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17 ドラゴンとの激闘

ドラゴンの咆哮により再び冒険者ギルド前の広場は、パニックに陥った人々により騒然とする。我先へと逃げていく者達には一切見向きもせず、目の前の黒いドラゴンは俺から目を離さない。


ガーマンはルナを人質にして俺に復讐しようとしていた。そして先ほどの自分を悪魔と名乗った紳士服の男は契約を反故にはできないと口にしていたと言うことは、やはりこのドラゴンの狙いは俺なのだろう。


初めての実戦でオークキングと死闘を演じ、続く二戦目で最強の種族まさかのドラゴンだ。アイリーン・キャンベルの悪運の強さには、まったくもって恐れいる。



「グラン師匠……どうやらあのドラゴンの狙いは私のようです」


「どうやらそのようだな。アイリとりあえずポーション飲んどけ」



グラン師匠から貰ったポーションを俺は一気にあおると、先ほど消費した魔力が回復する。差ほど減ってはいなかったが、ドラゴンが相手なので念のためだ。



「リーニャ、ルナを教会まで避難させてくれ!」


「まさかドラゴンと戦うおつもりですか!? いくらなんでも無茶です!」


「無茶でも何でもやるしかない! それにこんな所で戦うわけにはいかないだろ、ルナを頼んだ!」



周囲はすでに俺たち以外残っていないが、逃げるにしても俺が狙いな以上都市の外に出ないとまずい。

俺はリーニャにルナを預けると身体強化を行い東門に向かって、冒険者ギルド前の広場を駆け抜ける。

後ろでリーニャとルナの声が聞こえたが、俺といると危険にさらしてしまう。



「俺たちも行くぜお前ら!!」


「「了解!!」」


「しょうがないの、無理はするなよ!」



俺の後ろをグラン師匠達とミューがついてくる。A級冒険者パーティが一緒に戦ってくれるのは非常に心強い、特訓の成果がある程度形になったとは言え、正直あんな大きいドラゴンが相手、俺は内心ビビリまくりだったのだ。それにいざとなったらミューの転移で逃げよう。


俺が東門から都市外に飛び出すと、ドラゴンも追ってくる。あんなに大きい体だが素早く転進した、見かけによらず速いようだ。


しばらく走っていると後ろから凄まじい殺気を感じ後ろを振り向くと、ドラゴンがその大きな口を広げ、見るからに高エネルギーの塊を放出しようとしていた。



「全員避けろ! ブレスだ!!」


グラン師匠がそう叫ぶと同時にドラゴンから周囲に紫電を走らせる雷が放たれる。目も眩むような光と共に俺の横を通り過ぎ、着弾すると周囲の木々や地面が抉れていた。


だがさすがはA級冒険者、全員今のドラゴンのブレスを避けていた。



「雷のブレスかよ……やっかいな、ちっ! 今のうちに反撃に出るぞ!!」



グラン師匠の合図でまずエマさんの魔法が放たれる。三日月型の巨大な風の刃が空中のドラゴンに当たるが、直撃は避けられている。それでも速さ威力と共にリーニャの風魔法をうわまっているのだが。



「もう! すばしっこいわね!!」



ドラゴンは今の攻撃で頭にきたのか、俺たちに向かって突進してくる。そこにケリーさんが弓を構え、武器強化した矢をドラゴンに向かって、続けざまに3連射する。一撃目、二撃目はドラゴンの鋭い爪に弾かれるが三撃目にドラゴンの左翼に命中し、バランスを崩して失速しはじめる。



「狙い通りっす!」


「ナイスだケリー! 後は俺が止めてやらあ!」



そしてフルプレートに大盾をもったタングさんが前に出てドラゴンを真正面から受け止め、10メートル程下がった所で停止する。



(まじかよ、ケリーさんが勢いを殺したとはいえ、人間があんなに体重差があるドラゴンを止めるなんて)


「グラン!!」


「おう! 任せろ!」



ドラゴンを受け止めたタングさんが叫び、それにグラン師匠が答える。そしてグラン師匠は剣に紅蓮の炎を纏わせ、ドラゴンに切りかかる。


だがドラゴンが直前で腕で自身を庇い、グラン師匠の攻撃は防がれてしまう。



「ちっ! 防がれたか、それに傷も浅い……」


「グランの火剣でもあの程度の傷なんて!」



グラン師匠は思った以上にドラゴンの傷が浅く舌打ちし、エマさんは驚愕している。

そしてドラゴンは素早く飛び立ち、怒りの咆哮をあげる。



「グラン師匠次は私が行きます!」


「バカ野朗! 相手はオークキングとは訳が違うんだぞ!」


「そっすよアイリちゃん、無謀すぎるっす!!」



俺が参戦しようとすると、グラン師匠とケリーさんに止められる。だが俺も全く手がないわけではない、オークキングと戦った時より剣の腕も上がってるし、ミューとの特訓で魔法が飛ばせない俺なりの魔法の使い方もちゃんと考えてある。先ほどのガーマンと戦った時の風を全身に纏わせるのもその一つだ。



「大丈夫じゃグランよ、あやつも成長しておる。なかなか面白い物が見られるかも知れんぞ?」


「しかしよ……」


「みなさん援護をお願いします!」


「アイリ! くそ、お前らアイリの援護だ!!」


ミューがグラン師匠を説得してくれるが、中々頷いてもらえない、しかもドラゴンは再びブレスの体制に入り始めたので、俺はグラン師匠達に援護をお願いして走り出す。いきなりドラゴンに向かって走り出した俺を今更止められるわけもなく、グラン師匠は仲間に援護するよう叫ぶ。


俺の接近に気づいたドラゴンは俺に向けて雷のブレスを放ってくる。だが俺は全身に風の魔法を纏いさらに加速し、ドラゴンのブレスを置き去りにする。



「やっぱり速い、何だあのスピードは!」



そう俺は大量の魔力を持っているのに魔法を放つことが出来ない。そこで試行錯誤したところ、俺は全身のどこにでも魔法を纏う事に成功した。これは魔力コントロールに優れているのと、膨大な魔力を持って初めて出来る技だ。さらに身体強化も同時に発動しているので、相当緻密な魔力コントロールが必要とされるのだ。



「援護だ! これ以上ブレスを撃たせるな!!」



グラン師匠、エマさん、ケリーさんから遠距離攻撃が放たれ、ドラゴンの動きが一瞬止まる。


そしてその隙をついてドラゴンの真下まで来ると、俺は空を駆け上がる。



「アイリちゃんが飛んだ!? 風の魔法でそんな事ができるの?」


「いや違うの、あれは飛翔しているのではなく、空中を一歩一歩駆け上がっておるんじゃ」


「駆け上がる? どういう事なの?」


「あやつはいくら練習しても魔法を放出できなかったが、魔力コントロールは天性の物があった。そこで全身に風の魔法を纏い、足元に風の足場を作ることで空中戦も可能にした。それがあやつが習得した技の一つじゃ」


「そんなことが……」




俺は空中でドラゴンと肉薄する。リーチの長いドラゴンが鋭い爪で先制してくるが、俺は空中で転進し攻撃を避けて、そのままドラゴンの真上に回りこむ。そして剣に炎を纏わせドラゴンに向けて風の魔法で加速し、急降下する。



「くらえええ!」



俺の一撃はドラゴンの背中に直撃し、煙を上げながら凄まじい勢いで地面に落下する。俺自身も重力に引っ張られ地面に落ちていくが、風で減速できるので問題ない。たおしたか? そう思い落下の衝撃で土煙を上げている地面を注視すると、ドラゴンが両翼の翼で土煙を吹き飛ばし、怒りの咆哮を上げる。



「うわっ! 直撃であの程度の傷!?」



ドラゴンのあまりの硬さに俺は驚愕する。背中への直撃で倒せないまでも、かなりの深手を負わせる自信があったので、改めてドラゴンという種族の強さに驚かされる。



「アイリ!! 無事ですか!?」



そこでルナを教会に送ったリーニャが絶好のタイミングで援軍に現れる。かなり急いで来てくれたようだ。



「リーニャ! ドラゴンを地上で抑えてくれ!!」



俺は落下しながらもリーニャに指示を飛ばす。ここでトドメを刺すには飛ばれると厄介だからだ。



「了解しました!!」


「まてリーニャ、全員でタイミングを合わせて攻撃するぞ!」



グラン師匠は先ほどの援護の際、一瞬動きを止めるのがやっとだったので、全員での遠距離攻撃を提案する。しかしリーニャは、否定する。



「いえ、私に任せてくださいグラン殿」


「だが!」


「まてグラン、何も成長したのはアイリだけではないの」



そうリーニャはオークキングに遅れをとり、自らの主人を危険に晒したあの日、さらなる力を求めてミューに教えを請うていた。そして修練の末、異なる属性魔法を同時に発動する高等技術を会得していた。


リーニャが風と水の魔法を同時に発動すると、周囲に肌を刺すような冷気が漂い始める。そして冷気の波がドラゴンの足や、翼を凍てつかせる。



「なっ! 氷属性の魔法だと!?」


「俺初めてみるっすよ!」


「だが動きを止めれたのはいいが、トドメをさせるのか?」



グラン師匠やケリーさんがリーニャの氷魔法に驚く中、タングさんが当然の疑問を口にする。たしかにここにいる全員が、ドラゴンに対して有効打を与えられていないからだ。



「それもおそらく大丈夫じゃろう、アイリなら次で決めるじゃろ」


「当然です」



俺は空中で再び剣に炎を纏わせる。それをみてドラゴンが俺を憎らしげに睨んでくる。どうやらリーニャの魔法で動けないようだ。俺は今度こそ終わらせる為に奥の手を出す。剣に纏わせた紅蓮の炎にさらに風の魔法を合成し纏わせる。すると剣に纏う炎の色が変わっていき、蒼い炎に変わる。


俺は再びドラゴンと肉薄する。ドラゴンは自信の持つ最強の武器、鋭い牙で俺の剣ごと食い破ろうと襲いかかる。だが俺は剣にさらに魔力を込め蒼炎の刃で切りかかる。



「はああああ!!」



そして俺の剣はドラゴンの牙を砕き、そのままの勢いでドラゴンを蒼い炎で焼き切った。

するとドラゴンは血しぶきを上げ、悲鳴を上げて倒れる。



「……やったか?」



俺は警戒しながらもドラゴンに近づく、目の前で見るとよりでかく感じるな。そんな事を考えながら見上げると、閉じていたドラゴンの瞳が再び開く。咄嗟に俺は剣を構えなおし、臨戦態勢に入る。

だがドラゴンから発せられたのは、強烈な雷のブレスや咆哮ではなく……。



「助かったぞ人間……」



人間の言葉だった。






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