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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

怪談:燃えた女

掲載日:2026/04/22

修学旅行のオリエンテーションで怪談をしようということになったので作成した話ですが、結構出来に満足したので投稿しました。

この作品の話の筋は自分で考えましたが、Geminiを使用して口調など考えてもらった部分が複数あります。

 大正末期。山あいの温泉宿を営む正造は、ある夜、取り返しのつかない過ちを犯した。 釜風呂を焚く際、酒に酔い、火を強くしすぎたまま眠りに落ちてしまったのだ。 激しい音に目を覚ましたとき、風呂場は火の海。そこには、一人で泊まっていた身寄りのない女客がいた。

事件は「不慮の事故」として処理されたが、正造の心には、焦げた肉の匂いと、あの日風呂場から聞こえた「熱い、熱い」という言葉、そして爪で壁を掻きむしる音が頭から離れなかった。

 一ヶ月後。生きる屍のようになった正造を見かね、友人の清吉が彼を誘い出した。 「正造、そんな顔をするな。路地裏にいい居酒屋があるんだ。女将がいい人でな」 連れられて行ったのは、街外れの古びた居酒屋だった。

店内は薄暗く、妙に煙たい。カウンターの奥に立つ女将は、こちらに背を向けたまま、黙々と鍋をかき混ぜている。 「女将さん、こっちを向いてくれよ」 清吉が陽気に声をかけるが、女将は微動だにしない。 「おかしいな。前はあんなに愛想が良かったのに。たまたま機嫌が悪いんだろう」 正造はその背中から、言いようのない寒気を感じていた。

 数日後、正造は導かれるように、一人で再びその店を訪れた。 店内には他に客が一人もおらず、なんだか嫌な空気が漂っている。女将はあの日と同じように背を向けて立っている。 「……おい。あんた、なんでこっちを向かないんだ」 正造が震える声で問いかけるが、返事はない。 耐えきれなくなった正造は、カウンターを乗り出し、無理やり女将の顔を覗き込んだ。

「うわあああッ!」

そこにあったのは、人の顔ではなかった。 髪は焼け落ち、皮膚は溶けた蝋のように垂れ下がり、剥き出しの眼球が正造を射抜いている。 「……見たね」 女の声は、あの日、釜風呂の向こうから聞こえたあのかすれ声だった。 「あの日、私は熱かった。あなたは、こんなに近くにいたのに」

正造は腰を抜かし、這うようにして店を飛び出した。狂ったように走り、清吉の家へ転げ込んだ。

 「幽霊が出た!あの宿の客だ!」 錯乱する正造を、清吉は「疲れが出たんだ」となだめ、夜道を正造の自宅まで送り届けた。 「しっかりしろ。鍵をかけて、明日の朝まで寝ていろ」

清吉と別れ、正造は布団に潜り込んだ。ガタガタと震えながら、いつの間にか深い眠りに落ちていた。 ふと、頬を撫でるような熱気に目を覚ます。

暗闇の中、枕元に誰かが正座していた。 あの女将だった。

正造が叫ぼうとしたが、声が出ない。よく見ると、部屋の畳が見えないほどに、乾いた藁が敷き詰められている。 女は無言で、懐からマッチを取り出した。 一本の軸を箱に走らせる。

――シュッ、と心地よい音がした。

暗闇に小さな火が灯り、女のただれた顔を赤く照らし出す。 「今度は、二人で温まりましょう」 女がそう笑うと、ポタリと顔の肉が藁の上に落ちた。 火が放たれた。 乾燥した藁は一瞬で爆ぜるように燃え上がり、正造の悲鳴は、轟々と鳴り響く火の中に溶けて消えた。

翌朝、焼け跡から見つかったのは、性別も判別できぬ二つの焼死体であったという。

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