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再配布

 朝。


 倉庫の扉が、

 軋む音を立てて開いた。


 差し込んだ光に、

 棚に積まれた剣たちが

 一斉に鈍く反射する。


「次の勇者用は……この辺か」


 白い外套の男が、

 棚を眺めながら歩く。


 伸びる手に、

 迷いはない。


 俺は、

 他の剣と一緒に掴まれた。


 まとめて、抱えられる。


 運ばれる。


 廊下。

 階段。

 礼拝堂。


 外の光が、やけに眩しい。


 並ばされていたのは、

 若い男女――数人。


 皆、

 緊張した顔をしている。


「これより、装備を配る」


 教会の男は、

 それだけ言った。


 説明は、ない。


 順番に、剣が渡されていく。


 俺は、

 一人の少年の前で止まった。


 まだ幼さの残る顔。

 手が、わずかに震えている。


「……これで」


 差し出される。


 少年は一瞬戸惑い、

 それでも俺を受け取った。


 握りは、軽い。


 不慣れだ。


 だが――

 逃げ腰ではない。


 礼拝は、形式だけで終わった。


 短い祈り。

 そして、解散。


 少年は控え室の隅で、

 俺を抜いた。


 刃を、まじまじと見る。


「……普通だな」


 小さく、呟く。


 そうだ。


 見た目は、

 本当に何も変わっていない。


 刃の形も。

 重さも。

 光の鈍さも。


 倉庫に並んでいた頃と、

 見分けがつかないほどだ。


 初期装備と呼ばれても、

 仕方がない。


 最初は、

 本当にそうだった。


 誰かに選ばれる前から、

 誰にでも渡される剣だった。


 視界に、表示が浮かぶ。



《装備名:無銘のショートソード》

《攻撃力+7》

《付与効果:なし》

《耐久度:100 / 100》

《売却価格:――》



 少年には、

 見えていない。


 俺だけの、表示だ。


 歩きながら、

 少年はぽつりと呟いた。


「勇者、か……」


 その言葉に、

 胸の奥が、わずかに引っかかる。


 ――勇者候補。


 候補、とは何だ。


 勇者は、

 一人じゃないのか。


 この世界では、

 候補が何人も用意されている。


 足りなければ増やし、

 死ねば補充。


 随分と、

 扱いが軽い。


 まるで――

 壊れやすい道具だ。


 この少年も、

 その一つなのか。


 誰が決めている。

 何を基準に。

 いつから。


 このやり方で、

 本当に“勇者”は

 生まれるのだろうか。

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