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初期装備は、ずっと初期装備じゃない

翌朝。


 青年はいつも通り俺を抜いた。


「……あれ?」


 首を傾げる。


「前より、少し軽い……?」


 見えてはいない。

 だが、感じている。


 内部補正は、

 持ち主の“感覚”として滲み出る。


 青年は何度か、ゆっくりと俺を振った。

 確かめるように。

 探るように。


「気のせい、かな……」


 そう呟きながらも、

 その手は昨日より迷っていなかった。


 街の外れ。

 人の少ない場所。


 いつもの素振り。


 動きは派手じゃない。

 速くもない。


 それでも――

 刃の軌道は、昨日より安定している。


 俺は分かる。


 これは、青年が急に上手くなったわけじゃない。

 噛み合い始めただけだ。


 俺と、この持ち主が。


 昼前、街へ戻る途中。

 武具屋の前で、青年は足を止めた。


「……研いだ方が、いいのかな」


 店主がちらりと俺を見る。


「訓練用だな」

「まあ、刃は減ってるが……」


 そこで、言葉が止まった。


 店主は、もう一度俺を見る。


「……いや」

「なんだこれ」


 声が低くなる。


 青年が不安そうに尋ねる。


「ど、どうかしました?」


「いや……数値は低い」

「見た目も、間違いなく安物だ」


 店主は顎に手を当てる。


「だが、重心が妙に落ち着いてる」

「振りの“戻り”が、訓練用じゃない」


 違和感。

 そこまで。


 店主は首を振る。


「まあ、気のせいか」

「安物は安物だ」


 青年はほっとしたように笑い、

 その場を離れた。


 ――見えていない。


 世界には、まだ。


 その夜。


 再び、表示が浮かぶ。



《初期装備:訓練用ショートソード》

《攻撃力+1》

《付与効果:なし》

《耐久度:98 / 100》

《売却価格:銀貨3枚》



 変わらない。

 ――表向きは。


 だが、内部情報の最下段。


 今までなかった行が、静かに追加された。



【成長補足】


・成長段階2到達時

 武装区分が更新されます

・更新後は

 「初期装備」扱いから除外されます



 ……なるほど。


 ずっと、初期装備のままじゃない。


 この世界が決めた

 「使い捨て枠」から――

 外れる。


 どんな名前になるかは、まだ分からない。


 だが一つだけ、確かなことがある。


 銀貨三枚の剣では、

 いずれなくなる。


 今はまだ、

 攻撃力+1。

 付与効果なし。


 だが、次の更新で。


 俺は――

 初期装備を、卒業する。

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