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積み重なるもの

それから、少し時間が経った。


 何日か。

 あるいは、十日ほど。


 数えてはいない。


 街は変わらず、

 魔物も変わらず、

 勇者の噂だけが、時々入れ替わる。


 青年は、依頼を受けていた。


 小さな討伐。

 荷運びの護衛。

 危険は少ないが、

 確実に剣を使う仕事。


 派手さは、ない。


 だが――

 雑でも、ない。


 森の中。


 青年は、足を止める前に間合いに入った。

 魔物が気づくより早く、

 俺が先に動く。


 ヒュッ。


 斬撃が、

 狙った通りの位置を通る。


 以前なら、

 少しズレていたはずだ。


 魔物はよろめき、

 反撃に入る前に、

 二撃目が入る。


 倒れる。


 短い音。

 短い時間。


 青年は、息を整え、

 俺を一度だけ見下ろした。


「……今の、ちょうどよかったな」


 誰に向けた言葉でもない。

 確認のような、独り言。


 だが、

 確かに“手応え”があった。


 夜。


 宿の部屋。


 俺は、いつもの場所に立てかけられている。


 視界に、表示が浮かぶ。



《装備名:無銘のショートソード》

《攻撃力+4》

《付与効果:なし》

《耐久度:92 / 100》

《売却価格:――》



 耐久度が、減っている。


 削れ。

 擦れ。

 小さな傷。


 戦った証拠だ。


 だが。


 それだけじゃない。


 文字の奥。

 数値の裏。


 静かな変化が、

 確かに、そこにあった。


 あの夜のような、

 急な満ち方じゃない。


 少しずつ。

 何度も。

 同じ動きを繰り返すうちに、

 馴染んでいく感覚。


 青年の呼吸。

 踏み込みの癖。

 迷いが出る瞬間。


 それらが、

 俺の中に残っている。


 表示が、

 音もなく書き換わる。



《装備名:無銘のショートソード》

《攻撃力+5》

《付与効果:なし》

《耐久度:100 / 100》

《売却価格:――》



 数字が、一つ増えただけ。


 だが、

 感触は違う。


 軽さ。

 抜けの良さ。

 次の一撃に繋がる余白。


 翌朝。


 青年は、起きるとすぐ俺を手に取った。


 素振り。


 ヒュッ。

 ヒュッ。


 少し、首を傾げる。


「……やっぱ、振りやすいな」


 理由を探す様子は、ない。


 気のせいだと、

 そういうことにして、

 鞘に戻す。


 俺も、

 何も言わない。


 ただ、

 一つだけ分かっている。


 あの夜と、

 今とでは――


 増え方が、違う。

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