5月31日のこと
日に日に、「パセリ」と「チシャ」の格差が酷くなっている気がする……。
今朝は父と二人で芋虫たちのサイズを測ってみた。
茎にしがみついた彼らに、そっと定規を添えてみる。
「パセリ」は……四センチ半?
「セリ」は三センチと少し。
そして「チシャ」は二センチ半。
あの、「チシャ」さん?
あなたのサイズ、脱皮前と変わらないんですけど……。
むしろ脱皮前よりも細身なので、やせてしまったように見える。
昨日から引き続き、パセリの茂みに隠れていた「チシャ」。
この子は大きくなれないんだろうか。
それからもう一つ、変化に気付く。
「パセリ」さんの身体に、奇妙なくびれが……
同じくむっちりと太る、「セリ」にはない変化。
「パセリ」のふくっと太い部分の直下当たり……彼らの身体は緑と黒の縞模様になっていて、黒い縞の二本に一本がオレンジの星を浮かべている。
黒とオレンジなんてバリバリ警戒色っぽいですねー、と見ていたのだが。
頭から数えて三本目と、四本目の星付き縞。
その間にある黒無地縞の部分が、くびれている。
芋虫の顔と向き合うようにして正面から見た時、左側に当たる部分は引き攣れたかのようだ。
今朝も元気に葉っぱむしゃむしゃしているので、異常ととらえていいのか微妙なのだが……
実は、気にしていることが一つある。
「パセリ」と「チシャ」捕獲時のことだ。
あの時は二匹の区別なんてついていなかったので、最早どちらだったのかも不明だが。
捕まえる時、片方は私が強く掴み過ぎてしまったのか、緑色の液を吐いている。
あれが、体液だとして。
もしかしたら芋虫の内部に損傷を与えてしまったのじゃないか、と。
虫かごに入れて以後、それなりに活発に動いているから気にしないようにしていたが。
「チシャ」がちっとも大きくなれないのは、それではないかと。
そう思っていたが……「パセリ」の謎のくびれは、もしやこいつの方が?という疑惑を浮上させた。
どちらにしろ、健康面での被害が最小限で抑えられれば良いのだけれど。
ちっとも大きくなれない「チシャ」は、そろそろ隔離すべきかもしれない。
朝の世話の時、きっとたくさん食べるからとパセリを沢山ジャム瓶に詰めた。
花穂も、葉っぱもたくさん。
おかげで超密集地帯になった。
周囲のパセリに押されて苦しい思いをしたのだろうか。
ひっそりと隠れていた「チシャ」が、世話の終わったカゴの中でもぞもぞと動き出す。
息が詰まったんでしょうかね?
パセリの茂みに隠れていたのが、パセリの上まで這い上がって来た。
それから手近な花穂の上に行ったので、お食事かと思いきや。
一息ついたー……みたいな有様で、花穂の上でくたっと動きを止める。
え、大丈夫かい?
心配になりつつも、出勤時間が迫って家を出た。
帰って、夕方。
虫かごの中では旺盛な食欲を見せる「パセリ」が花穂を求めて縦横無尽に闊歩していた。
移動の為にぷにっぷにの身体を細く伸ばす、その様は……なんとなく蛇を連想する。
朝、「チシャ」が乗っていた花穂は既に誰かに食われていた。
それが「チシャ」が食ったものなら良いのだが。
「チシャ」は花穂の隣にあったパセリの茂みの上でくったりしていた。
頭を下に垂れたその姿は、死んでいないかと不安になる。
だけど我が物顔で歩き回る「パセリ」さんが、気付いたら「チシャ」を下敷きにしていた。
超虐げられてる……!
移動の途中だった「パセリ」は割とすぐに上からどいたが、その際に居心地悪そうに「チシャ」がもぞっと動いた。
良かった、生きてた。
でもやっぱりぐったりしている気がする。
「チシャ」はやっぱり隔離した方が良いのかもしれない……。
その後、夕飯の後。
もはやパセリの茎一本では体重を差させることも難しそうな、「パセリ」。
奴が虫かごの壁面に張り付いていた。
パセリの茂みの、真下あたりで。
驚きに一瞬固まるが、これ幸いと真正面からじっくりと観察してみた。
やはり、くびれている。
これは大丈夫なのかと気になるが、先ほども旺盛な食欲を見せていた。
たぶん、大丈夫だろうと自分に言い聞かせる。
こうなっては三匹の芋虫の内、最も見事なプロポーションをしているのは「セリ」だと言わざるを得ない。
彼のサイズは「パセリ」に一歩譲るが、むっちり具合では引けを取らない。
いや、若干劣るか……?
だがむちむちぷにぷにっぷりは一番バランスが取れている気もする。
彼らがどんな成虫になるのか……なれるか否かを含めて、楽しみに思う。
とりあえず、明日の朝は「チシャ」さんの隔離を検討しよう。