序・我が家の庭
次回から芋虫の描写が中心となります。
苦手な方は、無理をせずにダッシュで逃げることをお勧めします。
これは5月の末、我が家の庭で発見した芋虫(ガチ)の観察記録。
ある日、我が家の庭先で。
目についたのは黒い芋虫。
初めて見る部類の幼虫が、ざっと二十匹強。
一瞬体が固まり、思考停止しかけた……そんな朝。
中々に衝撃の大きい光景でした。
そもそも我が家の庭は、かなり鬱蒼としている。
原因の大きな割合を占めるのは、母だ。
庭は母の領域。
植物の好きな母は、アレコレと庭に植物を植えていく。
だけど定年退職するまで激務に追われていた母(元看護士)のこと。
当然ながら植えられた植物は半放置。
庭はどんどん荒れちゃって、厳しい弱肉強食の世界と化した。
だけど状況は変わる。
母は定年退職を果たし、日夜激務に追われていた体にも時間と余裕が生まれる。
今まで忙しかった母が退職して最初にしたのは、家中の整理整頓と庭の改善だった。
あっという間に、明るい庭という初めて見る光景が目の前に……!
一番の理由は、庭に差す日光をがばっと削っていた木々を伐採したことだったが。
家を建てた時、建築会社かどこかがサービスで植えてくれたという、植木。
植えた時は見栄えが良くとも、植物は育つものである。
特に木なんて当然大きくなるのだから、処分に困る。
そういう手に負えないサービスはしてくれなくっても良いのに……。
ぼんやりそう思ったことは秘密だ。
庭には母の趣味でパンジーやマリーゴールドといった愛らしい花が植えられていく。
だけど植物が好きでも、庭仕事が上手かどうかっていうのは……また別の問題。
母は植物が好きだ。
あれこれと無駄に植えて、手に負えなくなることもある。
何故なら母は、基本的に「剪定」という大事な作業ができないからだ。
母曰く、だって花が咲くから……!と。
お陰様で薔薇やブーゲンビリアは盛大な暴走を披露してくれた。
上へ上へと育ってしまった薔薇の花の、絶好の観察ポイントは二階のベランダである。
そんな庭の一画に、食べられる植物のコーナーがある。
元々我が家は生ごみの始末を庭に植えて肥料と変えることで済ませてきた。
結果的に栄養たっぷりとなった場所で、野菜を育てている。
去年はトマトときゅうりが良く育った。
今年は勝手に生えてきたジャガイモと南瓜を母は大事にしている。
余談だが、小林の嫌いな野菜No.1は今も昔も南瓜だ。
アレだけは駄目だ。
ニオイだけでも嫌気が襲ってくるので、絶対に食べなくてはいけない場面以外では手を伸ばすことはない。出されたものは残さず食べる主義だが、ご自由にお取り下さいの状況では逃走一択である。
見る度に引っこ抜きたいな、と思わせてくれる南瓜の葉っぱ。
その手前には、母がハーブ類を植えていた。
元々は母が植木で育てていたローズマリー。
しかし母が一、二か月不在の間にうっかり父と私に存在を忘却され、ローズマリーは臨終の憂き目と相成った。
母の嘆きは、心が痛む。
丁度、五月の連休。
母の日の前だったので、私は母を慰めるべくハーブの苗を贈ることに決めた。
当然、ローズマリーは外せない。
だけど近所の花屋では見つからないので、ちょっと離れた場所まで買いに行く。
ローズマリーの他にコリアンダーやレモンバーム、カモミールにタイムといった合計五種類のハーブを買って。
多年草のハーブは地植えされ、一年草はプランターに。
ハーブの成長を楽しみにしていた母を、これ以上悲しませるわけにはいかない。
今、母は頻繁に家を空けなくてはいけなくなっている。
それというのも姉がこの春、3人目の子供を産んだからだ。
前々から母は姉に助っ人として呼び出され、姉の家と行ったり来たりだったが。
今は半同居に近い。
4月からこちら、母が家に帰って来たのは週末に3回くらい。
ほとんど、姉の家で孫の面倒を見ている。
まだあと暫くは、姉の家で孫の世話をするつもりらしい。
当然だが、庭の世話を焼けるはずもない。
なので、枯れないように最低限の水やりはやることにした。
それ以外にも、ハーブコーナーには問題がある。
ミントだ。
母がどこぞから、「これミントっぽい!」と拾ってきた植物。
根付いちゃったそれは、実際にミント臭がするのでミントなのだと思う。たぶん。
そして案の定、庭に蔓延りつつある。
これがミントテロか、と。
遠い目をしつつも、他の植物のテリトリーに浸食しない為にやるべきことは一つだ。
すなわち、刈り取って消費する。
摘んだ部分を無駄にするわけにはいかないので、他の領域を侵したミントはお茶にした。
他の大量消費方法も、思いつかなかったので。
ミントには毒性のある種も存在するそうだが……
今のところ、口にして体調を崩したことはない。
たぶん、無毒だ。たぶん。