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09 師匠も変態だった件

A級冒険者のグランに学園に戻るまでの間、剣の訓練をつけてもらえる事になった。事前に俺が高い魔力を持っているが、魔法を放てない事、剣については素人であると説明してある。


そして俺たちは再び訓練場に戻ってきていた。


「よし、じゃあまずアイリの能力を見させてもらおうか」


「能力ですか?」


「そうだ、まず基礎体力からだな、とりあえず限界までこの敷地内を走ってみるか、もちろん魔力を使うのは禁止だ」


「限界まで……分かりました」


このアイリーン・キャンベルの体で、どこまで走れるか物凄く不安なのだが


「そうだ、その装備を外して身軽にして走るといい」


「了解しました」


やっぱり体力が無さそうに見えるから気を使われたんだろうか、まあ正真正銘お嬢様だからな、だがこれで少しはマシになるかもしれない。


俺は装備を外してから敷地内を走り始める。


「アイリ頑張って下さい!」


「まかせろ!」



数分後・・・・


「ハァハァ……もう……走れ……ない」


俺は直ぐに体力の限界をむかえる。すでにフラフラで走っているというより、歩いているだけだ。情けなくて泣けてきた。


「うむ、やはり俺の目に狂いはなかった」


「たしかに素晴らしい走りでした」


あきらかに駄目だったと思うんだが、二人から絶賛されてしまう。というかあの二人はいつの間に仲良くなったんだろうか?さっきまでは、けっこうギスギスしてたんだが……主にリーニャだが。


「そう……ですか?」


未だに息が整わない俺は、肩で息をしながら疑問を口にする。そして二人を見ると同じ場所に視線が釘付けになっている。それを目線を追うと、汗で体に服が密着しボディラインがハッキリでてしまっている、俺の胸だった。


俺が視線を戻すと、二人とも示し会わせたかのように別の方向に視線を移していた。


「リーニャ……」


「誤解ですアイリ!」


俺がジト目でリーニャを呼ぶと、俺が何も言ってないのに弁解する。有罪確定だ。


「まったく……それよりグランさんは、軽く犯罪ですよ」


「何を言うか! 教え子の全てを理解してこそ、きちんとした指導が出来るってもんだ! その大きさ、形に張り……お前は10年に一度の逸材だ!」


「……」


俺は絶句した、こいつはリーニャを越える変態野郎だ、しかも誤魔化す素振りもみせないとは、何故俺の回りにはこんなのばかりなんだろうか。


もう俺ではこのバカ達を捌ききれそうにない、諦めようと思う。


「もういいです……訓練を進めましょう」


「お主も大変じゃの」


ミューに励まされながらも、俺の訓練は続いた。



あれから俺は基本的な剣の型から、技を一通り教えてもらいその日の訓練を終える。


「もう腕が上がりません、師匠」


「まあ……体力と筋力に関しては、人並み以下だからなあ」


そうなのだ、箱入りお嬢様であったアイリーン・キャンベルの体は基本的な体力・筋力がなく、このままでは訓練にならないということで、体力や筋力疲労を回復してくれるポーションを飲みながら、無理矢理訓練を行った。


ちなみにこの方法だが、体に悪影響はないらしい、強いて言えば酷い筋肉痛とこのポーションが一本銀貨1枚程かかることくらいだろうか?


「さあアイリ、ポーションです」


「二人とも鬼だ」


「これもアイリの為です。我慢してください」


俺はリーニャからポーションを受け取り、一気に飲み干す。これで何とか動けるようになった、というかグラン師匠は言動こそはアレだが、訓練は的確でさすがはA級冒険者といったところだろう。だがかなりスパルタで、もう少し優しくしてくれてもいいと思うが。


「だがまあ剣の腕に関しては、かなりの才能があると思うぞ? 教えれば直ぐにものにしちまうからな」


「たしかにの、魔力のコントロールもセンスがあるしの」


そうなのだ、このアイリーン・キャンベルのスペックの高さは、かなり凄いと自分でも思う、一度教わればある程度できてしまうのだ。


「それじゃあ今日はここまでだな、明日からは朝この訓練場に集合だ」


「分かりました、今日はありがとうございました」


「おう! 明日からもビシバシ鍛えてやるからな、今日はゆっくり休め!」


そう言うとグラン師匠は夕日に向かって町の中に消えていった。恐らくキレイなお姉さんのいるお店にでも行くのだろう。


「アイリ、私達も屋敷に戻りましょう」


「そうだな、リーニャも今日は付き合ってくれてありがとう」


「はい、アイリの為なら何日でもお手伝い致します。……私も役得ですし」


最後にリーニャは何か呟いたようで、俺は首を傾げるとリーニャは「何でもありません」と言って、ニッコリ笑っていた。まあいいかと馬車に向かおうとするとミューから衝撃発言が飛び出す。


「そうじゃ帰り道に馬車の中で、魔力コントロールの練習をしながら帰るのじゃぞ」


「冗談だろ?」


「冗談なわけなかろう、お主今日は魔力を使っておらぬし、馬車の中でも基礎練習くらいできるじゃろう」


「ミューも鬼だ……」


こうして俺は全身の筋肉痛に苦しみながら、馬車のなかで魔力コントロールの練習をしながら帰った。



キャンベル家の屋敷に戻ってから、お風呂に入りサッパリしてから自分の部屋でくつろいでいると、父の書斎にくるようメイドさんが呼びにきた。

何だろうと思いながら、俺はメイドさんの後について父の書斎へと向かう。


書斎の前にくるとメイドさんが中に声をかけ、了承を浮けると扉を開けてくれる。俺は「ありがとう」とメイドさんに声をかけて部屋の中に入る。

メイドさんは、やはりと言うべきか驚きの表情を浮かべていた。

さすがにまだこういう反応が返ってくるが、そのうち慣れてくれるだろう。


「失礼します、お父様何か私に御用でしたか?」


「アイリーンか、そうだなまず椅子に掛けなさい」


「はい、失礼します」


そう言って俺が席につくと、父も正面の席に座る。


「体の調子は大丈夫か?」


「はい、もう問題ありません」


「そうか、それと最近はリーニャと共に都内を視察しているのだったな」


「はい、本日も様々な場所を視察して、大変勉強になりました」


実は冒険者ギルドに入って、剣の稽古をつけてもらっているとは言えないので、都内を視察し市井の人々の生活を見て勉強をする、という口裏合わせをリーニャにしてもらっている。


「そうか、まあ領民の事を知るというのも大切だからな、だが東地区の端には行くなよ? あそこは素行の悪い冒険者や亜人なんかも多い、いくらリーニャがいるといっても、危険だからな」


「はい、もちろんです」


俺は内心ドキリとしながらも、表情に出ないようになんとか返答する。

それから俺はいくつか父と話をしてから部屋に戻った。



「お嬢様、旦那様はどの様な御用件でしたか?」


部屋に戻るとリーニャから父の事について聞かれる。ちなみに屋敷ではリーニャはお嬢様呼びにもどる。


「まあ軽い世間話と東地区の端には近づかないように注意された事くらいかな?」


「そうですね、貴族の方はまず東地区の端には行きませんから」


普通はそうだろう、あそこはスラム街があるし、決して悪い人間だけではないが、治安がいいとも言えない。


「まあリーニャがいれば安心だな」


「お任せください、ですがお嬢様も十分お気をつけください。」


「もちろん、それに私も身体強化が使えるし、いざとなれば戦えるから」


「そうなのですが……とても公爵家御令嬢のセリフではありません」


リーニャはそう言いながら苦笑いをしている。俺も同じく苦笑いをしてしまう。たしかにどこの世界に自ら戦う公爵令嬢がいるんだろうか、まあここにいるわけだが。


「それじゃあ明日も厳しい訓練があることだし、寝ようかな。」


「そうですね、それがよろしいかと思います」


俺がベッドの中に入ると、続いてリーニャも入ってこようとする。


「リーニャここは私のベッドなんだが?」


「はい、とてもお疲れのお嬢様に添い寝して差し上げようかと」


「いや、いらないから……」


俺がいらないと言うと、渋々といったかんじで諦めてくれた。

リーニャに添い寝なんかされたら、ドキドキして眠れなくなってしまう。


「ではお嬢様、お休みなさいませ」


「ああ、お休みリーニャ」


そう言ってベッドに潜り込むと、俺は相当疲れていたんだろう、直ぐに夢の中へと落ちていった。



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