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打算あり善行冒険者  作者: 唯野 皓司/コウ
第4章 5級冒険者 魔物討伐同行編
75/88

第13話 不和なのです

更新が6か月近く途絶えてすいません。

久しぶりの投稿なので第4章のあらすじを前書きに書いておきます。


 グラスとの約束による騎士団の魔物討伐に参加するため、ボルディアナを出立したシンはグランズールへと向かう途中、ほぼ中間地点にあるヴィア―テの村に立ち寄った。


 シンが一泊したヴィア―テの村は、村長自身が旅人や商人に買春を勧めるような村だった。そこで、シンは酒場で歌う女性と知己を得る。シンよりも少し年上のグラマラスな女性、エリーザ。


 夜の女でもある彼女の一夜の申し出を断ったシンだったが、エリーザと約束と言い切れないような約束を交わす。エリーザの妹分に思いを寄せる冒険者に危機が迫れば、それをシンが助け、助けた場合、エリーザはシンに感謝すること。


 無事、グランズールに到着したシンは騎士団の訓練場前の受付で一人の若い騎士と出会う。男の名はギルガード、ボルディアナの冒険者出身でシンと同様にガルダから剣の指導を受けていた騎士。


 グラスに煽られて、シンとギルガードは木剣で立ち合う。両者の実力はほぼ互角。当初はシンの方がわずかばかり押していたものの、シンとの立ち合い中、精神的な成長を遂げたギルガードに惜敗してしまう。それを皮切りに訓練場にいた他の騎士達数人とも立ち合いを行うが、結局2勝4敗と負け越す形となった。


 救国の騎士と称えられるシルトバニア辺境伯領騎士団総団長ランスヴェルグの挨拶の後、シンは自分の振り分けられた第1騎士団と、グラスやミーシャの所属する第4騎士団と共に魔生の森を目指し、行軍した。


 シンは行軍中、騎士たちに加わり、街道沿いの村々の魔物の巣の殲滅に協力したが、村の感謝は一介の冒険者のシンにではなく、騎士達に向けられたため、功徳ポイントを稼ぐ当てを外してしまう。だが、ジルやエンジェのおかげでなんなく偵察役をこなすシンは一部の騎士や冒険者からは感謝される形になった。


 魔生の森近くに設置されていた大規模な野営地に到着した騎士や冒険者達が本格的に始まる魔物討伐を前に英気を養う中、第1騎士団隊長と第4騎士団隊長が今回の魔物討伐の異変について話し合う。


 そして、シンもまたその翌日の魔物討伐により、はっきりと魔物の数が普段より多いことを感じ取っていた。




 魔生の森近辺における魔物討伐二日目の朝、シンは話をしている冒険者たちの言葉に耳を傾けながら、朝食として支給された少し固めのパンを肉入りのスープでふやかして、口に運ぶ。

 肉はレイジボアーと呼ばれる大猪のものだ。

 香草や酒で臭みを取った後、軽く焼いてからスープに投入されている。


 行軍途中とは異なり、魔生の森近辺での魔物討伐は余裕があれば、魔物の素材の刈り取りを行ったり、一旦野営地に運搬された後、最寄りの街へと運ばれていくことになるのだから、これは昨日獲れたばかりのものだろう。

 朝からゴロゴロと肉の入ったスープにありつけたジルは機嫌よく鼻歌を歌いながら、シンと同じようにパンを口に運んでいる。


 冒険者の話の多くはすでにもう騎士団の者から目をかけられているといった冒険者の話や、昨日の自分たちの成果の話がほとんどでシンとしては関心の抱けないものだったが、一部気になる話があった。

 シンも実感していた、普段よりも魔物の数が多いという話がさざ波のように広がっていた。

 同行しているベテラン冒険者の中には両手では数えきれない回数、騎士団の魔物討伐に参加している者もいるのだから、普段との違いについて、実感するのも無理はなかった。


(やっぱり、気づくよな)

 シンはその話を耳にすると再び嫌な予感がして顔を顰めたが、他の冒険者たちでその話で不安げな表情を浮かべている者は少ない。むしろ意気込んでいる様子さえ見られた。


 魔物が多いというのは同行する冒険者にとって、必ずしも悪いことではないからだ。

 この魔物討伐は冒険者の階級ごとに定められた基本報酬以外に討伐期間中の貢献によって、報酬が増額する。魔物が多いということはそれだけ稼ぐ機会が増え、また自らの実力をアピールし、騎士になる道が開ける可能性も高まるだろう。

 魔物の数が増えているという話に多少は警戒心を高めるものの、騎士達の高い実力、そして、大勢の冒険者が同行している安心からか、楽観的にその話を捉える冒険者の方が多かった。


(俺の気にし過ぎか?)

 シンは周囲の反応を窺いながら、そう考えるが、それでも胸の奥にチリチリとした不安が燻ぶる。

 それに気づいたジルはシンに声をかけた。

「大丈夫なのです。シンさんにはジルとエンジェがついているのですよ」

「ミャアミャア」

 シンの足下で生肉を頬張っていたエンジェもジルに同意するように鳴き声を発する。


「そうだな。警戒しておくにこしたことはないが、闇雲に不安がるのも良くはないな」

 ジルとエンジェに対し、シンは笑みを向ける。

 だが、あることに気づき、再び顔を顰めた。

 シンが考え事をしている間に、ジルと共に食べていたスープの器の中身が空っぽになっていたからだ。

「ジル~!」

「世の中、早い者勝ちなのです。それに大丈夫なのです。調理番の人がお代わり自由って言っていたのです。ジルもまだまだ食べ足りないから、シンさん、早くお代わりしに行くのですよ。朝の活力を得るために、朝食はしっかり食べておくのです」 

 口の周りをスープで汚したジルが悪びれなく、シンにお代わりを要求するのを見て、エンジェは少しシンを同情するように身体をシンのふくらはぎにすり寄せた。



「お代わり、お代わり。ルンルンなのです」

 エンジェの背に乗ったジルは空になった器を持ったシンと共に野営地にある食料配給所へと向かう。

 数多くの冒険者たちや騎士たちも今日の魔物討伐に備えて、食事を摂る様子にシンは目を向けていると何か言い争いをしている冒険者と騎士の姿が目に付いた。

 あご髭を少し生やした騎士の方に面識はないが、冒険者の方は知っていた。


 ヴィアーテの村で酒場のウエイトレスの少女に愛を告げていた若い冒険者。

 エリーザから危ない真似をしていたら、止めてやってほしいと頼まれた冒険者が騎士を相手に大きな声を上げている。

 約束とは言えないような約束だったが、シンはその冒険者が気になり、二人の方へと近づいて行った。



「だから、なんで俺が今日も引きつけ役をしないといけないんだ」

 ハーストは同じチームの騎士に抗議をした。

 魔生の森近辺の魔物討伐初日、ハーストは斥候役、引きつけ役を押し付けられた際、渋々ながらも翌日は魔物討伐を中心に行う騎士たち側の方に混ざれるだろうと期待し、その役目を引き受けた。

 だが、朝食を摂っている時に同じチームの騎士に肩を叩かれ、今日も引きつけ役を頼まれたのが、言い争いの発端だった。


「そうは言ってもな。昨日はそれで上手く魔物討伐ができたのだから、わざわざ編成を変える必要はないだろ。これもお前の能力を見込んでのことだ」

「じゃあ、俺は今回ずっと引きつけ役なのかよ!」

 騎士の何気ない言葉がハーストを気持ちを逆なでする。

 そんなつもりで、引きつけ役を受けたつもりはなかったのに、この様子ではこのままずっと斥候役、引きつけ役を押し付けられると予感したハーストは思わず声を荒げた。


 自分は騎士にならねばならない。そして、幼馴染の少女を迎えに行くのだ。

 小さなころは妹のようにも思っていた愛しい少女はハーストが迎えに行けなければ、いずれ見知らぬ商人や旅人と肌を重ねることになるだろう。

 それを防ぐためにも、今回の魔物討伐中に騎士たちから認められ、騎士への推薦をもらう必要があった。

 そのためにも斥候役、引きつけ役という地味な役割ではなく、もっと目に見える功績を、実力を騎士たちに見せつけていかなければならない。


「何が不満なんだ。騎士団の依頼は冒険者に斥候役を申し出るものだったはずだ。近年、参加してくれる冒険者たちの数が増えたため、斥候役だけでなく、討伐側に回る者も増えたが」

「冒険者の役割は知っている!だけど、俺以外にも冒険者はたくさんいるじゃないか!」

 昨日は二人の冒険者が斥候、引きつけ役を行う形を取っていたが、騎士5人と冒険者10人で1チームを作っている以上、冒険者が交代で引きつけ役を行い、残る8人が討伐側に回ることが可能だった。


 ハーストが引きつけ役をしなくても、他の冒険者が引きつけ役を行えばいい。

 騎士を相手に噛みつくような真似は好ましくないのはわかっている。

 だが、それでも騎士にならねばならない思いがハーストをいきり立たせた。


「……そこまで言うなら、同じチームの冒険者たちに頼んで引きつけ役を替わってもらうことだな。だが、引き受けてもらえんかった場合は、お前に今日も引きつけ役をこなしてもらうぞ。それを断るならお前はチームから出て行ってもらわざるをえん」

 騎士はハーストに対して、呆れた様子を見せながら、提案を行う。

 ハーストがある思い違いをしていることにはそれとなく気づいていたが、ハーストに教えれば、逆効果になるだろう。また、冒険者たちが討伐側に回りたがることが多いため、ハーストが頼んでもおそらくは上手くはいかないだろうと思いながら。


 騎士はハーストが頷いたことを確認すると軽く自分の髭を掻きながら、その場を立ち去った。

 ハーストはどうすれば、他の冒険者に引きつけ役を替わってもらうか考えを巡らせるが、なかなか良い考えが浮かんでこない。

 ハーストがパーティを組んでいれば、パーティメンバーに頼むことができただろうが、ハーストは臨時パーティを組みはしても、固定パーティは組んではいなかった。

 いずれ、騎士になる予定であり、不定期ではあるが、時間を作ってはヴィアーテの村に幼馴染に会いに行けるように。

 ここにいる冒険者の多くが騎士になりたくて、この魔物討伐に参加してきているのだから、単に替わってほしいといったところで功を奏さないだろう。


「それでも頭を下げて、何とか引き受けてもらわないと。……俺は騎士になるんだ」

 ハーストは自分に言い聞かせるように呟く。

 そんな中、ほぼ同年代の冒険者が自分を見ていることに気づいた。

 ハーストと同様にボルディアナで活動している、黒髪の冒険者。シンだ。


 ハーストはシンの名を知っていた。そして、気に入らない男だと思っていた。

 7級であった時に、人喰い大鬼マンイーターの討伐に成功し、それをきっかけに第4騎士団の副隊長であるグラスから目をかけられるようになったシンが、グラスの勧誘を断ったという話を耳にしたことがあったからだ。

 ハーストにとって、喉から手が出るほどなりたいと願う騎士の誘いを断ったボルディアナの冒険者の若き有望株。


 そして、シンがヴィアーテの村でエリーザと談笑する姿も確認していた。

 まったくの誤解だが、ハーストはエリーザが歌を歌い終わった後、シンと一夜を共に過ごしたと考えていた。

 顔見知りであるエリーザがもう何年もそういった仕事をしているのは知っているため、今更客を取ることにとやかく言う気はなかったが、いずれ自分の愛しい幼馴染がこの男と肌を重ねることになるかもしれないとハーストに黒い情念を抱かせる。


「何を見てやがんだ!」

 ハーストはシンを睨みつけ、大きな声で叫んだ。



 いきなり敵意を持って、怒鳴りつけられたシンは少し苛立った表情を浮かべながら、ハーストに答える。

「そりゃ、いきなり朝っぱらから騎士を相手に大きな声で噛みついているようなやつがいたら、気にもなるだろ」

「お前には関係のないことだろが」

 確かにシンにとって、ハーストはボルディアナで顔を見かけたことがある程度で付き合いはまったくない。

 だが、エリーザに対して酩酊した頭でもハーストが馬鹿な真似をしていたり、危険なことをしようとしていれば、機会があれば止めるとは約束していた。

 焦ったハーストに注意しておくことくらいはしておくべきだろうと、シンは判断し、ハーストを宥めるように返答する。


「まったく関係ないことはねえよ。エリーザにあんたのことを頼まれたんだからな。騎士になりたくても、あんまり焦るなって。まだまだチャンスはいくらでもあるんだ。今回は魔物の数が多いみたいだし、焦り過ぎると危ないぞ」

 シンの言葉を聞いて、ハーストは身体を震わさせる。

 シンの口にしたエリーザの名と、自分はいつでも騎士になれるとでも言っているかのような余裕のある言葉がハーストを苛立たせる。


「……そんなに、エリーザ姉が良かったのかよ」

 拳を力強く握りしめながら、ハーストはそう口にする。

「はあ?何を言ってんだ?」

「しらばっくれてるんじゃねえよ!エリーザ姉と寝たんだろうが、この糞野郎!」

 ハーストの勘違いに気づいたシンは慌てて、ハーストの言葉を否定する。

 朝からするような話ではないが、グラスやミーシャの耳に間違った情報が入るのを避けるためだ。


「してねえよ。俺はあの村で女を買ったりしてねえよ」

「そうなのです、酷い誤解なのです。シンさんはいまだに女を知らない清い身体のままなのです。むしろ、あの時、ポイしておくべきだったのです」

 ジルがシンの言葉にコクコクと頷きながら、どっちの味方とも取れない馬鹿な発言をするが、もちろんハーストの耳には聞こえない。


「エリーザ姉はまだいい。だけど、あいつは、あいつだけは渡さない。絶対にだ!」

 ハーストには魔物討伐までにしなければならないことがあった。

 いつまでもシンを相手にしている時間などないのだ。

 ハーストはシンに自分の言いたいことを告げると足早に、自分と同じチームの冒険者たちを探して、その場を後にする。


「ちっ。なんなんだよ、あいつ」

 シンは舌打ちをして呟くが、いつまでもこの場に留まっているわけにはいかない。

 かなりの人の目がシンに集まっているからだ。

「さっさとお代わりをもらいに行くぞ。準備もする必要があるしな」

 シンはジル達に声をかけると、逃げるように食料配給所の方へと向かった。



「遅い!シン、何をもたもたしていたんだ!」

 金髪の騎士ラインバッハは時間ぎりぎりに準備を整えてやって来たシンに苛立ちを容赦なく浴びせる。

 あの後、ジルが合計3度もお代わりを要求したことで支度をするのが少し遅れてしまったのだ。

 それでも時間には間に合ったという思いから、シンは反論する。


「遅いって、時間通りじゃ」

「貴様のその頭には何も入っていないのか?魔物討伐を始まる前に編成を含めた確認事項があるだろうが」

 ラインバッハは反論したシンに心底小馬鹿にした表情でため息をついた。

「まあ、いい。貴様は今日も斥候役、引きつけ役をしていろ」

 ラインバッハのその言葉に他の騎士がシンに良いのかと視線を向ける。

 斥候役、引きつけ役よりも討伐側に回りたいのではないかと思ったからだ。


 もっともシンは斥候役、引きつけ役を行うことに大して異論はない。

 前日にそれらの役目でも貢献していると判断してもらえると再三確認を取っていたので、追加報酬はそれなりに期待できるし、引き受け手が少ない役目の方が小なりとも功徳ポイントを期待できるためだ。


「わかりました。じゃあ、昨日と同じく魔物を討伐側のところまで誘導して、余裕がありゃ、戦闘に参加すればいいんですよね?」

「そうだ。我ら騎士たちが魔物などに後れを取ることがない以上、貴様は我らの雄姿をのんびりと眺めてでもいればいい」

 ラインバッハの言葉にシンは苦笑する。


 騎士を目指す他の冒険者からすれば、喧嘩を売っているとも思われかねないその物言いもシンからすれば、大して腹も立たない。楽をできるということは功徳ポイントを消費することもないということだ。

「そっか、それならそうさせてもらいます。斥候や引きつけ役も重要な役目なんだし、後でさぼっているとか文句を言うのはなしですよ」

「騎士に二言はない」

 自分の言葉を軽く受け流すシンをまじまじと見ながら、ラインバッハは頷いた。



 シン達のチームはその日の午前中の魔物討伐も順調に進めていく。

 軽く保存食を口にして、身体を休めた後、午後からの魔物討伐を再開させたシンは昨日とは違い、周囲にいる魔物の数が減りだしてきたことに気づいた。

「シン、何かあったか?」

 同じチームの騎士がシンの誘導した魔物を討伐した後、浮かない様子のシンに声をかけてきた。


「いや、昨日と違って、魔物の数が減ってないですか?」

「ああ、そのことか。シンは確か魔物討伐に同行するのは初めてだったな。おそらく、我々のことを警戒しだしたのだろう。普段通りだ。早ければ、初日でもこういったことはありえる」

 魔生の森周辺にいた魔物の一部が、森の外は危ないと判断し、森の中へと身を潜めだしたのだ。

「じゃあ、これからは……」

「シンには悪いが、お前にはそろそろ魔生の森の浅層部から魔物を誘導してもらわねばならない。我々も魔生の森の付近でいつでも動けるように待機しておくが」

「シン、お前なら上手くやれるだろう」

 シンが騎士と話をしているのに気づいたラインバッハが二人に近づき、声をかけてきた。


「ラインバッハさん」

「貴様の言っていたように、斥候役、引きつけ役は重要な役目だ。騎乗した我々が森の中では行動しにくいというのもあるが、何百人もの騎士や冒険者たちが闇雲に森に入り、魔物を討伐するのは浅層部の魔物だけではなく、中層部の魔物たちまで刺激することになりかねない。魔生の森に入らずに行う斥候、引きつけ役は阿呆でもできるが、魔生の森に入る場合にはそうではなくなる」

「ラインバッハ、隊長から聞いた話を自分の知識のようにしゃべるのはどうかと思うぞ。それとこういう時は信用できる者でないと任せられんとはっきり口にしろ」

 先輩の騎士の言葉にラインバッハは頬を紅潮させる。


「先輩!私が信用しているのはシンではなく、そのエンジェとかいう猫の感知能力です。まあ、エンジェの飼い主としての貴様にはまったく期待していないわけでもないが、普段の魔生の森よりも魔物が多いだろうから、少なすぎず、多すぎない数の魔物を上手く引きつけて来い」

 そう言うとラインバッハは前髪をかき上げ、シン達に背を向けると自分の持ち場へと戻る。


「すまんな、シン。悪い奴ではないのだが」

「別に腹を立てたりはしてませんよ。でも、それならそうとはっきり教えておけば、他の冒険者も斥候役や引きつけ役を積極的にするようになるんじゃ」

「それをすると未熟な冒険者の死者が増え、討伐側の騎士や冒険者の危険が高まることになりかねない。そのため、魔生の森での斥候、引き立て役はチームの中で最も適性のありそうな者に頼むことにしているのだが」

「そうですか……じゃあ、俺は少し休憩したら魔生の森から魔物を誘き出してきます」

 シンは納得がいったというように頷くと、騎士にそう告げる。

 少し面倒くさい役目ではあるが、認められている、期待されているのであれば悪い気はしない。

 その騎士もシンの言葉に笑みを浮かべるとラインバッハの後を追うように自分の持ち場へと戻る。

 ジルはそんな二人の騎士の姿を眺めて、そして呟いた。

「……やっぱりツンデレさんだったのです」

「まあ、人から誤解をされそうなタイプではあるな……」

 シンはジルの意見に同意し、苦笑した。

 そして、ゆっくり立ち上がると二か月ぶりに魔生の森の中へと足を踏み入れた。

本当にお久しぶりです。

今後はもっと小まめに投稿していきたいなと思っています。


長期休載してしまったので、心機一転させる意味も込めまして、「打算ありあり善行冒険者」のタイトルを今週の適当な時に「異世界の善行冒険者」にする予定です。


以前から打算が少ないという指摘を受けていたことや、作者としても主人公の成長していくような姿を描きたいと考えているため、章が進めば、進むほど、タイトルと主人公のイメージが離れていってしまいそうなのも理由です。


今後もご愛読いただければ幸いです。

来週の日曜日くらいには、また続きを投稿できるように、頑張りたいと思います。

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