第一章②
「うわぁ」目の前に黒っぽい何かが見えた。
さっきも言ったが俺は体質なのか周りの人には見えないものが見えることがある。
危害を加えてくることもあるが基本的にはこっちが興味を向けたり、不用意に近づいたりしない限りは
特に危険はない。
今回もそのたぐいのものだろうと思いそこから離れようとした。
でもその瞬間、その黒いものと目が合った。
いや、≪それ≫から目のようなものが出てきた。
「おいおいおいおい、勘弁してくれ」
≪それ≫は少しづつこっちに近づいてくる。
しかもだんだんと大きく膨らんでいる。
「やっべえぇぇぇぇ」
俺は走り出した。
≪それ≫は今や俺の倍程度まで大きくなっており、しかも口までついてた。
「確かにもう生きてる意味ないとか考えたこともあったけど、こんなキモいのに食われて死ぬなんて御免だ」
俺は走った、めっちゃ走った。
「どこだよここ」
気が付いたら全く分からない道に来ていた。
「でも何とかまいたみてぇだな」
俺は来た道を振り返って安堵した。
「さて、どうしたもんか」
とりあえず大きな道に出る為振り向いた。
そのときには、≪それ≫はもう目の前にいた。
いたというよりわいて出た、その赤い大きな目とまた目が合っていた。
恐怖で声が出ない。
俺は崩れるように座り込んだ、逃げないとと思うが足がすくんで動けない。
≪それ≫は近づいてくる、人を呼ぼうにも「あ、くぁ」という息しか出なかった。
そもそも人を呼んだところで、普通の人に見えるとも思えない。
もう終わった。
そう思って俺は潔く目をつぶる。
あぁせめて、せめて彼女くらい作って死にたかった。
あれ?
一向に何かある気配がない。
俺はうっすらと目を開ける。
すると目の前に女の子が立っていた。
サラサラなロングヘアーをなびかせこっちを振り向いた。
..........うわぁ超タイプ。
吊り目で、凛としていて、スタイルよくて。
ドストライク!!!
ってんなこと考えてる場合じゃなかった。
、≪それ≫は止まっていた。
というより止められていた、いや、彼女の足に踏まれていた。
彼女は足を振り上げ思いっきり≪それ≫を蹴飛ばした。
俺は≪それ≫が転がっていくのをただただ茫然と見ていた。
「な、何してんのあんた、てかあんた何物だよ、あんなわけわかんないもん蹴り飛ばすし」俺はやっとのことで声を出した。
「私?、陰陽師だけど。」そいつはにっこりと笑った。
そいつが俺と陰陽師 月島 蒼空(つきしま そら)の最初の出会いだった。