表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芋虫日記  作者: 小林晴幸
7/25

5月30日のこと

 朝、今日も今日とて芋虫の生存確認。

 今日は月曜日だ。出勤だ。

 まずはお弁当を作ってから、芋虫の虫かご掃除。

「…………」

 こころなしか、「パセリ」が巨大化していた。

 脱皮してから一日、二日というところなのに。

 わずかな時間でここまで太るとは……生命の神秘を垣間見る思いだ。

 芋虫と接するようになってから度々思い出すことがある。

 地球上の生物がすべて同じ縮尺だったなら……世界最強は昆虫だ、という。

 このみっちりむっちりした体がすべて筋肉だったら、それも納得だ。

 

 芋虫たちは同じ模様だから、名前を付けても見分けがつかなくなるのでは、と。

 名前を付けながらもそう案じたものだが……こうして見ると、全くの杞憂だったことがわかる。

 

 うん、だってメッチャ見分けがつくし。

 

 最初に比較して、大きさがそれぞれ異なり「大中小」と考えたものだ。

 その関係性、そのままに。

 それぞれの差異がより強調される成長を遂げている。

 即ち、「パセリ」の成長が著しい。

 それに遅れがちながらも近く迫るのが、「セリ」。

 そして脱皮して以来、ちょっと細長くなったものの……一向に太らない「チシャ」。

 昨夜見た光景が恒常的なものならば、「チシャ」は「パセリ」と「セリ」に追いやられているのかもしれない。

 「パセリ」と「セリ」は大概同じ茎にしがみついている。

 凄い至近距離だなぁと思ったものだが……

 今思えば、これは一番恵まれたエサ場を二匹で独占していたのだろうか?

 彼らはパセリの花穂やその近辺の細い葉っぱばかりに興味を示す。

 なので虫かごには常に一匹につき二、三本くらいの割合で花穂を突っ込んでいたのだが。

 他にも花穂はあるんだよ?

 何故に「パセリ」と「セリ」が同じ茎に執着するのか……そこは謎である。

 全然大きくならない「チシャ」が立派な蝶になれるのか、気遣われる。


 夕方、帰ってきて一番に芋虫を見に行くが……

「あれ?」

 「チシャ」が見当たらない。

 あれ? あいつどこ行った???

 朝、芋虫もよく食べるだろうからと虫かごのジャム瓶にはわさっとパセリを差していた。

 花穂以外にも、葉っぱ食べないかなぁと……花穂と一緒に葉っぱも沢山。

 朝より心なしか肥大化したように、身丈も伸びたように見える「パセリ」と「セリ」。

 流石にもう同じ茎には掴まっていられないらしく、それぞれ隣り合った茎にしがみついている。

 あなたたち、なんだかんだで仲良いの?

 二匹の周囲のみ、見晴らしがよくなっているが……

 どうせ「チシャ」は二匹の近くにはいまい。

 しかしまさか殺されて……?

 カゴの底に落ちてはいまいか。

 よくよく虫かごの中を観察すると……あ、いた。発見!

 「チシャ」はパセリの葉っぱ密集地帯に、ひっそりと隠れるように……いや、隠れていた。

 それは外敵から身を隠そうとする生存本能か、「パセリ」を避けた結果なのか。

 「パセリ」と「セリ」は堂々と身を曝している。

 これは、やはり二匹に絡まれないようにと避けた結果なのかもしれない。

 パセリの葉っぱに隠れて見えないが、やはり「チシャ」はあまり大きくなっていないようだった。

 というか、朝からサイズ変わってなくないか、おい。

 本当に、「チシャ」は立派な蝶になれるのか心配だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ