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喰月 -クラヒヅキー
天まで焦がす戦火の赤が
にじりにじりと寄って来し
覚悟を決めて仰ぎ見る
空にはぽつかり日の轍
恰も弓のやうなるや
今こそ年貢の納め時
日蝕と共に逝かむとぞ
見据ゑる瞳は爛々と
漆黒洞々燃えてゐる
震へる刀を振り上げて
守るべき我が主の首へ
正に切つ先突き立てむ
真つ赤な真つ赤な紅い花
闇に散りては消えてゆく
次は我が身 と腸の
躊躇ひもせず えぐりけり
鉄のせり上げ苦しきや
喉が鳴るなり ごぼごぼと
紅蓮の炎よ 主だに
早う燃やし奉れ
隣国兵士よ 主だに
亡骸 な見つけ奉りそ
静かに大殿ごもらせよかし
我が頬熱くおぼゆるは
涙にあらず 炎なり
かくして国は敗れしに
跡も残らず落城したり
月に喰われし太陽の、
昔々の与太話なりけり。