表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

表示が、書き換わる

夜。


 青年がベッドに倒れ込み、

 ほどなく寝息を立て始めた。


 俺は、鞘の中。


 静けさの中で、

 いつもの感覚を待つ。


 やがて――

 視界に、表示が浮かんだ。



《初期装備:訓練用ショートソード》

《攻撃力+1》

《付与効果:なし》

《耐久度:95 / 100》

《売却価格:銀貨3枚》



 見慣れた表示。


 だが、今日は。


 文字の輪郭が、わずかに揺れている。


 まるで、

 書き換えを拒んでいるみたいに。


 次の瞬間。


 画面が、暗転した。


 ――バチッ。


 小さな、弾けるような音。


 そして。



《装備名:訓練用ショートソード》



 一行だけが、表示される。


 その文字が、

 じわりと滲み――


 消えた。


 代わりに、

 新しい文字が打ち込まれていく。



《装備名:無銘のショートソード》

《攻撃力+2》

《付与効果:なし》

《耐久度:95 / 100》

《売却価格:――》



 ……ああ。


 これが。


 世界の判断か。


 初期装備。

 訓練用。

 値段付きの消耗品。


 その枠から――

 外された。


 続いて、内部情報。



【内部情報】


武装種別:回収対象

成長段階:3

同調率:31%


補正:

・重量補正(中)

・軌道補正(中)

・衝撃吸収(小)



 数値は、静かだ。


 だが、意味は重い。


 俺はもう、

 「最初に持たされる剣」じゃない。


 値段も、表示されない。


 売る前提ですら、

 扱われていない。


 翌朝。


 青年は、いつも通り俺を抜いた。


 ――スッ。


 その瞬間。


「……あ」


 動きが、止まる。


 青年は、俺を見下ろした。


 首を傾げる。


「……重さは、同じなのに」


 何度か、振る。


 シュッ。シュッ。


 音が、揃っている。


「……戻りが、速い」


 言葉にしてから、

 自分で驚いたような顔をした。


「……え?」

「なんで、こんな……」


 見えていない。


 表示は、まだ。


 だが。


 “初期装備”じゃない感触は、

 もう誤魔化せない。


 街へ向かう途中、

 武具屋の前で足が止まる。


 昨日まで、

 通り過ぎていた店。


 今日は――

 なぜか、入った。


 店主が俺を見る。


 一瞬。

 視線が、止まる。


「……それ」


 低い声。


「初期装備じゃ、ないな」


 青年が目を丸くする。


「え?」


「表示は、まだ訓練用だ」

「だが……振りが違う」


 店主は俺を受け取り、

 軽く構える。


 ――シュッ。


 空を切る音。


 眉が、わずかに動いた。


「……名もない剣だ」

「だが、もう“最初の一本”じゃない」

青年は、戸惑ったように笑った。


「そう……なんですか」


 分かっていない。


 だが、

 否定もできていない。


 俺は、静かに確信する。


 もう、戻れない。


 お店を出たあと青年は、軽く笑った。


「……使いやすいなら、いいか」


 そう言って、

 何事もなかったように、鞘に収める。


 俺は、静かになった。


 表示は、もう動かない。


 今の俺は――

 初期装備じゃない。


 それだけで、十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ