噛み合う刃
昼前。
街道から外れた草地で、
青年は足を止めた。
――ザッ。
草を踏む音。
魔物が、三体。
小型。
牙が短く、爪が鋭い。
動きは速い。
距離を詰めるのが得意なタイプだ。
以前なら、
青年は一歩、引いていた。
だが――
今は、引かない。
「……来い」
一体目が跳んだ。
ギャッ――!
爪が振り下ろされる。
キンッ!
刃が弾く。
手に、衝撃が残らない。
以前なら、
腕まで響いていたはずの反動。
だが今は――
吸収されている。
二体目が、横から回り込む。
ザザッ、と草を蹴る音。
青年が体を捻る。
俺を振る。
シュッ――
空気を裂く音が、短い。
狙った場所に、
刃が吸い込まれるように入る。
ズン。
浅い。
だが、確実。
魔物が地面に転がり、
ギィ、と声を上げて動かなくなる。
三体目が距離を詰める。
低く唸り、
一気に跳躍。
牙が、目の前に迫る。
――速い。
だが。
青年の腕が、迷わない。
俺が、
次の位置へ導く。
振り抜いた刃が、自然に戻る。
構え直す必要がない。
タンッ。
踏み込み。
ズバッ!
刃が、魔物の首元を捉える。
肉を断つ感触。
骨に当たらない。
抵抗が、少ない。
魔物の体が、ずるりと崩れ落ちる。
戦闘終了。
草が、静かに揺れた。
青年は、その場で立ち尽くした。
――ハァ、ハァ。
呼吸が荒い。
だが、足は震えていない。
剣を握る手も、だ。
ゆっくりと、俺を見る。
「……今の」
声が、少し掠れている。
「前より……」
「怖くなかった」
それが、何よりの証拠。
青年は、試すように俺を振った。
シュッ。
音が、一定。
ブレがない。
重いはずの刃が、
手の中で暴れない。
「……すごいな」
ぽつりと。
「同じ剣なのに」
違う。
同じじゃない。
俺の中で、
何かが、確実に噛み合った。
段階。
数値。
同調。
それが、音を立てずに更新される。
まだ、表示は変わらない。
まだ、誰にも見えない。
だが。
この一戦で、
俺は確信した。
もう、初期装備の動きじゃない。
次に世界が俺を評価するとき。
そこには――
はっきりとした差が出る。
それだけの、
戦いだった。




