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10 アイリーンの初体験


次の日からも俺は、冒険者ギルドの訓練場で、グラン師匠の指導のもと朝から基礎体力の向上、剣の訓練を重ねていき、順調に腕を上げていた。もちろん魔法の基礎訓練もミューの指導で同時進行で進めている。


グラン師匠とリーニャのセクハラをかわすのが一番大変だったかもしれないが。


「よし!今日の訓練はここまでだ。」


「ありがとうございました!」


グラン師匠との剣の訓練を始めて1ヶ月が経ち、俺はかなり腕を上げていた。剣術に関しては、本当に天才だとお墨付きをもらった。基礎体力に関しては、まだまだだが一般兵士くらいには、なっているそうだ。


「うむ、そろそろアイリも実戦訓練を始めてもいい頃合いだな」


「実戦訓練ですか?」


俺はリーニャから受け取ったタオルで汗を拭いながら、グラン師匠に聞く

その時にグラン師匠がいやらしい目付きをしていたが、最近慣れてきてしまった俺は軽く流す。


「そうだ、そろそろモンスターとの戦い方も学んでおいたほうかいい」


「グラン殿、まだアイリには早くありませんか?」


「そんなことはねえよ、俺との打ち合い稽古でも中々だし、魔法も合わせれば、そこいらのDランク冒険者じゃ相手にならんほどだ」


グラン師匠からの高評価に俺はかなり嬉しくなる。たしかに最近は、身体強化だけではなく、武器強化もできるようになった。普通はもっと何年も訓練しないと出来ないらしいのだが、アイリーン・キャンベルのハイスペックに助けられている。


「師匠……私やってみたいです。ごめんリーニャ、無茶はしないから」


「アイリ……」


「流石は俺の教え子だ、そう言うと思ったぜ。それにだ、いざとなれば俺やお前さんがついてるだろう?」


「……分かりました、アイリを全力でサポートします!」


「わしも忘れるでないぞ」


みんなの応援が素直に嬉しい、期待に応えるためにも余計に頑張らないといけない。


「ありがとうみんな、私頑張るよ」



そして翌日俺たちは、東門を抜けて森の中まで来ていた。ここもミューとの訓練以来で、少し懐かしい。


「よし!今日からこの森でモンスター相手に実戦訓練を行う!」


「よろしくお願いします!」


「まあここらのモンスターは弱いが、油断しないようにな」


「はいグラン師匠!」


「出発だ!」



そして俺たちは森の奥に進んでいく、先頭にグラン師匠、真ん中に俺とミュー、そして最後にリーニャだ。そして何と言っても今日はおニューの装備を着けている。リーニャと一緒に買いに行った物で、黒を基調とした特注品だ。


「やはりアイリの装備、似合ってます」


「たしかにな、アイリは冒険者ギルドでもかなり人気があるからな、連中に見せたら大喜びだぜ、きっと。」


リーニャがうっとりとした表情で、褒めてくれる。というかいつの間にそんな人気者になったんだか。まあ満更でもない俺はご機嫌だった。


「そういえばよ、リーニャはなんでメイド服なんだ?」


今更だがグラン師匠がリーニャのメイド服姿に突っ込みを入れる。


「グラン殿ともあろう方が気づきませんか、これはただのメイド服ではありません。全ての生地がレア素材の物でできていて、下手な鎧よりも防御力があります」


「うん、そう言う事じゃないんだが……まあ本人が気に入ってるならなんも問題ねえよな!」


グラン師匠の言葉に、リーニャは力説する。彼女にはきっとメイド服に並々ならぬ想いがあるのだろう。恐らくきっと……


そんな会話をしていると、空気が変わる。


「静かに!……ゴブリンだ」


俺はグラン師匠の指差す方を見ると、そこにはファンタジーでも定番のモンスターゴブリンがいた。木で造ったこん棒みたいな物を持っている。


「どうやら数は一匹だけみたいだな……アイリ、行けるか?」


俺はグラン師匠の言葉に無言で頷き、了承する。


「アイリ、お気をつけて……」


「油断なくの」


「ああ……じゃあ行ってくる」


俺は緊張しながらも静かに剣を抜く、そして身体強化と武器強化を行い、

呼吸とタイミングを合わせて、一気に飛び出す。


するとゴブリンもこちらに気がつき、威嚇の声を上げながらこちらに向かってくる。俺もさらに速度を上げる。


「ぎいーー!」


(気づかれたか!)


ゴブリンと俺は接近しゴブリンは、こん棒を振り上げる。俺も剣を構えゴブリンの首筋に、狙いをつける。


「……遅い!!」


そしてすれ違い様に、ゴブリンがこん棒を降り下ろす前に俺が剣を振り抜き、ゴブリンの首を落とす。


「これが……生き物を切る感覚か」


俺はゴブリンの落ちた首を見ながら呟く、手に残る切った感覚、血生臭い匂い、どれもが初めての経験で少し体が震えた。


「初めてにしては、上出来だな」


グラン師匠達が戦闘が終わったのを見て近づいてくる。


「大丈夫ですか?アイリ」


リーニャは俺の心配をしてくれているようだ。俺が震えているのに気がついて、抱きしめてくれる。


「リーニャありがとう、もう大丈夫だからお尻から手を離してくれるかな?」


「残念です」


リーニャが笑いながら離れる。


でも体の震えは止まっていた。やっぱりリーニャには敵いそうにないなと、俺も吊られて笑った。


「いやー! 美少女同士の抱擁ってのも中々乙だな、胸と胸がこう合わさって……」


せっかくいい雰囲気だったのに、グラン師匠の変態発言で台無しだった。


「師匠、ちょっと黙っててもらえますか」


「アイリの言う通りです。なんなら永遠にその口黙らせますよ」


「すっ、すいませんっしたー!」


あんまりな発言に俺とリーニャから、グラン師匠は吊し上げをくらっていた。たまにはいい薬だろう。



そのあと魔石を回収し、同じように数十匹のゴブリンを危なげ無く俺は倒して行った。魔石の回収も忘れない。


「よし!今日はここまででいいだろう、都市の方に戻るぞ」


そうして都市の方に歩いて行くと、俺たちは複数のモンスターに遭遇する。


「ありゃあオークの群れだな、都市の方に向かってやがる」


「グラン殿、あれは50はいるかと」


「だな、このまま行かせるのはマズイ……ここで叩くぞ」


俺は息を飲んだ、ゴブリンより遥かに大きいオークが50匹、たしかに都市に向かわれたら被害が出るかもしれない。全員グラン師匠の言葉に頷く。


「俺が斬り込むからリーニャは後方で援護、アイリとミューは待機だ」


「私も戦えます!」


「ダメだ、乱戦になるしお前さんは、中型モンスターとの戦闘経験がない」


「わかりました……」


たしかにこの状況では、足手まといになりかねない。


「アイリ、グラン殿の戦闘を見るのも、いい勉強になるはずです」


「そういうわけだ……じゃあ行くぜ!」


「ハイ!」


そう言ってグラン師匠とリーニャは、飛び出していく。グラン師匠は剣に火を纏い、分厚そうなオークの皮膚を軽々と切り裂いている、そして複数に囲まれると広域に炎を放ち焼きつくす。


「すごい、一方的だ……」


リーニャは、後ろから風の魔法でオーク達を切り刻み、グラン師匠の援護をしている。


「流石はA級冒険者とB級冒険者じゃの」


ミューの言う通り、数の差なんてものともせず、二人はオーク達を蹂躙していく。そして戦闘も中盤にさしかかった時に、奴が現れた。


「むっなんじゃ、あれは……オークキングか!」


それは普通のオークよりも、ひとまわり大きく、両手剣を装備したオークだった。そしてリーニャの方に向かっていく。


リーニャも気づき、風の魔法で切り刻むが、皮が分厚すぎるのか致命傷には至らない。そしてその大きな体躯に似合わず素早くリーニャとの間合いに入ると、両手剣を片手で軽々と振り上げる。


「くっ……」


リーニャはギルドで戦った、C級冒険者の攻撃を防いだ時と同じように、ナイフを交差させ、風の魔法で防御を固める。


そしてオークキングが凄まじい勢いでリーニャに剣を降り下ろす。


「うっ!」


リーニャはその攻撃を防ぎきれず、吹き飛ばされる。そして後ろの木に衝突してしまう。グラン師匠も複数の敵の相手で、直ぐには向かえない。


「リーニャ!!」


俺は気が付けは走り出していた。全力で身体強化と武器強化を行い、駆ける。そしてなんとかオークキングとリーニャの間に割って入れた。


「間に合った……リーニャ無事か!?」


「お嬢様……逃げて下さい、そいつはただのオークではありません」


リーニャはなんとか無事なようだが、木に打ち付けられた衝撃でまだ動けない。俺がやるしかない。


「リーニャ、私に任せてくれ」


震える体に気合いを入れて、剣を構える。リーニャの魔法でかなり出血している。先ほどまでの速さは出せないだろう、たがリーニャが受けきれなかった攻撃だ。打ち合うのは無理、であればオークキングの攻撃を避けてカウンターの一撃で決めるしかない。


身体強化に武器強化、そこに火属性の魔法を付加させるのは、難しくまだ成功率も低い、だけど今はやるしかない。


そんな俺の都合などお構いなしにオークキングは、走りだし剣を振り上げる。


「グギィーー!!」


「ハァーー!!」


俺も身を低くし、オークキングに突っ込む。


そしてオークキングの間合いに入った瞬間、ゴウッという音ともに、オークキングから剣が降り下ろされる。


俺はなんとか紙一重でその剣をかわす、そしてなんとか剣に火を纏わせることに成功し、俺はそのまま飛び上がる。


「これで終わりだーーー!!」


俺は火の剣でオークキングを袈裟斬りにする。すると傷口から大量の血しぶきを上げ、オークキングは地面にヒザを着き、そのまま倒れて行った。


するとオークキングが負けたことに気づいた、オーク達が一斉に逃げ出す。


「勝ったのか……」


緊張の糸が切れた俺は、その場にへたりこんでしまう。


すると後ろからリーニャが抱きついてくる。


「お嬢様!!心配致しました……」


「……心配かけてゴメン」


俺は涙で濡らすリーニャの頬をそっと拭ってやる。


するとグラン師匠とミューもやってくる。


「すまなかったな、お前達を危険に晒しちまった。だが……あえて言うおう、よくやったアイリ!」


「うむ、大したもんじゃ!」


「ええ、みんな無事でよかった」


「よし!今度こそ町に帰るぞ!」


こうして最後にひと波乱あった、俺の初めての実戦訓練は無事終了した。

そしてそのあとはモンスターに遭遇することなく、俺たちは都市にに帰還した。




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