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23話 リサードとクロエ

土曜日にあげると言っておきながら、予定がたくさん詰まってしまい、ギリ土曜日?(正確には日曜に)上げることになりました。 今回はリサード君の話です。23話どうぞ。



ハースハイト国を東に向かって行ったところに大きな墓地がある。

今から30年ほど前くらいだったであろうか。五刃の葬事件と呼ばれる当時の七星剣のメンバーが5人も命を落とす魔獣との争いが起こった。

その舞台となった地、今は五刃墓地と呼ばれ、5人の七星剣の墓の他に様々な墓が建てられている。大きなものから小さなものまであり合わせると数十キロもの広さを誇る。

空はいつも厚い雲があり、1年中気温の変化は少なく雷がなり続いている。

また、いつも夜のように薄暗く、五刃の葬事件の時の魔力の残り香が漂うため、それらを求め、危険度の高い魔獣などが引き寄せられるように集まり、群れで生息している。

その五刃墓地の特性と凶悪な魔獣たちを利用し、造られた監獄がここには設置されている。


「はぁ……なんで俺、こんなところにいるんだよ……。本当に意味がわからねぇ……」


五刃墓地、デスペリア監獄の牢屋に白髪の青年、リサード・ブルオストは収監されていた。


「誰かいませんかー!? お話がしたいんですがーー!?」


もうずっとそう叫んでいるリサード。暗い鉄格子が並ぶ廊下に声が反響する。

デスペリア監獄は建物の1階から地下5階まであり、リサードは5階に閉じ込められていた。もちろん声など外に届くわけもなく、更には建物の周りには結界のような術式に加え、武器や防具は取られており、凶悪な魔獣達と丸腰で戦わけなければならないという二段構えだ。

地下に行けばいくほど凶悪な囚人や死刑間近の者などが収監されており、空気は殺伐としていて気を抜けば刺されるのではないか、と彷彿させる様なシンとした空気に包まれている。


「うーん……」


しかし、それにしても静かすぎた。それに、誰もいない鉄格子しか見えない。もしかするともう、みんな死んでるとかないよな……。と不安に駆られる。


(返事無いし……もう1回叫んでみるかな……)


「すいませぇぇぇぇーー……?!」


すると、ガァンッと鉄格子を叩く音に虚を突かれ体がピクッと反応するリサード。

どうやらすぐ隣に誰かいるらしい。全く気配がわからなかった……


「うるさい。少し黙れ。」


「あ、すいません……」


怖っ!!

爽やかだが、どこか重々しい声が響き、反射的に謝ってしまう。

でも、ここで黙っていても何も変わらない。意を決して話しかけてみることにした。


「…………………。」


「あの……」


「……………………。」


「ここから出る方法を探してるんですけど、何か知らないですか?」


「……………………。」



ははーーん…… この野郎………

あくまでコミュニケーションは取らないってか……。

こうなったら………!!


「出しやがれこの野郎!!」


────ガァンガァンガァン!


鉄格子に蹴りをいれるリサード。


「……………………。」


黙ってんならそれはそれでいいさ。どうせここじゃあ新人だしな。

仲良くする気はこっちもない。


────光系魔法


光系魔法の〈フラッシュ〉を発動させる。

だが、


「くっっ……」


ん? 魔力がうまく使えない。


「ぐっっ………」


やっぱり魔力封じみたいな、魔法の類が使われてるか。さすがに、そこまでセキュリティ甘くないよな。


だけどやれるだけのことはやってやる。


「ぐおおおおおおおおおッッッ!!」


踏ん張って光系魔法 〈フラッシュ〉を手のひらの上に作ろうとするが、指先からチリチリと煙が上がるくらいで何も起こらない。


「だけど、諦めるわけにはいかないなぁ……!!」


ハースハイトを毛嫌いしていたクロを連れてきたのは俺だ。内情は知らないが、どこかで休ませるだけならいいだろうと考えていた。 なのに、何故俺はここにいる。俺がついてないとダメだろ!

指先が熱い……くそ……手だけじゃなく体まで熱くなってきやがる……


「もう……少し……」


ゴンッと隣から叩かれるが、リサードも無視をし返してさらに続けようとする。

すると────


────ピキッ


なんだこの音は……?


何かが崩れるような音。その音のする方を向く。


「なっっ……」


壁に小さなヒビが……


「おい……」


「────?!」


隣の男がリサードをそう呼ぶ。


「……ここで魔法を無理やり使えば燃え死ぬぞ。」


ご忠告ありがたいが、だからといってやめるわけにはいかない。


「……だから、どうした……」


「……俺はでなくちゃならねぇ……」


「……………………。」


手のひらの感覚がなくなってきた。体全身から煙が少しずつ出てきており、手のひらはもう限界に近い。


「……………。」


すると────


「……目を閉じ、体から力を抜け。意識するのは魔法ではなく、対象物をどうしたいかを意識しろ」


突然、話し出す隣の囚人の男。


「……いきなり……何言ってやがる……」


「黙って従った方がいいぞ。誰かを本気で助けたいと、ここから出たいと望むのならな。」


「────?!」


「さぁ、やれ。」


目を閉じ、体から力抜く。自然体で立ち意識を少しずつ手から檻に変える。

体から熱が引く。光系魔法が消えていく。


「魔法を意識するな。お前の中に眠るもう一つの流れる力を意識しろ。」


流れる力……?


「お前が魔力を引き出す時、体を流れる魔力は何回りだ?」


そう質問され、不審に思いながらも質問を理解する。魔力を引き出す時、体の中にある魔力の存在を認識しなければならない。

その体の中に存在する、血管の様に流れる魔力は人によって右回りに回っているイメージと左回りに回るイメージがある。

リサードも最初は何を言っているのか理解するのに苦労したが、非常に重要なものだ。

リサードで言えば、魔力は白で、キラキラと光りながら流れている川の様なもの、と言うように、しっくりと来るイメージをきちんと持つことが重要になる。


「……右回りに回るイメージだ。」


「そうか。だったら、その右回りに流れる魔力を意識し続けろ。」


体の中に流れる魔力に意識を向ける。魔法は使えないが、体の中の魔力が無くなっているという訳では無いらしい。


「では、その魔力の流れを止めろ。」


「…………は?!」


魔力の流れを止める? 一体こいつは何を言ってるんだ? 魔法学校だって魔力は自然に流れるままにして、流れに逆らわないように向きを変え、そのまま引き出すようにと教わる。 そうした方が負担なく発動することができ、迅速に魔法を放つことができる。


「魔力を止めるなん……」


「言った通りにやれ。」


うぐ……下らないことだったらマジで許さねぇからな。

しかし、上手くいかない。止めるってどうやるんだ。


「その魔力の川には魔力だけではなく、破力という流れが混じっている。破力は油をイメージしろ。水の上に垂らした油の様なものだ。魔力の中にあるが、決して交わらないもの。」


必死にイメージを探るリサード。すると、白色の魔力の中に赤い斑点のような、交わることのない力が流れている。


「……イメージは赤色。」


「そうか。では、その破力を逆流させてゆっくり魔力を止めろ。」


ここは信じてやりきるしかない。

魔力の中に混じって流れる赤い破力。それを、少しずつ逆流させる。

すると、体の中を流れていた魔力が白色の魔力がゆっくりと流れを止め、破力がだんだん浮き彫りに増えていく。

体が熱くなってくる。頭がいっぺんに覚えとようとして、追いついてこない。


「ここまでにしておく。目を開けてみろ。何か見えないか?」


そう言われ、目を開けるリサード。しかし、鉄格子と向かいの誰もいない牢屋。冷たい壁に囲まれた牢屋しか見えない。

何が目を開けてみろだよ!なにも変わんねーよ!、と文句を言おうとしたところであるものに気づくリサード。


「うおっっ!!」


壁の隅から黄色い糸のように細い魔力の流れのようなものが伸び、自分の体に流れている。

よく目を凝らせば、四方八方から体に伸びているではないか。

手で振り払おうとするが、透けて手が宙を切るだけだ。


「黄色い糸のみたいな奴が俺に!」


「それが、ここで魔力の使えない正体だ。そのエネルギーは魔力の流れを止めて一切を絶たないと見えない。」


そう言われ、思わず感心してしまう。魔力を絶つなんて考えもつかなかった。この監獄に来るような莫大な魔力を持つ者達には見えない。つまり、この設計上強ければ強い魔力の持ち主ほど格好のエサという訳だ。

しかし、魔力を絶つなんて俺の回りではこんな発想をするやつはいなかったはずだ。この監獄を作ったやつは俺達七星剣よりずっと魔力について詳しい。そう考えるとかなり、上層部の人間……?

若しくは……


と考えていると隣からスッと座る音が聞こえる。

そういえば、この隣の囚人は何でこんなこと知っているのか、何故、ここにいるのかなど気になってしまった。


「教えてくれてすまん……

なぁ、名前聞いても大丈夫か?」


「………………………。」


沈黙を了承と受け取り、話を続けるリサード。


「俺はリサード・ブルオスト。好きに呼んでくれて構わない。お前は?」


そう聞くと、少し間が空いたあと囚人は答えた。


「……俺の名はザーバス……。 ザーバス・エイフォード。俺も好きに呼んでもらって構わん。」


最初よりは結構、進展出来てきたんじゃないか?


「わかった。 教えてくれてありがとなザーバス。 」


「お礼はいいさ。それに俺が教えたのは絶望だ……。 それが見えたところで出られるわけじゃない。」


そう落ち着いた声で話すザーバス。しかし、この事を知っているのと知らないとじゃ全然違うよ、と気さくに返事を返す。

また、リサードには一つ気になっていたことがあった。


「ザーバス。お前が殴った壁にヒビが入ったろ。俺が殴ってもビクともしないこの設備を……」


「……………………。」


「俺はこう見えて強さには自信があるんだが、お前は相当強いだろ?」


そう聞くと、ザーバスはゆっくりと答える。


「破力の応用技と言ったところだ。 これを使えるか使えないかでは今後、特にお前にとっては生死に関わってくる。」


「……? どーゆうことだ?」


リサードがそう答えると、ザーバスは1度呼吸を挟み話し始めた。


「リサード・ブルオスト、七星剣の四柱を務める男。身寄りは無く、元七星剣である''聖剣のトルネ''に育てられその勧めで入隊。」


それを聞いて一気に警戒レベルをあげる。


「……よく調べてるんだな…? 王国でもほとんど知られていないトルネさんとの情報まで知ってるなんてな……。」


「フンッ……裏じゃ有名な話だ。リサード、お前もなかなか敵が多い男よ。」


「敵が多い……?どういう意味だ……?」


「そのままの意味だ。 元老会のゼーノスにハメられ、逃亡中のクロエ姫を死中に晒し、守る手立てを奪われ死を待つ者。嫌われ者でなくて何者だというのだ?」


それを聞いて、背筋に緊張が走る。

何故ここでクロエ姫が出てくる……

確か、エドワードに結婚がどーたら言われたが俺はするつもりは無い。あの頃と違って、俺はほおっておけない奴が……


「………どうかしたのか? リサード。」


だが、何か引っかかる。元老会のゼーノス? いや違う……。このモヤモヤは何だ。


「そのクロエ姫がどうし……」


まてよ、逃亡中だった……?!?!


まさか────


……………………………………。


ふと、リサードがクロと喋っていて気になっていたことを思い出した。


高そうなペンダントに扮した宝具、武者との戦いの時に着ていた値の張りそうな防具といい、どこかいい家のお嬢さんだと思っていたこと。

そして、

名前を聞いた時、何か言いかけていたような……

たしかあの時、


『俺の名はリサード・ブルオスト。』


『私は……クロ……』


『クロの続きは?』


…………………………………。


「……クロ……エ……」



「クロが……クロが……クロエ姫……だと……。」




気づくとそう口に出していた。

クロエ姫。王都でエドワードにお見合いしろと言われたハースハイトの第六王女クロエ姫とクロが……

今まで黙っていたザーバスに問いかける。


「その、クロエ姫が……どうかしたのか……?」


すると、フンッとまた鼻で笑うザーバス。


「クロエ姫だと気づいていなかったのか……。お前にとっては衝撃だろうが、慰めている時間はない。」


隣から淡々とそう響く。


「…………なぁ……一つだけいいか?」


俯き、静かな声でリサードはそう言う。

ザーバスもまた落ち着いた声で答えた。


「……なんだ?」


「クロは……クロエは……何故ハースハイトの元老会に追われている……。」


そう言うと少し沈黙があったあと、突如昔話のように語り始めた。


「昔、7人の賢者に倒された魔獣属の王様格が生き残っていた。その魔獣の名は鬼神デミウルゴス。 奴はハースハイトを襲い人間を喰らう際、ある者達に目をつけた。」


「ある者達………?」


「ユーフェミア家の人間達だ。特にその家系の女は凄まじい力を持っていて、デミウルゴスはその家系の女達を喰らう為に一つの条件を出した。」


「……………………………。」


ユーフェミア家……。


「数百年に一度、ユーフェミアの家系の女を生贄として差し出せばハースハイトを襲う事はしないと……。 当時、七賢者も七星剣もいなかったハースハイトはその条件を飲み、またユーフェミア家も皆を守るため自ら生贄に立候補し、その生贄として捧げられる女達を生贄の姫……生贄姫として祀った……そして、生贄の日は30年前8回目を迎えた。ここまで言えば察しの悪いお前でもわかるだろう……?」


リサードは答えない。ただ、ひたすらに耳をすませていた。


「丁度30年前に生贄を出さず、七星剣の5人が死に、娘を守るためある母親が生贄となった。しかし、それでも機嫌を治さないデミウルゴスはその娘をも要求している……。 それを拒めば、近いうちにまた同じ惨劇は起こる。」



そう言うと、ザーバスが立つ気配がした。

しかし、リサードは何も考えることが出来なかった。

そして、ザーバスは衝撃の事を……リサードが最も聞きたくなかった言葉を告げた。





「ハースハイト王国。また、この大陸全土を守るにはシルエ・ユーフェミア王妃の一人娘、クロエ・ユーフェミア王女。通称生贄姫と呼ばれる彼女を捧げなければ……」


────と



────────────────────────────





生贄姫はそういう事でした。生贄だから生贄姫って単純過ぎない?みたいな事は昔のハースハイト人に言ってください笑

ザーバスはまだどんな見た目をしているか、リサードも分かりません。新キャラたくさんですが、あまり難しく考えず読んでもらえれば光栄です。

では、何かありましたらご感想、ご指摘等々コメントにてお待ちしております。貰えると励みになりますので、コメントやブックマークなどお待ちしております!

では、また今度もよろしくお願いします。


土佐犬都より

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