51話 地獄門ステファニー
前回の続きです。 どうぞ!
「ステファニー……。」
マリンはそう呟き、息を呑む。
マリンは頭の中でその名前を思い浮かべる。
固有魔法。
ある昔話がある。
魔法と言う概念が無かった頃と言われる程、遠い昔の話。
そして、魔法という概念を作り上げた最強の魔術師の話。
とても昔で、伝記などに乗っているがいつの時代だったかなどは書かれていない。
7人の賢者ほど有名ではないが、魔法を扱うものなら知っているのではないか。
名前や詳細など乗っておらず、ただ最強の魔術師と書かれている。
だが、ここで大事なのはそんな男が作りし、固有魔法だ。
彼は、自分の固有魔法に名前をつけ子供のように可愛がっていたという。
だが、それとは裏腹に彼の固有魔法は世界を壊すほどの猛威を隠し持っていた。
彼は最初にして最古、原点にして頂点と歌われていた固有魔法を死に際、ある強力な魔法により後世へ残し、適正者が現れるとその身にその魔法を宿す……という伝説。
ざっくり話すとこのような感じだったと思う。
この伝説が、固有魔法をファーストネームと呼ぶようになったきっかけでもある。
そして、今でもその習慣は生きている。
その魔法を扱える者達は絶大な力を手に入れ、その魔法の名前をファーストネームとして、自身を呼ばせる者もいる。
そう、本当のファーストネームのように……
そして、この魔法を使える者達はいずれもどちらかに分けられる。
伝説保持者
神に嫌われし者
その者達はこの2つに分けられるのだ。
決定的な両者の違い……それは、英雄と称される華やかな存在か、犯罪者、極悪人等の忌み嫌われる者達であるかということである。
だが、言ってしまえばそれだけなのだ。
彼らはどちらにせよ固有魔法を持つ者には変わりない。
ただ、認識の違いでしかないのだから……
マリンがそう考えている時だった────────
強い光。
オボロの声がそれを実現していた。
「……飲み込め。 無限連鎖の扉。」
白い闇から禍々しい扉が現れ、上空にその入口を向ける。
戦車なら軽々通してしまいそうなほど巨大な門が現れ、
そして、扉は開いた。
────────ギィィィ。
マリンは何故、固有魔法の話を思い出したのかもう確信していた。
名前はステファニー。
可愛らしい名前とは裏腹に、万物をこの世から隔絶する固有魔法。
最も、この魔法は違う呼び方の方が多い。
地獄門。
神に嫌われし者の1人、悪魔の使いオボロ・ヒデトラの固有魔法。
マリンはここで初めて知る。
リサードを助けようと、招き入れた客はゲイ・ボルグと同じ脅威とされる者だったという事を。
そして、目をつぶる。
音は錆びたような扉を思わせ、ゆっくりと開く。
気絶しているリサードは、今目の前で起こっている魔法が、魔法の中でも最高位に君臨するほどの技であることは知る由もないだろう。
そして、ゲイ・ボルグもまた威力をあげる。
そして、────────
雷撃のような轟音。
両者が重なり合う。
「キャッッッ!!!」
「……ッ。」
ダンジョンの入口である異次元空間に出来ていたヒビが、サビのように剥がれ始める。
入口が崩壊しかけている……。
ランダムに飛ばされるかもしれない!
「手を掴め!! マリン!!」
オボロがリサードを抱え、手を差し伸べる。
私は……
手をとるべきなのだろうか……?
分からない……。
この人の手を取ったら、それこそ……
私は戻れない。
マリンは戸惑いを見せた。
私は、ギルド、リオンズハートの一員としてタブーリストの男達を倒すという使命をも持っているのだ。
ミラがやり過ぎているということと、リサードの覚悟を見て助けに入ったまではよかった。
だが、まさかそれが''敵''であるタブーリストの男をを助けることになるとは思いもよらなかった。
今なら戻れる……? いや、もしオボロとみんな知っていて、私が助けているところを見ていたら……?
みんなは信じてくれるのだろうか?
そんな考えばかりが浮かんでいた。
「マリン……」
オボロがそう言って、手を伸ばす。
私は……
マリンの頭に様々な記憶がよぎる。
……………………………………………………
「今回の依頼にマリンは……」
「連れていかぬ。」
仲間の声に、ミラがそう即答する。
「なんで?!」
ミラに抗議するマリン。 しかし────────
「ダメだ……。」
「私ってそんなに頼りない?! お姉ちゃん! 私だってッッッ!!」
マリンがそういった時だった。 背筋に強烈な悪寒。 まるで激痛のように走る悪寒がそれ以上、言葉を発せさせなかった。
「……随分な物言いだな? 」
ミラはゆっくりマリンに近づき、耳元に口を寄せ、囁く。
「のう? マリン……?」
「……………………………ッッッ。」
ブルブルと肩を震わせるマリン。
「お前は、私の言うことを聞いておけば良いではないか……?」
「あぁ………ッッッ。」
「おやおや、震えてかわいそうに……。 私はどこへも行かぬ。」
「……フーッ。 フーッ。」
そう言って、マリンの頭を撫でるミラ。
だが、その光景は微笑ましいと言うより、飼い慣らすと言った方がしっくりときていた。
「では、作戦を隣で話す。 ……マリンは自室に戻るといい。」
そう言って、つかつかと隣の部屋に移動するミラ。
「よいな……?」
「……………………………。」
マリンは答えることすらできず、ただその場にうなだれることしか出来なかった。
………………………………………………………………………
今思えば私はなんてことをしたのだろう……
あの姉が狙っている敵を助けた……
いくら妹と言えど、今回は……
「……っっっハァ! ううッッッ。」
過呼吸を引き起こし、呼吸ができない。
「……ハッ……ハッ……!」
「マリン……どうした?!」
時空の歪みがひどくなり、重力の感覚が消えだしている。
誰か……ッッッ!!!
マリンは最後の力を振り絞り、叫んだ。
「お願い……」
もしかしたら、私は姉に……
涙がボロボロと流れ落ちる。 視界はぼやけ、意識が朦朧とする。
私は自分じゃ動けない……
惨めだ……。
いっそのこと……
……死んでしまえたら、楽なのに。
こんなこと……ならッッッ!!!
マリンは本音をついに吐き出した。
「誰かッッッ……私を……さらっ……て……よぉぉ!!!」
ダメだ……
最後の力を振り絞り、出した言葉がこれだ……
こんなのあんまりだ……よ……
意識が闇に落ちかけたその時だった。
「ンンッっっ!!!」
「……………………………。」
二酸化炭素が入り込み、徐々に気分を落ち着かせる。
ぼやけていた視界、麻痺していた感覚が徐々に戻ってくる。
そして、────────
唇に暖かい感触。
「ぷはぁッッッ!!!」
「フゥ…………………………。」
体に体温が戻る、そして同時に深い眠気。
しかし、先程とは違う暖かな眠気。
一体何……が……
「……オボ……ロ……」
異常に近い所に、オボロの顔がある。
そして、────────
「……そうだ。 俺の名は大悪党オボロ・ヒデトラ。 」
そして、マリンをしっかりと掴んだ。
「マリン……。」
その目は強かな覚悟をヒシヒシと伝わらせた。
「……お前をさらいに来たッッッ!!!」
「…………………………ッッッ。」
オボ……ロ……
時空が悲鳴をあげるのと同時に、マリンの意識はそこで途絶えた。
────────────────────Next➥
バイトの面接に行くのが結構緊張しています。




