5月27日のこと
朝いちばんに、芋虫の生存確認。
これは今後の習慣になりそうな気がする。
様子を見てみると、変化に気付いた。
「チシャ」が、パセリの上に戻っていた。
しかしはしごにしたものと目されるパセリの上部は消えていた。
私の記憶が確かなら、花のつぼみっぽいものがわさっと生えていたのだが……
そこには、切断された茎しかない。
そして昨日と同じく、「パセリ」がしがみついている。
どうも「パセリ」が食ったらしい。
……結構な量があったような気がするんだが。
「チシャ」は前日の朝と同じ位置に戻っていた。
長すぎるパセリを短くした、切断面の手前。
当然ながらそこに葉っぱはない。
何故、そこに戻る。
他に葉っぱや花のつぼみが付いた箇所はあるだろうに……
「チシャ」の行動が、よくわからない。
日中は仕事して、仕事から帰ると即芋虫の生存確認。
これもまた、日課になりそうな予感がする。
気が付くと飽きることなく芋虫を見つめる自分がいる。
様子を見てみると、やっぱり二匹は朝と変わらずそこにいた。
何故か微動だにしない。
カゴの中に糞が増えているので、やっぱり生きてはいるらしい。
とりあえず今日は、カゴを掃除しようと思う。
芋虫がしがみついたまま微動だにしない状況で、無理にパセリから引きはがすことに抵抗があった。
無理に触ったり引っ張ったりして、潰してしまっては目も当てられない。
なので芋虫がくっついているパセリには虫かご生活を続行してもらう。
パセリを新しく水を張った違うジャム瓶に移し替え、糞の沈んだ水を捨てた。
カゴの中の糞を捨てて、新しいパセリを取りに庭へ。
そして、気付く。
庭のパセリに、黒い芋虫が一匹。
とりあえず、虫かごの中にご案内した。
やっぱりこの芋虫も、動かない。
三匹になった芋虫。
三匹目は「パセリ」と「チシャ」の中間くらいの大きさ。
大体、二センチ半といったところ。
外見は同じ模様なので、大きさ以外に見分ける術がない。
ひとまず三匹目の芋虫には「セリ」と名付ける。
カゴの中に新しくパセリ(芋虫付き)をセットして、その場は放置した。
ふと思い立ち、自分のパソコンに向かう。
今までやろうかなとうっすら思いつつもやらずにいた。
だけど観察するうえで注意点などあるかもしれない。
やって良いこと、悪いこと。
知らずにいたら失敗するかもしれない。
だから、芋虫の正体を検索するのだ。
ひとまず「黒い芋虫」で検索し、多くの画像から同じモノを探した。
黒い芋虫と言っても、「パセリ」たちは全身が真っ黒という訳ではない。
たぶん、地色は緑。
だけど黒い斑点が全身を覆い、パッと見で黒く見えた。
それ以外に小さくオレンジの斑点もある。
何とも特徴的な外見。
そんなに時間もかからず、正体は判明した。
彼らはどうも「キアゲハ」のお子様らしい。
わあお、アゲハか。
確かに外見の形状は、アゲハ蝶っぽくはある。
アゲハの幼虫といえば、そこそこ大きくなる印象がある。
現時点で二~三センチの彼らも、ネット情報によると指ぐらいに大きくなるらしい。
少し、不安になった。
私の虫かごはそんなに大きくない。むしろ小さいかもしれない。
そんな環境で三匹も育てきれるだろうか。
過密状態になりはしないか……?
食欲旺盛とネットにあったが、未だ彼らの食事風景を見たことがない。
庭のパセリで餌が足りるか……それにもまた、不安を覚える。
とりあえず何の幼虫か判明したと、父に報告しよう。
父に報告に行き、何気なくカゴを覗き……驚いた。
「パセリ」さんが、動いている……!
全然動かなかった「パセリ」。
奴は貪欲な様子を見せて、どうやって移動したものか……
「セリ」のいる茎の上部、花や葉が生えているあたりに移動していた。
もしや、虫かごの壁を伝って……?
新しく入れたパセリは、長さをあまり気にせずにセットした。
上の方は虫かごの屋根に押し曲げられ、ひしゃげている。
そこに更に横向きで、移動しながらはむはむしている「パセリ」。
餌を食べている瞬間を、初めて見た。
だけど他の二匹はやはり動かない。
一度に一匹しか動かない制度なのだろうか……?
少しすると「パセリ」は「セリ」と同じ茎の上の方にくっついて、再び動かなくなった。
そのまま三匹とも動くことなく、明日がやってくる。




