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芋虫日記  作者: 小林晴幸
5/25

5月28日のこと

 朝いちばんに行ったのは、やっぱり芋虫の生存確認だった。

 三匹は、変わらずそこにいた。

 やっぱり微動だにしない。


 幼虫の糞は、病気の原因になるらしい。

 ネットでそれを知ったので、より念入りにカゴの掃除に努める。

 葉っぱについた糞も念入りに落とした。

 それからカゴの底にティッシュペーパーを敷いて、ひとまずは良しとする。


 毎週土曜日は、五~六時間ばかり運動に行くことにしている。

 帰ってきたら、また何か変化があるだろうか?

 気になりつつ体を動かしに行って、そして帰宅。

 

 今日は久々に母が帰宅する。

 8日以来のご帰還だ。

 芋虫を見せたら、嫌がるだろうか?

 そう思いつつも、芋虫のことを話したくて仕方がなかった。


 運動の帰りに母と合流して、帰宅したのは午後四時頃。

 芋虫のことを見に行くと、「チシャ」の隣に何か黒い物体が……

 え、なんぞ。これ。

 

 なんだかよくわからなかったが、謎の物体がある。

 よくよく見てみると……もしかして、脱皮したのだろうか?

 相変わらず三匹とも微動だにしない。

 細かく舐めるように見つめる。

 「チシャ」の前の方についている足が、白っぽい。

 記憶している限りでは、そこの足黒くなかったっけ……?

 すぐ側にある黒い物体はやはり皮なのだろうか。


 数時間後、夕餉の際に食卓の虫かごを覗く。

 あれ……? 黒い物体がない???

 ないかと一瞬思ったが、あった。

 何のことはない、「チシャ」が下敷きにしていた。

 その位置はもはや定位置なのか。

 「チシャ」の前の方についている足は、再び黒くなっていた。

 そして上から覗いた、虫かごの中。

 パセリを指したジャム瓶の水に、芋虫の「顔」が浮いていた。

 どうやら脱皮した皮の一部が、水に落ちたらしい。

 まるで生首が水に浮いているような、その光景。

 こわ……っ


 夕餉が終わった後、少し時間をおいて食卓の側を通りかかる。

 少しだけ大きくなった(気がする)「チシャ」。

 やっぱり動かなかった……が、目をやったら「チシャ」が動いている。

 うろうろ、定位置から下がっていこうとしていたのだが。

 私の気配に気づいたのか、軟らかい体はUターン。

 再び定位置に戻る、チシャ。

 ……やっぱり、人間が側にいたら気になるのかな。

 動かないのは警戒姿勢なのかもしれない。

 

 食卓の上に置いておいてなんだが、少しそっとしておこうと思った。






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