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亜人狩り・群状金属・ロクサーヌ  作者: 本田百郎
紙谷春樹、忍び寄る影になる
6/35

★第6回 「これは『群状金属』。生きている金属よ」

二回に渡って説明回になります。

新しいギミックの場合どうしてもある程度説明の必要があるので。申し訳ありません。


その後はテストもかねて二人には暗殺に行ってもらいましょう。

挿絵(By みてみん)


 屋上でロキシーは俺の前に一つの弁当箱を差し出した。中には艶消しされた黒い卵が六つ入っていた。


「どうぞ、一つ選んで召し上がれ」

「何これ。温泉卵か何かか?」

「食べてから話すわ」

「話したら食べるよ」

 正に卵が先か話が先かの状況だった。


「これは『群状金属』。生きている金属よ」

 先に折れたのはロキシーの方だった。


「バクテリアみたいな粒状の金属片が寄り集まったのがこの卵。私がストレンジャーを倒した時のこと覚えてる? 腕が金属みたいなものにコーディングされてたでしょ。あれの素がこれ。以上、さあ食べて」


「断っていいか?」

「あー、ずるい。話したんだから食べなさいよ」

「かなり見た目が悪いぞこれ」

「でも性能は抜群よ。紙谷くんはまさか生身であの化け物たちと戦うつもり? それだとバターみたいに体を削ぎ取られて殺されちゃうわよ」


「でもなあ」

 俺は顔をしかめながら試しに一つ指でつまんでみた。指の腹に大きく一つ、鼓動みたいなものが伝わった。


「中で動いてるぞ」

「健康な証よ。さあ約束でしょ。食べて食べて」

 俺は渋々一つ選ぶと口の中に入れた。まだ噛む勇気はなかった。


 ロキシーがニヤニヤ笑いながら俺を見ていた。すぐにその理由が分かった。群状金属は口の中で形を変え、俺の意思とは関係なしにスルリと喉の奥へと消えていった。


「気分が悪い」

「本当に?」

「こんなもん腹に入れたんだぞ。いいわけないだろ」

「ねえ、これは真面目な話なのよ。本当に気分が悪いの? それともなんだか嫌だなってだけの話?」


「違いがあるのか?」

「これを食べてお腹を壊したり発疹が出たり嘔吐した場合は、この個体と相性が合わないか、もしくは紙谷くん自身にそもそも適性がないからなのよ。どっちなの?」

 もちろん後者だった。


「それなら大丈夫ね。どう? 他に体に変化は?」

 俺はマジマジと自分の体を見つめた。それはもう本当にじっくりと見た。すると皮膚の表面に黒い斑点のようなものが噴き出してくるのが分かった。


「発疹が出た」

「違うわよ。これこそ群状金属の効果。良かった。無事罹患したようね」

 無事病気にかかるとはおかしな表現だ。


「さあ、ここからが本番よ。精神を集中して体の中にある群状金属を外へと押し出してみて」

「どうやって?」

「こればかりは口では正確に表現できないわね。なんというか、おしっこする時と同じ感じというか」

「分かりやすいけど随分バッチい言い方だな」

「ほらやってみて」


 ロキシーの説明が良かったのか、俺は割とあっさりと体表に出すことができた。


「次に——」

「おい、引っ込んじゃったぞ」

「あー、それはもう仕方がないから」

「俺は何もしてないのに」

「生きているって言ったでしょ。あっちにも都合があるのよ」

「まさか意思があるのか?」

「生物だもん。当然でしょ」

「こんなツブツブに?」


「言って置くけどあまり彼らを傷つけないほうがいいわよ。拗ねて表に出てこなくなるからね。むしろ彼らと良くコミュニケーションを取って、協力してもらうようにしないとダメ。言いたいことは分かるわよ。でもここがこの群状金属のミソなのよ。彼らと息を合わせて出来るだけスムーズに素早く広範囲に長く体の表面を覆ってもらうこと」


「スムーズに素早く——」

「広範囲に長くね。やってみると分かるけど、彼らはすぐに引っ込んでしまうし、腕全体を覆いたくてもそう簡単にはいかないわよ」


 俺はもう一度群状金属を出してみた。今度は腕全体に出すことをイメージしたが、手のひらくらいにしか出なかった。


 ロキシーは手本とばかりに群状金属を出してみせた。彼女の場合、右腕から胸と腹までびっしりとそれが覆った。しかも一瞬で消える俺とは違い数秒ほど持続させてみせた。


「十秒よ十秒。出す部位によってはもっと持続できるわ。これがどれだけ凄いことか、すぐに身にしみて分かるはずよ」


 確かにそうだった。俺はその後随分こいつに悩まされることになる。

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