「聞こえなかったか……?」



「…………………………ッッッ。」



冷たく(りん)とした声がマリンに向かう。



「私は今から貴様の攻撃を避けぬと言ったのだ。 」



マリンは歯を食いしばる。



「どうした? チャンスだぞ……? 今なら私を倒せるかもしれんな……。」



「……グッ。」



「……ほれ。今からだ。」



だが、マリンは動けないでいる。


オボロは立ち上がり、氷の壁に手を当てる。


(あつ)い。 だが……


オボロが魔力を込めようと来た瞬間(しゅんかん)────────



「……グッッッッ!!!」



「……ッオボロ!!! 」



手を当てていた壁から氷針(ひょうしん)が突き出し、手を貫く。



「……貴様は動くな。 30……」



重く冷たい言葉が空気を走る。


まずい……


この状況は非常にまずい。


恐らく、マリンとオボロが考えていた策の中でも上位にくるまずい状況に置かれているだろう。


感づかれてしまう……


いや、もうもしかしたら……



「……45。 あと15秒だ。」



ミラの指定した1分間は刻々(こくこく)と進んでいく。


歯を食いしばり、何かを必死に模索(もさく)していたマリン。

苦肉(くにく)の表情で腰に手を伸ばす。


いけない!!!



「……マリンッッッ!!!」



オボロは壁を叩き、呼びかける。 氷針がオボロの手を貫く。 しかし、オボロはお構い無しに呼びかけた。


だが、────────



「……ごめん、オボロ。 もう……」



マリンは腰からムチを取り出す。


ここで、逃げても同じこと。 だったら、少しでもダメージを与える!


────────無系(むけい)魔法


「……ほう?」


無系魔法……。 この、千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスに無系魔法とな?


「……クロス・ウィップ!!!」


マリンは白く伸びるムチで精一杯ミラを叩きつける。

しかし────────


────────────。


ぺしッ。


「………………………。」


出来たのはかすり傷。


「うりゃあああああ!!!」


ペシっ、ぺしっ


空気を切る音と、力の無い音。



完全にバレたようだな……。



ミラの体は生身でも精錬(せんれん)されている。

通常のマリンの技では、ダメージすら与えられない。



「……60。 ……ビンゴだな。」



ミラはそう言ってニヤリと笑う。

薄々(うすうす)、気づいていた違和感の正体。

なぜ、彼女が同じ技で相打ちばかりを狙っていたのか。


勝つ気が無かった……?


違う!!


……それしか出来なかったのだ!



「……私の魔力(まりょく)をコピーして出していると言ったところか。 なるほどなるほど。」



「……ッッッ!!!」



「確かお前は他人の魔力に寄せるのが上手かったな? まさか……ここまで出来るとは驚きものだ。」



ミラは続ける。



「……しかし、攻撃魔法のみで対象に自分が含まれているものに限る。 彼らに放った攻撃を防ぐことは出来ない。 だから、自分に対象を向けさせた……とな。」



冷や汗が駆け抜ける。



氷の女王……。 その名前は伊達(だて)じゃない。

コピー能力はまだしも、魔法の特徴までも全てを当てられてしまった。



「……まだ諦めない。」



「ククク……。 いや、それでも充分素晴らしい力だ。 マリン? 今からでも遅くない。 戻ってこい……。 クズ(ども)といるとお前もクズになってしまうぞ?」



「……このッッッ!!!」



マリンは怒りに震えた。



「……私の仲間をクズ呼ばわりなんて許さない!!! 」



マリンはミラを(にら)みつけた。



「……それに、仕組みがわかったところでさっきと同じ! (しの)いでみせる!!!」



「……これでもか?」



ミラはその手の先をマリンから、オボロとリサードに変える。

これでは、コピーできない!



「……クソッッッ!!!」



あの、か弱いマリンがここまで頑張っているのに!!!


(おれ)が足を引っ張って……



「……死ね。」



「……ッッッ!!!」



────────────────────。



目をつぶりリサードを(かば)おうとするオボロ。

しかし、衝撃は来ない。


な……ぜ……?


すると、────────



「……う、うう……。」



「マリンッッッ!!!」



「っハハハハハッッッ!!! マリン? 何だそれは?」



オボロの前にはボロボロのマリンが立っていた。


なんと、ミラの攻撃とオボロたちの間に割り込むことで対象に自分をわざと入れ込み、相打(あいう)ちで防いで見せたのだ。


しかし、当たる寸前(すんぜん)で放った魔法は威力を殺しきれず、マリンの体を(むさぼ)っていた。



「……ごめん。 オボロ……、(わたし)。」



「……もういいんだ。 マリン……ッッッ!!!」



「……(さら)にダメ出しと行こうか。」



「ミラァァァァッッッ!!!」



オボロは雄叫(おたけ)びをあげ、壁に頭を打ち付ける。 魔力は空で体もガタがきている、こんなときに!!!



「……私も限界を超えてみせるんだから!!!」



「……マリンッッッ。」



────────氷系魔法


────────氷系魔法



「「……ヘイル・バーンッッッ!!!。」」



(すさ)まじい相打ち。


魔力がぶつかり合い消滅する。


だが、────────



「……ガハッッッ!!!」



「マリンッッッ!!!」



マリンの体から血が流れ出す。 限りない戦闘不能。



「……な……んで……。」



ミラは表情を変えず、口を開いた。



「この魔法は発動者(はつどうしゃ)に対し、大きな反動が起こる。 私は耐えられるがな……? どうやら、お前の体は無理なようだ?」



「……く……そぉ……。」



もう(すで)に、マリンの魔力(まりょく)コピーの抜け穴をズバスバと突いてきていた。

マリンは必死に起き上がろうとするが力が入らない。


すると、オボロが魔力を右手に集める。

もちろん魔力は(から)だ。



「……オ……ボロ。」



魔力は無い。


────────なら!!!


命を燃やしてでも!!!



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」



「……フッ、無理に魔力を使おうとな。 戦う前に死ぬぞ?」



「……やってみせる! 限界を超える!!!」



────────ここ……で……



「ウッッ……。 」



ゴプッと口から赤い液体が込み上げる。


大量の血。 体の力が抜け切る。


クソッッッ……


何で動けねぇんだ俺は……!!!



「……これで終わりだな……。」



マリンは2人を見下す。


そして、────────



「最後に何か言い残したことは無いか?」



ミラは(てのひら)を上に向ける。



「……どうせなら、お前ら全員。 いや、このダンジョンの魔獣共々すべて一緒に殺してやろう。」



ク……ソ……


マリン……と、リサー……ドだけで……も……


助けな……



「ククククククッッッ!!!」



ミラの手に魔力が集まる。


マリンの声もしない。


視界が暗闇(くらやみ)に染まる。


だが、オボロの頭にはある光景が浮かんでいた……


リサードの飛び散った血が……


まるで生きているかのように見えた先程(さきほど)の光景……


何故、今更(いまさら)これが……



────────ゾクッ



オボロの背中に悪寒(おかん)が走る。


次はマリン。



────────ゾクゾクッ



「………………。 ……?」


そして、────────



「……貴……様…。」



ミラ。


掌の魔力が急にしぼんでいく。


一体何が……


オボロは力を振り(しぼ)り、顔だけを動かす。


そして、────────



「……ングッッッ!!!」



口に冷たい何かが入ってくる。


これは……!!! 回復……薬……!


……おいおい。


オボロはその光景に対し、死ぬ前にはいいものが見えると思った。


こんなピンチ……。


ここぞという場面。


誰もが諦め、死を直面に感じた時に立ち上がれる男。

誰よりも諦めが悪く、周囲を常に驚かせ続ける。


そんな男をすっかり忘れていた。


オボロは液体を飲みほし、振り絞ってその名前を呼んだ。




「頼むぜ……リサード。」




オボロは意識を失う。


だが、その表情に(くもり)はなかった。


マリンもまた涙だけを流し、静かに目を閉じる。



「……ほう? まだ動けていたのか小僧(こぞう)が……。」



ミラは怒りを(あらわ)にする。


静寂(せいじゃく)


────────────。


それに対する返事はなかった。



しかし、ミラの瞳の中。



その(ひとみ)の中には……



しっかり、そしてはっきりと



赤い目をした青年がそこには映っていた。






「最後のリターンマッチ……。 もう負けねぇ……。 俺(たち)は、もう負けねぇ!!!」







────────────────────────────────────Next➥







バトル開幕!!!

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