いつになったら素直になれますか?
デミウルゴス編は終了です! 新しい章に入ります!
驚くほどの快晴。 台風が去ったあとのような雲一つない空。 暖かい陽射しが大陸を照らし、草花の朝露を輝かせている。
ハースハイト王国の広間。 商店街の中心にあるため賑わいは常に絶えない。
だが、今日はまた一段と賑わいが激しかった。
「また、リサードがやったらしいぜ?」
「本当に強ぇなぁ。 最近は前にも増して精が出てるんじゃねぇか?」
「キャー、リサード様こっち向いてー!」
などと、広間に集まった人々は口々に言い、広間の中心を堂々と歩く白髪の青年を見ていた。
「………………………………………。」
彼の名はリサード・ブルオスト。 七星剣の4柱にして、不運に見舞われし青年。
「………………フゥ………………。」
彼は人混みには目もくれず、王都まで歩き、任務執行の手続きを済ますと王都の中に設けられたリサードの部屋に戻った。
あれから1月ぐらいたっただろうか。
デミウルゴスとの戦いの後、ジュードは大罪人として追われる身となった。 彼はその後もハースハイトを逃げ回っていたが、ある時確かな情報筋から大陸外に出たとの情報により、ハースハイトに常駐していたマリン達もこの大陸をあとにした。
今回の戦いで、ハースハイト王国は相当な痛手を負った。
元老のサージェスト・ゼーノスの裏切り、その件によって重傷を負い意識を失ったエドワードとサラ。 更には突如消えた七星剣の3人、シャーベット、ブラッド、アリエッタの行方がまだ掴めていない。
一部情報では裏切りを測り、謎の男と大陸外に行ったという情報もある。
これだけで既にハースハイトの戦力はガタ落ち、壊滅的な打撃だ。
実質動けるのは、七星剣のキラとリサード、王国騎士団、イレブンノートとなっている。
「……こんなことをしてる場合じゃねぇんだけどなぁ……」
そして、もう一つ。 リサードには悩みがあった。
「……どこに行っちまったんだよ、クロエ……」
リサードは、今まで要らないと言っていた空き部屋を貰い、そこで寝ていた。
大陸の外にいる……風の噂でしかないが、それを聞いた時リサードは悪寒が走るのが伝わった。 何故か、それは嘘ではないような気がしたのだ。
助けに行きたい、探しに行きたい……しかし、デミウルゴスの作っていた嵐の障壁などは無くなり、大陸外から新種のモンスターも入ってくる。
ここで自分がいなくなれば更に戦力は落ち、ハースハイト王国はさらに危機に陥る。
一体俺は……どうすればいい……
すると、────────
バンッ。
急に部屋のドアが開く。
「ヨォ。 へタレ。」
「…………………………………?」
ドアの方を見ると、紫髪の青年キラが立っていた。
彼も重傷を負っていたものの、すぐ治療したのもあり、回復していた。
「任務なら執行したよ。 ちゃんと手続き……」
「そうじゃねぇよアホ……」
キラはドアを閉めると壁にもたれかかる。
「お前いつまでそうしてんだって言いてぇんだよ。」
「……いつまで?」
「わかってんじゃねぇのか……?」
「……………………………………。」
リサードは腕で瞳を隠しため息をつく。
「……こうしてる間にも、クロエ王女は……」
「……うるせぇよ。」
「あ……?」
キラは寄りかかるのをやめ、前のめりになる。
リサードもまたゆっくり背を起こし、キラを睨みつける。
「……お前には関係ねぇだろ。 一々……」
「オメェそれ本気で言ってんのか……?」
「だったら何だ。」
「テメーこのク……」
バンッ。
「リサードっ! エドワードさんが!……ってキラ?!」
ドアが開かれる。 威勢よく入ってきたのは、シルビアだった。
だが、部屋の険悪なムードを感じ取ったのか、少し身じろぎするが、すぐ立ち直った。
「意識が戻ったよ。 2人とも早く来て……ってだけ、。」
「わかった。」
そう言ったのはキラだった。
「俺はシルビアと先に行く。 話は後だ。」
ドアを閉め、廊下を歩く音が消える。
チッ。
小さく舌打ちを打つリサード。
「言われなくても……」
とりあえず、俺も急いで行くか……
リサードは重い体にムチを入れ、病室に向かうことにした。
……………………………………………。
「失礼します。」
病室に入ると、キラとシルビアがベッドの横に座っていた。
そして、────────
「リサードか……。 久しぶりだな。」
薄い青の簡素な服を着たエドワードが寝ていた。
傷は回復魔法であらかた治っているものの、言えば人の体だ。
急速に治せば体は追いつかないし、神経の回路の動きに違和感を感じたりする。
多少の傷は魔法で治るが、大きな傷だとゆっくり体と順応させながら治すのがベストだ。
「久しぶり。 体の具合はどうだ?」
「ああ、まだ違和感は残るがな。 寝ている間の治療が効いた。 」
「よかったよ。 」と隣にあったイスに腰をかけるリサード。
「……いろいろ大変だったな。 そんな時に呑気に寝ていて俺は……」
「いや……」そう言うと頭を下げるリサード。
「……俺が捕まっている間いろいろ動いてくれていたんだろ? こんな俺のために……むしろ感謝してる。」
「ハハハ……相変わらずお前は自分の評価が低いな。 」
すると、ハァと溜息をつき立ち上がるキラ。
「……じゃあ、俺はこの辺で。」
「キラ……。」
バタンと閉まるドア。
「……私も行くね。」
「……………。」
またもや、ドアが締まりパタパタと足音が消えていく。
「……………………………………………。」
少しの静寂が流れる。 静寂を破ったのはエドワードだった。
「……話をしてもいいか。」
「………ああ。」
唐突にエドワードが核心に入る。
「話は聞いたよ。今、この国がどういう状況に置かれているか。 いろいろ大変なことが起こっていたってこともな。 ……それに、クロエ王女のことも……。」
「…………………そうか。」
「………………………………。」
リサードの表情は変わらない。
だが、────────
「そのことについて力になれるかもしれない……。そう言ったらどうする?」
「……なん……………。」
つい興奮してしまいそうになるリサード。
だが、すぐに気持ちを落ち着ける。
「……コレは俺の問題だ……。 アンタには関係……」
「おい……」
胸ぐらを掴まれるリサード。
「何でも1人で抱え込んでんじゃねぇよ。 人間頼れるくらいが1番いいんだガキ……」
「────────?!」
「……だったかな……?」
エドワードはそう言うと、手を離しリサードに懐かしげな目を向ける。
一瞬ビックリするが、すぐに理解した。
「……ハァ……そうでしたね。 降参です。」
そう言って、両手をあげ降参のポーズを取るリサード。
いつも背中を追っていた。
いつしかいなくなってしまったが、それでもリサードの胸に強く残るその光景。
懐かしき師、トルネの顔を思い出す。
「……そういう事だ。 頼ることは強さ。 頼り切ることは弱さ……。トルネさんは言っていたじゃないか。 少しは頼ってくれてもいいんじゃないのか? 俺にも……そして……キラにも……。」
「……エドワード……。」
少し緊張した面向きで、姿勢を正す。
「……じゃあ、あの……1ついいか……?」
「うん……? 何だい……?」
ニヤニヤと聞き返すエドワード。 「クッ……。」と詰まってしまうが、リサードは深呼吸をした。
「……クロエを助けに行きたい……。 力を貸してほしい……。お願い……します……。」
リサードがそう言うと、肩にエドワードの手のひらの感触が伝わる。
「ああ……。 頼ってくれてありがとう。 俺からもよろしくな、リサード。」
「ありがとう……エドワード。」
すると、胸元から畳まれた小さな紙を取り出すエドワード。
「……クロエの件、その代わりと言っちゃ何だが、その前にコレをキラに届けてくれないか? 」
「……コレを……?」
「頼んだぞ。 」
「……? わかった。」
そう言うと、ゴキゲンな様子で「〜♪……。」と近くに置いてあるリンゴを丸かじりするエドワード。
それを受け取り、席を立つ。
そして、「じゃあ……」と言うとドアに消えるリサード。
その後ろ姿を見送る。
日差しが部屋の中を照らし、窓から外を眺める。
「……若いっていいなぁ……。」
「……なぁ……ジュード。 」
エドワードはそう言うと、リンゴをもうひとかじりした。
……………………………………………。
急にどうしたんだろうか、と思いつつ手紙を受け取り、部屋をあとにしたリサード。
「とりあえず、アイツの行きそうな所は……」
そう言って扉を閉める。
すると、────────
「……キラ?!」
「………………………………。」
病室を出てすぐの所にキラが寄っかかっていた。
「……お前何でここに?」
「……何だっていいだろうが、お前に関係ねーだろ……」
そう言って、フイッとそっぽを向くキラ。
少しの静寂が流れ、気まずい雰囲気が流れる。
すると、キラがどこかへ歩きだそうとした。
「待ってくれ……。 その……話がある……。」
「何だよ……。」
リサードがそう呼び止めると、キラは立ち止まり振り返った。
そして、勇気を振り絞り頭を下げるリサード。
「……さっきは悪かった。 関係ないとか言って……。 」
「……………………………………。」
「その……」
「……………………………………。」
リサードの言葉が詰まる。 しかし、頭をあげキラの目を見てハッキリと話す。
「今更図々しいんだが、クロエが心配なんだ……。 頼む。力を貸してくれないか……? 」
キラの表情は変わらない。
「あ、あとエドワードから……。」
そう言って、手紙を渡す。 キラはそれを受け取ると、その場で開く。
だが、────────
ビリッ。
「────────?!」
読むなり前を紙を破る。 そのまま、振り向き直し、歩き出すキラ。
だよな……今更……。
あんな態度取ったくせに許してもらえるわけ……
すると、────────
「ん……?」
インベントリに何かが届く。
すぐにインベントリを開き確認する。
«キラさんからアイテムが送られました»
インベントリにはそう表示されていた。
そして、────────
「……明日の昼。 3番街の出口……。 そこでアルベルトって奴にそのアイテムを見せろ……。」
そう言って、曲がり角を曲がっていくキラ。
その真意が何かはわからない……
けど……
「ありがとうキラ!」
「…………………………………。」
キラの返答はない。
そのままキラは廊下の奥へ消えていく。
リサードが見えなくなり、曲がり角を曲がるキラ。
「良かったねっ! 」
曲がり角を曲がるとシルビアが立っていた。
「……見てたのかよ……。」
「うん♪ 最初からねっ。」
「……チッ……。」
「ふふ……。」
そう言って、キラの隣に並ぶシルビア。
「キラが準備してたの……。 私知ってたしね。」
「あっそ………………………………。」
「うん……………………。」
歩く音だけが響く。
いじり過ぎちゃったかな……。と少し反省するシルビア。
すると────────
「……何か飯でも食うか……?」
「────────?!」
「行きたくねぇなら、いいけどよ……」
スタスタと早歩きになるキラ。
立ち止まりその後ろ姿を見るシルビア。
素直じゃないなぁ……
シルビアは顔をほころばせると走り出した。
「もちろん行くっ!!!」
────────────────────────────────────────
新しい章スタートです。 こりゃー大変じゃあ笑




