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22話 バイオレンス・ゼーノ

22話です。宜しくお願いします!

今回もリサード君はお休みです。


ハースハイトの朝。機嫌のいい天気とは裏腹に、第六皇女の部屋では険悪に満ち満ちていた。



「お嬢様っ!!」


「────爺?!」


────ゴスッッ


「う、うぐぅ……」


リサードにクロと呼ばれている少女、クロエを庇い、蹴りを正面から受け、うずくまる白髪の男。

執事クラウス。オールバックに、口ひげを蓄え、キチッとした執事姿に身を包んでおり、昔はすご腕だったであろう風格感じられる。


「爺やっ!!」


そう言うと、倒れ込む爺やと呼ばれる男クラウスに駆け寄る。


「お嬢……何ともござりませぬ。」


それを聞いて、怒りと何でこうなってしまったのかと言う無気力感に襲われる。

その考えを振り切るように、キッとその蹴りを放った男を睨みつける。


「ゼーノス!爺やは悪くないわっ!もう辞めてください!」


ゼーノスと呼ばれた男は、眉間にシワを寄せ、イラつきを見せている。年齢は40そこらだろうか。黒のオールバックにサングラスを乗せ、高そうなスーツに身を包んでいる。ゴツゴツしたアクセサリーに身を包み、カジノに通っていそうな風貌だ。


「このクソ女が……生意気に……」


────グイッッ


「キャッ……」


手を掴まれ、そのまま宙吊りの状態にされる。


「大体は貴様が逃げ出すような真似をしたからこうなったのだ。」


「……痛い……離して……。」


ギリギリとクロエの腕をつかみ、余裕の表情で宙に浮かせたまま淡々と話を続ける。

腕に指先がくいこみ、骨が軋む。


「フッ……いくら逃げたとて、俺の工作員が何度でもお前を連れ戻す……この鳥籠になぁ?」


その言葉を聞いて、またキッと睨みつけるクロエ。


「リサード君はあなた達の手先なんかじゃない!嘘ばっか言わないで!!」


「いーや……? どうだろうなぁ? 俺に逆らえる奴はこの国にはいないはずだからなぁ?」


そう言うと突如、瞬きをした瞬間に目の色が変わる。

いや、色というよりその物が変わると言った方が適切かもしれない。

ギョロっと爬虫類の様な目になり、クロエから目を外し、蛇のような眼光でクラウスに目を配る。


「あ……ああ……」


ゼーノスと目が合った瞬間、クラウスは目が離せなくなり、震え、呼吸もままならなくなるほどに怯えだした。


「やめて……爺やにこれ以上ひどい事しないで……」


「…おやまあ、優しいなぁ? 姫ぇ?」


そう言って、クロエの瞳を見つめる。クロエもゼーノスを睨みつけ、目がピッタリ会う。

しかし、クラウスの時のように変化は無い。

すると、


────ゴッッ


「ガッッッ……」


クロエの顔面に巨大な鉄拳が炸裂し、地面に叩きつけられる。鼻から血が垂れ、涙がにじみ出る。


「本当に気持ちわりぃなぁ? 俺と目を合わせ続けてなんで平然としてられるんだコイツは……」


そう言って、近寄り更に蹴りを入れる。


「うぐッ……うぅ……カハッ…」


「おのれぇ……ゼーノス。 貴様ァァ!」


立ち上がり、牽制するクラウス。

腰に差してある剣に手を置く。


だが────


「おいおい?」


ギョロっとまたしても、クラウスに視線が注がれ、体が硬直する。


「試しみたらどうだ? 俺もその方が好都合でなぁ? なんせ次期元老長のこの俺に刃を向けたなんてなったら、お前はお役御免で後は好き勝手コイツを痛ぶれる……それに、」


「あの元老会のクソ共はもはや俺の手中にある。元老長のアホはしつこいがもうすぐ崩落するなぁ……。」


「フーッ……フーッ……」


「……おっと、無駄話はこの辺にしておこう。」


剣を引き抜こうと必死に柄を握ろうとするが、その手に力が入らないクラウス。

それを見て、ニヤッとしたままクラウスに近寄るゼーノス。


「ああ……」


そう言って、何かを手のひらを叩きわざとらしく手を打つ。


「その年齢だ。手が震えるんだろう? 私が手伝ってやろうじゃないか。」


そう言って、柄に手をかけているクラウスの手の上から剣を持ち、引き抜く。

そして、そのまま腹に差し込む。


────ザクッ……


ボタボタっと血が湧き出る。


「ウグッ……ゴフっ……」


口から血が垂れる。

それを見て、大笑いするゼーノス。


「ハッハッハ!間違えてお前に刺してしまったよ!これは失敬!」


「爺……や……」


クロエが力を絞り出し、爺やを呼ぶ。

ゼーノスはゆっくりとクラウスの腹から剣を引き抜き鞘に戻す。

そのまま倒れ込むクラウス。床に血が広がっていく。


「貴様ごときがつけあがるんじゃない……」


そう言ってまた高笑いし、瞬きをした瞬間目が普通に戻っていた。

ドアまで行き、クルッと周り礼儀正しい挨拶をするゼーノス。


「では、また訪れますので……。

お元気で、生贄の姫サ…マ…♡ 」


ククッと笑い、扉が閉まる。


ズズっと体を引きずって、クラウスの元に近寄るクロエ。クラウスの背中に手を乗せると、緑の光が体を包む。


────回復魔法


「キュア・フォース……」


血が吹き出ていた傷口がみるみる塞がる。

そして、自分にも回復魔法を使い、砕けた骨を治す。

しかし、完全に治りきらずアザや殴られた腫れなどはそのままだ。


「爺や……」


「……………………。」


気絶しているようだ。心臓も動いている……。よかった……。

本当に……


「うぅ……うっ………。」


ゼーノスの笑い声が頭に残る。目から涙が自然と溢れてくる。

私はまた戻ってきてしまった……。起きたらこの部屋に連れてこられていた。リサードの姿はどこにも無く、もしかしたらアレは夢だったんじゃないかとさえ思った。


「リサード君は……」


そう言葉に出ていた。

彼のあの強さ、そしてハースハイトで制服を着ていたこと。彼が、七星剣なのでは無いかと容易に想像できる。

部屋に軟禁されていたクロエでも七星剣がハースハイトでどんな存在であるかわかる。彼らは、言い換えれば……


「……国の英雄……。」


そう……。わかっていた。こんな所でくたばっている自分とは釣り合わないこと。それに加えて、私はリサード君を、剣の呪いを使ってそばにいようとさえした……。

私のハースハイトでの立ち位置を知って、呆れるのも当然。


こうなって当然だった……。


全部。全部…。全……部………。


「ひぐっ……うぅ……」


でも……


でも……あと少しだけでよかった……。


「もう…少し……」


涙が止まらず、鼻水も止まらない。

私はあの時……少しでも、近づけたって思ったよ……。リサード君……。


「…もう少し……、夢見てたかったぁ……」


第六皇女の部屋と称された軟禁部屋にクロエの泣き声が響きわたった。


「助けて……」


声にならないほど小さな空気の漏れの様な音。


「助けて……リサード…く……ん……。」


そう言って彼女から泣き声が聞こえることは無く、床にひれ伏した。



✕ ✕ ✕


その日の夜。コツコツと軽快な革靴の音が響き、ドアが開かれた。


「失礼するよ……。エドワード君。」


そう言って扉が開き、振り返ると、エドワードは息を飲んだ。


「ゼーノス殿……。」


そうして、片膝をつき挨拶をするエドワード。


「わざわざ足をお運び頂き恐縮でございます。言ってくだされば、私が出向きましたのに……」


片膝をつき、頭を下げて挨拶をするエドワードの横をスッと通り過ぎるゼーノス。

エドワードがそう言うと、ニコッと笑い、エドワードの顔をあげさせる。


「ハッハッハ。そんなにかしこまらなくていいんだエドワード君。君の活躍はいつも聞いているよ。」


膝を曲げ、主に使える騎士のような格好をとっているエドワード。

エドワードはこの男について調べていた時期があった。元老会の中で最も若くして入った、新人ゼーノス・サージェスト。

新人と言えば聞こえはいいが、この男は計り知れない部分がありすぎる。

元々軍人だった彼は、その異様な強さから七星剣に誘われていたがそれを断り、単独でモンスターを狩り大きなギルドを作りあげメキメキと権力を拡大させていった。 そのギルドは、モンスターの狩りから時には殺人、盗人、など依頼は何でもやるというもので、今では無くなり、何故か記録からも消されている。ギルドマスター〈ゼーノス〉。


当時は暴力の化身〈バイオレンス・ゼーノ〉と呼ばれていた程、やりたい放題な男だった。


しかし、その後彼はその前科を持ちながら突如元老と言う立場につくことが出来ている。さらに、元ギルドのエリートたちも着いてきているという噂だ。

この男が元老会に入ってからというもの、元老長やその他のメンバーもやつれてきているように見える。

表立って動きはしないが、少なからずあったハースハイトのボイコット等もこの男のおかげでパッタリと消えた。

何を企んでいるかは知らないが、奴と関わるとロクなことが無いのは重々知っている。


「お褒めに預かり光栄でございますゼーノス殿。 此度はどう言ったご要件でしょうか?」


「ああ、そうだった……!この部屋に入ってすっかり忘れてしまっていたよ。久しぶりに君の顔が見れて嬉しくてねぇ……」


そう言って、笑うゼーノスに対しハハハと困ったように相槌を打つエドワード。


「処刑日時を決めたんだ。早速この情報を回して欲しくてね。」


「────?!」


処…刑……日時…?


その瞬間ブワッと冷や汗が止まらなくなるエドワード。

今この単語が出るということは……

あの件しか……


「そ、それは、大A級誘拐犯リサード・ブルオストの……」


そう言いかけたところで、ゼーノスは続ける。


「そうそう…!よくわかったね。 一国の大事な姫を攫うなんて殺人より重いとは思わないかい? だから、早めに処分しておこうと思ってね。」


そう機嫌の良さそうに話すゼーノス。少しムッとし反論しようと試みる。


「ですが、ゼーノス殿。」


「……え………?」


しかし、エドワードがそう口を挟もうとした途端に空気が重くなる。


「ですが……? なんだい……?」


急に息苦しくなるが、なんとか声に出すエドワード。


「お、お言葉ですが……リサードがやったという証拠がまだ見つかってない状態では……」


「へぇ……」


顔を上げることの出来ないエドワード。

すると、コツコツと歩きながら話し始める。


「証拠ならあるさ。」


「……と言いますと…?」


ニヤッと笑うゼーノス。しかし、エドワードにはその表情は見えていない。


「姫をさらっていくところを、私が見たんだ。バッチリこの目でね。なんなら、証言台に立とう。」


「────?!」


何を言い出すかと思えば、この男ッ!

なんて、横暴過ぎる考え方なのだろうか……。さすがに、これを認めるわけにはいかない。


「コレで証拠は充分さ。さぁ……」


「それだけでは……」


またもや、空気が重くなる。

コツコツと言う革靴の音が近くなり、エドワードの目の前で止まる。


「それだけでは……なんだ……? 言ってみろ……………。」


「ぐ………………ぁ……。」


おかしい。声が出ない。なんだこの男の重圧は。どんなに強いモンスターと対面した時でもここまでの恐怖は無い。恐怖が足にまで回って両足を床につける。


からだが……動かん……。


「ハァ………」


エドワードが動けずにいると、ため息をつくゼーノス。


「この後も忙しくてね。あまりこの問題に構ってられないんだ。後は頼んだよエドワード。」


そう言って、肩に手を置くゼーノス。

エドワードは顔をあげられなかった。肩に置かれた手から何かとんでもない重量で押さえつけられたように体全てが硬直し、頷くことしか出来なかった。


「ありがとう。流石話がわかる男だよ。」


そう言って、ドアを開けるゼーノス。


「こんな夜に済まなかったね。では、これで失礼するよ。」


そう言って、ドアが閉まる。


「…………………………。」


部屋には静寂と、まだ動けずにいるエドワードだけが残された。









コツコツコツ……


部屋から出たあと、廊下に革靴の音が響き渡る。


「私にアレを使わせるとは……、余程リサードと言う男を守りたいらしい……」


そう言って、ニイッと口角を上げ舌ずりをする。




「………ますます危険な男だ……。私ほどではないがね……」





そう言うと、ククッと笑いゼーノスは闇の中へ消えていくのであった。






こんにちは、土佐犬都です。



新キャラがたくさん出てきて、少し難解だと感じる方も多いでしょうがご了承くださいm(_ _)m

他の方の作品に比べてなかなか登場人物が多いかな?とは思うのですが、それだけやりがいと幅が広がって俄然やる気が出てきて、かいてておもしろいんですよね笑


では、ご感想や、ご指摘、誤字脱字など何かありましたら感想やTwitterもやってますので気軽に送ってもらえるとありがたいです。

今回はこの辺であがります。ここまで読んでいただきありがとうございます(まだまだ続きます。)

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