第一章①
「陰陽師。
聞いたことくらいあるでしょ、ほら、平安時代?の安部晴明(あべのせいめい)とか有名じゃないですか。映画とかだと貴族っぽい人が印結んだら炎がバァーーーって出たり、紙人形に息吹きかけたら人間になったりっていうあれですね。まぁ正確にはどっちも<陽>術で、炎の生成は<火>の、紙人形は<土>の印を結んでるんですけどね.....ってあなたに言っても意味わかんないですよね。」そいつはそんな風に言った。
てか。
何言ってんだこいつ?正気なのか?気がくるってるのか?そもそもなんでこんな説明受けてんだ?俺には一切が分からない。
当事者の俺が何で分かんないのかって?
そんなもん仕方ない。
分かんないもんは分かんないのだから。
ここがどこなのかも、そいつが何物なのか、そして≪それ≫がなんなのか。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
電車で2時間、さらにバスを乗り継ぐこと3回。
東京から計5時間でここ桜見(さくらみ)市についた。
田舎とも都会とも言い難い。
これが最初に俺がこの町に抱いた感想だった。
電車もバスも通っており、そこそこ大きな商店街もあった。
何一つ不便はないがこれといって何があるとも言い難い町。
普通に生活する分には何不自由しないだろう。
だが今までずっと都会に住んでいた俺にとってそこは田舎、いやド田舎としか感じられない。
「最悪だ」俺はため息をつく。
何故俺がこんなところにいるのか?
色々理由はあるが最初から順を追って説明するとしよう、
俺誕生→母蒸発→高校1年終了→父病気により死亡→母方の親戚に会いに
以上。
なので俺は今親戚の家へ向かっているのである。
そもそもおれはこんなところに来る気はこれっぽっちも無かった。
親父がかけてくれていた保険、その他各種の遺産で俺が大学卒業できるには十分なお金があったからだ。
だが、父の葬式が終わって数日後、突然電話がかかってきた。
TRRRR....
「もしもし、神宮 龍也(しんぐう りゅうや)様でしょうか」凛とした声が電話から聞こえた。
自己紹介が遅れたが俺の名前は神宮 龍也と言う。
ちなみに父は婿養子であるので苗字は母方のものである。
そんなどうでもいい説明は置いておくとして、電話の続きに戻る。
「はいそうですが、どちらさまでしょうか?」
「申し遅れました、私琴音(ことね)様の姉に当たられる神宮 彩音様の使いの者です。」
琴音は俺の死んだ母の名である。
「はぁ」俺は顔をしかめた。
「その彩音様の使いの方が何か御用ですか?」
「今回お父上がお亡くなりになったと聞き彩音様が大変お心を痛めておいでです、なので是非竜也様とお話がしたいと申しております。」
「結構です。」俺は電話をきった。
父親から母の話などほとんど聞いたことはない。
ましてや母の姉の話などもっての他である。
そんな人からの突然の連絡、胡散臭いことこのうえない。
父が亡くなり俺の手には学生の身に余るお金がある。
よってそれに群がってくる輩が出てきてもおかしくない。
今回のようにいつ何時詐欺まがいのことをされるかわからない、気を付けなければ。
TRRRRR.....
ふたたび電話が鳴った。
「もしもし、電話が切れたようですがどうにかなされましたか?」さっきの女の声だ。
ブチッ
俺はまた電話を切る。
TR
ブツッ
電話が鳴る前に今度は電話線語と引っこ抜く。
「ふぅ、しつこい。」
これで電話がかかってくることはないだろう、どっと疲れたので俺はすぐに眠りについた。
次の日
「ふわぁああ」起きて時計を確認するともう昼前、春休みなので学校もなく特に急ぐこともない。
「飯でも食うか、ん?」俺の寝ていた枕元に見慣れない封筒があった。
「なんじゃこりゃ?」俺はその怪しげな封筒をあける、
そこには
電話でろ
と書いてあった。
....................................血文字で。
「へふぁおいえうrhごいwrうhguw@¥ぼうわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺はその封筒を放り投げた。
「こ、怖すぎるだろうがぼけえぇ」とりあえず誰に向けてかわからないがつぶやいた。
「なんでこんなもんが俺の枕元に、ここ最近はこんなことなかったし、そもそもこんな超物理的超常現象は今までなかったぞぼけぇ」まだ落ち着かない俺はとりあえず暴言をさいごに吐く。
俺は霊感体質?のため過去色々不思議体験をしてきたが今回のようなことは初めてだった。
まぁ詳しい話はまた機会があれば話そう。
「ん、電話?」俺は昨日の電話女を思い出した。
「まさかな、そもそもこの封筒どっから入ってきた?、寝る前に戸締りは確認したしな。」念のためにもう一度確認したが全ての戸、窓はしっかりと閉まっていた。
「電話ねぇ」正直電話に出るのはむちゃくちゃ怖いが、この封筒のこともあの女に聞かなければ何も始まらない。
「よっしゃ」俺は意を決して電話線をはめ直した。
TRRRRRR......
その瞬間に電話が鳴った。
「も、もへもひ?」俺は緊張のあまり声が上ずった。
「やっと出てくださいましたか、かれこれ3万4543回電話をかけ直したんですよ?」
怖ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
3万何回だって?
怖すぎるだろ。
「す、すみませんでした」俺はとりあえず謝ることしかできなかった。
「それはもうこれ以上文句を言っても仕方ないでしょう、それで昨日の話は考えていただけましたか?」
「昨日の話?」
「彩音様と会っていただくという話です」
「あぁ」俺はすっかり忘れていた。
「嫌!!待て待て、それより先にあの封筒はなんなんですか?」俺は先に聞いておかなければいけなかったことをたずた。
「..........それはさておき、で、どうなんですか?」
「いやいやいや、だから「うるさいですね、だからどうなんですかと聞いているんです、さっさと答えてください、吊るしますよ?」
俺は最後まで言わせてもらえなかった。
...........というか、吊るすってどういうことだ?
「す、すいません、とりあえず考えさせてください」
「わかりました、3秒上げるので考えてください」女は言った。
「え?3びょ「3」考える暇もなくカウントダウンが始まった。
「ちょっまってくださ「2」
「あの、だから「1」
「0」
「で、来るんですか?来るんですよね?」拒否権は俺には無いようだ、というか女のキャラが最初の電話から大きく変わってきている。
「はぁ、そもそもなんで俺は父親の葬式にも来なかったような人に会いに行かなきゃ会いに行かなきゃなんないんですか?そもそも母の姉の話なんか聞いたこともないですし」俺はここに来てやっとこの女にも慣れてきて冷静に考えれるようになった。
「彩音様はお忙しい方なのです、そのことも含めてお話しいたしますので彩音様にあっていただきたいのです」
この女も、彩音という人も全く信用ならないがもしかしたら本当に父や母のことを知っている人なのかもしれない。
話をするくらいならお金を取られることもないだろうし、別に危害を加えられることもないだろうから話を聞くくらいならいいだろうと思えてきた。
「分かりました、会うだけならいいですよ、どこに行けばいいんですか?」俺は女に言った。
「ありがとうございます、場所はまた追って連絡させていただきます、それでわ」女は答えた。
「ちょっとまってください、あの一つ伺っておきたいのですが」電話が切られる前に聞いておかなければならないことがあった。
「なんでしょうか?」
「この封筒っていった「ブツッ、ツーツーツー」
切られた。
色々とわけのわからないやつだ、しかもとてつもなく胡散臭い。
正直こんな奴らに会いに行くのはどうかしていると思う。
でももしかしたら父や母のことを聞けるのかもしれない。
それにもし騙されていたとしても、父も死んでしまった今俺に身内はいないしもう俺がどうなったところで問題ない。
そんな風に思えた。
「自暴自棄だな俺」と言っててなんか中2っぽいと自分で笑った。
そんなわけで俺は指定された彩音の家に向かっていた。
「うわっもう日が暮れてきた来た」5時間かけてここまで来たのでもうあたりは茜色から暗闇になりつつあった。
知らない場所で、しかも暗くなるとなんとなく不安になる。
「なんかここら辺雰囲気あってやな感じだなぁ」
薄暗い十字路はいかにもホラー映画の用で気持ち悪かった。
「はぁ、なんで俺こんなとこにいるんだ、もう帰ろうかな。」通ってきた道に旅館もあったし、時間もあるので泊まろうかと考えた。