表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芋虫日記  作者: 小林晴幸
9/25

6月1日のこと

 朝、「チシャ」が死んでいた。


 昨夜のまま、くったりと動かなくなっていた「チシャ」。

 パセリを入れ替えようと、「チシャ」の乗ったパセリをちょっと動かしたとき。

 ぽとりとあっけなく、虫かごの底に落ちる「チシャ」。

 全く動かない体は、奇妙にねじれたポーズを取っていた。

 へにょっと一部がへこんでしまっている。

 ああ、やっぱり、と。

 よぎるものがあった。

 もっと早く隔離しておけば良かったとも思うし、隔離しても同じだっただろうなとも思う。

 餌は十分に入れていたと思う。

 だけど「チシャ」が食事をする光景は、あまりに少なかった。

 実際にこの目で見たと確信が持てることも1回くらいかもしれない。

 その時も、あまり食べていなかった気がする。

 他の二匹は今朝も元気そうだ。

 むっちりと太って、ぷにぷにしている。

 そんな二匹でも食い尽くせない程度にはパセリの花を入れていた。

 それでも食べなかったのか、食べきれずにいたのか。

 食事がすべてじゃないだろうけれど、健康の指針にはなると思う。

 「チシャ」は、やっぱり死んでしまったみたいで。

 せめて庭に埋めて土に還すことにした。



 夕方、帰ってから虫かごを覗く。

 そこにはむちむちの「パセリ」と「セリ」。

 二匹は太って、体も重そうだ。

 というか「パセリ」さんは最早パセリの花穂みたいな細い茎では体を支えるのも難しそう……に見える。

 案の定、体重を支え切れずに落ちる光景を目にした。

 すぐに這い上がっていたが、一度体勢を崩すと大変そうだった。

 「セリ」も今日は貪欲にパセリの花や若い葉っぱを貪っている。

 こんなに食欲旺盛な「セリ」は初めてかもしれない。

 やはり食欲の権化と言えば「パセリ」の印象だった。

 だけど今夜は、二匹は互いに劣ることなく。

 むっさむっさと絶え間なく貪る姿を私に見せてくれた。

 この二匹が元気なだけで、淋しい気持ちがほんの少しまぎれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ