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 最初からそちらの話しをして欲しかったです。余計などうでもいい話しを、聞かされてしまいました。しかし、こちらも有力な情報です。マダムの過去が少し分かりました。子供が産めない体ならば、当然今の息子は、目に入れても痛くない程可愛いでしょう。どうやらマダムと父親は、お互い以前のパートナーを亡くし、再婚していると言う事になります。おまけにマダムは本当の息子まで、亡くしているのです。これもまた私達には、初耳の話しでした。

 ここに来てまだ全く分からない事は、マダムと息子の父親、つまりは亭主との関係でした。果たして上手く行っているのか、はたまたそうではないのか・・・。

「亭主との関係はどうだ?最近上手く行っていないとか、聞かなかったか?」

 流石は父です。私が疑問に思った事を、父も疑問に感じていた様で、メガネに訪ねます。

「亭主とですか?いえ、そんな話しは聞いてませんね。むしろ仲がとても良いくらいですよ。捜査願いを届けに来た時も、二人一緒でしたし、二人共とても心配していて、ずっとお互い手を握っていた程ですからね。」

「そうか・・・。」

 どうやら夫婦仲は、上手く行っている様子です。ですが分かりませんよ。そう見せ掛けているだけ、かもしれませんから。

 結局メガネの所でも、これ以上の情報は無く、私達は一旦事務所へと戻る事にしました。

 事務所に戻った私達は、改めてマダムから渡された息子の資料を見つめます。息子の写真も当然有りますが、とても可愛らしい子です。まさかこんな可愛らしい子が、如何わしい事に手を染めている等、考えたくもありません。

「情報が少なすぎますね。」

「あぁ、それもそうだが・・・。妙だな。」

 やはり父は、資料と睨めっこをしていました。

「妙とは?」

「うん。マダムと亭主の情報は有っても、息子の情報が一切ない。この資料にも、顔写真と手紙しかないし、後分かっているのは年齢と、父親と写った写真を持っていると言う事だけだ。」

「言われてみれば、そうですね。確かに・・・。本来一番必要とされる息子の情報が少なすぎます。携帯番号すら書いていない・・・。」

 父の鋭い指摘に、私は大きく頷きました。ここに来て大きな落とし穴に気づいたのです。

 息子の情報は、マダムから貰った物以外は全くと言っていい程有りません。他から仕入れた情報は、全て息子以外の物。これは不可解です。

「まぁ、息子の部屋を見せて貰えば、何か分かるかもしれませんよ。ついでに情報も有るかもしれません。」

「そうだな・・・。だといいが。」

 父は何だか浮かない顔をしていました。納得がいかな、正にそんな感じです。私も同じ気持ちでしたが、深く考えると面倒臭そうなので、止めておきます。

 翌日は、約束通り息子の部屋を見せて貰う為、父とマダム宅へと向いました。そこは火を点けてしまいたくなる程腹ただしく思える・・・いえ、空いた口が塞がらない程の、豪邸でした。

 私は無駄にデカイ玄関のドアの横にある、チャイムを鳴らしました。しかし、誰も出て来る気配がありません。市川悦子でも出て来そうな雰囲気ですが、全く出て来る気配はありません。

「留守でしょうか?」

 それならば、約束をすっぽかされ気分を害します。

「いや、居るはずだろう。あれだけ息子の事を心配していたのだからね。」

 もう一度、チャイムを鳴らしてみました。しかしやはりと言っていいのか、誰も出る気配はありませんでした。

 仕方なく私達は、勝手にお邪魔する事にしました。平気ですよね?だって約束をしていたのですから。おまけに入って下さい、と言わんばかりに、ドアに鍵が掛かっていなかったのです。

「空いてますね。入ってしまいましょう。」

「構わんが、部屋は分かるのか?」

「子供の部屋ですから。見れば分かりますよ。」

 そう、すぐに分かります・・・。入ってすぐの玄関先で血塗れになって倒れている人物が、マダムだと!

「おっおっおっお父さん!これは一体!」

 血です!真っ赤です!おまけにこれは完全に亡くなられています。家に入ってすぐに、マダムの死体を発見してしまいました!

「これは出血の量から言って、既に手遅れだな。検察に連絡をしなさい。」

「は・・・はぁ・・・。」

 何でしょうか、父のこの落ち着き様は。太っていると大らかになるとは、本当なのでしょうか。

 私は検察へと連絡をすると、すぐにメガネが部下を引き連れてやって来ました。私の通報にはメガネも驚いたらしく、マダムの死体を見るなり、腰を抜かしていました。

「こっこっこっこれは!どう言う事ですか?教授!」

 私と似た様な反応は、何だかとても嫌です。気分を害されました。

「見ての通りだよ。マダムの死体だ。わたし達が来た時には、既に死んでいた。玄関の鍵は開いていたよ。」

「何と!何て事だ!死因はっ?」

「頭部からの出血多量と打撲。おそらく上から落ちたのだろう。」

「成程。」

 何故メガネが父から死因を聞いて、納得しているのでしょうか。ここは自分達でまず調べる事が仕事のはず・・・。

「上からの転落か・・・。突き落とされた可能性も有るな。鑑識っ!」

 メガネはようやく自分達の仕事をし始めました。

「お父さん、どうしましょう。依頼人のマダムが死んでしまいました。」

「そうだな・・・。」

「と言う事は、私達の仕事はこれで無くなったと言う事になりますね。」

「いや、そう言うわけにはいかないだろう。」

「ですよねぇ~・・・。」

 やはりこのままおじゃんにすると言う事は、無理そうです。私達の依頼は、どうやらまだ続くようです・・・。


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