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02 転生したら女になっていた

         02 異世界に来たら女になっていた


目覚めると俺はベッドの上で横になっていた。起き上がり辺りを見回すとあきらかに高価であろう家具や調度品がならんでいる。一つ一つが俺の一ヶ月分の給料より遥かに高そうだ。


(ここが異世界?何で俺はこんな場所にいるんだ?)


そんな事を考えながら周囲を見ているとふと自分の着ている服が目にはいり、俺は驚愕する。


「え?これって女物の服じゃん!?」


そう俺が来ていたのは、これまた高級そうなネグリジェだったのだ。このすごくいい肌触りは絹であろうか。だがそんなことよりもさらに驚愕させられる事実に俺は気がつく。


「胸…だと?」


そこには健全な男子であればだれもが大好きであろうオッパイがあった。

大きさはCカップくらいであろうか。俺は恐る恐る自分の胸に触れる。


「やっやわらかい…」


そのやわかさを楽しんでいるとハッと我にかえる。だが目の前に男の夢と希望が詰まったこんな素晴らしい物があれば、健全な男であれば触れてしまうの仕方ないことではないだろうか?


「いやいや!こんなことをしてる場合じゃないだろ!?それに声も女の声になってるし!」


どういう事だと辺り見回し鏡を見つけて、俺は慌ててベッドから飛び出して

鏡の前まで駆け寄る。


「なっ!?」


そして鏡には背中の辺りまで伸びた漆黒ともいえる綺麗な黒髪、瞳の色は綺麗なエメラルドグリーン。少しつり目で強気な印象だが、全体的に整った綺麗な顔、きめ細かい肌。そしてスタイルも抜群で身長は165センチくらいで歳は16前後だろうか?そんな美少女が写っていた。


「なんで俺が女の子の姿になってるんだ!?」


鏡の前で突然の事態に思考がついていかず何故だと叫んでいると、部屋の中央から魔方陣が浮かび上がる。


「魔法陣?」


そして一瞬光ったかとおもうとそこには、黒猫がいた。


「黒猫って!お前イリス様の使い魔の!?」


いきなり魔法陣から現れた黒猫に俺は驚き思わず問いかける。


「そうじゃ、わしは女神イリス様の使い魔であるミューじゃ。お主の補佐役としてイリス様に使わされた。転生は無事成功しておるようだしよかったの。」


そんな俺の問いにこのミューという黒猫はそう答えた。人間の言葉でだ。


「猫がしゃべった!?」


「何を言っておる。使い魔なんじゃし当たり前じゃろう?」


何をそんな当たり前な事を、という顔でミューが言葉を返してくる。

そんなこと知るわけがないと思ったが、口にはしない。なんか深く考えたら負けな気がするし、ファンタジーな異世界ということで納得しておく。それにそんなことよりも聞きたいことがあるからだ。


「まあいいや、それよりもいくつか質問があるんだが」


「ふむ、わしが答えられる事であればかまわんぞ?」


「じゃあまずはなんで俺が女になっているかという事と、ここが何処かといこと、あとは俺が前に居た世界とこの異世界での違いを教えてくれ。」


俺はなんとか落ちつきながらも気になっていたことをミューに質問する。


「そうじゃのう、何から話すべきか…」


俺からの問いにミューは考えるそぶりをしている。俺はゴクリと唾を飲み込み緊張しながら続くミューの言葉を待つ。


「よし、まずお主のその姿じゃがの、その体の元持ち主の名はアイリーン・キャンベルという、その娘は自ら命を断っての、そしてなかなかの魔力を秘めておった。鍛えればけっこうな使い手になれる可能性があったのでイリス様はその娘の肉体のみを残し、お主の魂を別の世界から引っ張ってきてアイリーン・キャンベルの肉体に転生させたというわけじゃな。」


今さらだかようやく自分がこの世界に連れてこられた理由を知った。

だか俺は魔法なんて存在しない世界の人間だ。そんな俺よりもこの世界で魔法使いの魂を転生させた方が良かったんじゃないか?そう思い俺はミューに聞いてみる。


「それならもともと魔法使いの奴を転生させたほうが手っ取り早いんじゃないか?」


「いやそれは無理なんじゃ、まずこの世界の者の魂を別の体に転生させるのは、神々のルールで禁止されておる。それに死んだ者も1日以上たつと他の魂を転生させることもできなくなるのでの、それでタイミング的にお主が選ばれたわけじゃ。」


なるほどなんで俺がと思っていたんだが全くの偶然か、もしかして俺は選ばれし者なんじゃ?とか思っていたさっきまでの俺を殴ってやりたい。


「そういえばこの娘、自ら命を断ったと言ってたが理由を聞いてもいいか?」


「まあお主にとっては他人事どころか自分のことじゃからの、いいじゃろう、まずキャンベル家についてじゃがここシンフォニア王国に領地をもつ公爵家であり国内でも大きな力をもつ家じゃ。そしてキャンベル家の次女であったアイリーン・キャンベルは、王族であるシンフォニア家の次男と婚約しておった。」


(王族の次男って王子様かよ。というかこの話の流れだとまさか…)


「じゃがアイリーン・キャンベルは容姿こそ優れておったが性格に少々問題があっての、それで学園で問題を起こし王子みずから婚約を解消したそうじゃ。」


(やっぱりだよ!これって悪役令嬢もののテンプレじゃねーか)


嫌な予想が当たってしまった俺は、思わず頭をかかえてしまう。だがそれも仕方ないだろう、ファンタジーな異世界に少なからず期待していたのにまさかの悪役令嬢本人へ転生してしまっていたのだから。


「お主大丈夫か?」


「あっああ、なんとかね」


「ふむ、それでじゃが貴族の世界で婚約者に拒絶されてしまった娘は問題ありと周囲に認知されてしまい、そのあとに婚約者を見つけることがかなり困難になるのじゃ、元婚約者が王子であるなら尚更の。」


それはそうだろう、いくら公爵家の娘とはいえ王子が否定した相手を選ぶということは、王族の意向を否定したと周囲にとられかねない。


「そしてその後学園は夏期休暇に入り領地に戻ってきたアイリーン・キャンベルはその事実に絶望し命を断ったわけじゃ」


「それならかなりの大騒ぎになったんじゃないか?」


大貴族の令嬢が自殺しようとすれば周囲は大騒ぎだろう。


「いや、アイリーン・キャンベルは帰省後部屋に篭っておっての、それに事が起こった後イリス様がすぐに事態に気付き肉体を再生させたのじゃ。」


なるほど、その後すぐに俺がこの世界に連れてこられたわけか。だがあの女神様は俺に何かをしろとは言わなかった。では大きな魔力を秘めていたアイリーン・キャンベルの肉体に俺を転生させた意味は?


「やっぱりイリス様は何か意図があって俺、というかアイリーン・キャンベルの肉体を生かしたわけか。だけどそれで俺が自由に生きていいってのはおかしくないか?」


「さあの、わしもイリス様のお考えは知らされておらん。お主がこの世界でやっていけるよう補佐をしろという命しか受けておらんのじゃ。じゃからお主も好きに生きればよかろう。」


(自由にか、まあたしかにせっかくファンタジー世界に転生したんだし、やっぱり魔法を使ってみたいよな。)


自由といってもこの体は元はアイリーン・キャンベルのものだ。必然的に公爵家の次女の立場というしがらみや、生前にいろいろやらかしてくれちゃってるから要らないオマケもたくさん付いてきそうだか。


「たしかにそうだな、あんまり考えても仕方ないか。魔法も覚えてみたいしもっとポジティブにいくか!」


「ふむ、そのいきじゃ!それに魔法ならわしが教えてやれるしの。」


「うそ!?ミューって魔法まで使えるのか?意外とハイスペックなのな。」


俺は意外な事実にそう本音をもらしてしまう。するとミューが目を細めて睨んでくる。猫なので全く怖くないのだが。


「お主わしをバカにしておるのか?」


「いやいやそんなことは一切ないです。はい」


「…まあよかろう、では他の質問を説明していくかの。」


なんとか誤魔化せたようで俺はホッとする。それからミューから先ほどの質問の続きを聞くことにする。


簡単にまとめるとこうだ。先ほども話に出てきたが、この世界でも指折りの大国シンフォニア王国。そしてここがその国内でもかなりの力を持つと言われるキャンベル公爵領だ。そしてこの世界だが魔法ありのファンタジー世界だ。それにモンスターも世界各地に存在しているらしい。それよりも俺が心踊らされたのはやはりエルフやドワーフ、獣人族の存在だろう。これは是非会いにいきたいものだ。というのがミューから聞いたこの世界の話だ。


「それはそうとじゃ」


「ん?なんだ?」


「いつまでもこの部屋に引きこもっているわけにもいくまい。そろそろ外にでる心構えでもしておくことじゃの。」


「ぐっ…」


(そうだった。ちょっと忘れかけていたが俺はこれからこの少女の体、つまりアイリーン・キャンベルとして生きていかないといけない。)


「わかってるさ」


「ならよいのじゃ。ならばその言葉使いもなんとかすることじゃの。」


「…わっわかっているわ。」


「あー…なんじゃ、ほどほどにの。」


「…………」


ミューから哀れみの視線を受けてしまったが、これから徐々にでもなれていくしかないだろう。まだ何をどうしたらいいか正直分からないが、なんとかやっていこうと思う。


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