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繰り返される

朝。


 街の掲示板が、いつもより騒がしかった。


 人が集まり、

 指をさし、

 ひそひそと声を落とす。


 青年も、その前で足を止めた。


 紙が、一枚。

 新しく貼られている。


「……勇者、募集?」


 そう書いてある。


 いや。

 募集、じゃない。


 任命だ。


 名前は、もう書かれている。

 昨日まで、

 ここになかったはずの名だ。


 ――補充された。


 青年は、しばらく眺めてから、

 何も言わずに歩き出した。


 俺も、何も言わない。


 分からないことは、

 まだ多い。


 数日後。


 街の外れで、

 また騒ぎが起きた。


「魔物が出た!」


 同じ言葉。

 同じ叫び。


 違うのは――

 前に出た男の顔。


 新しい勇者だった。


 若い。

 装備は、支給品。


 動きは荒いが、

 勢いだけはある。


「俺がやる!」


 止める声は、

 今回もなかった。


 いや。

 聞く耳が、なかった。


 青年は、遠くからそれを見ていた。

 俺を抜くことは、ない。


 ――見ているだけだ。


 戦いは、短かった。


 勇者は突っ込み、

 魔物は受け止め、

 力で押し返した。


 防いだ、と思った瞬間。

 足が止まる。


 判断が、遅れる。


 ――同じだ。


 結果も。


 勇者は倒れ、

 魔物は去った。


 静かに。

 当然のように。


 夜。


 宿の部屋。


 青年は、黙ってベッドに腰掛けていた。

 俺は、壁に立てかけられている。


 ……来る。


 もう、分かる。


 視界に、表示が浮かぶ。



《装備名:無銘のショートソード》

《攻撃力+3》

《付与効果:なし》

《耐久度:100 / 100》

《売却価格:――》



 数値は、

 まだ変わらない。


 だが。


 その奥が、

 また、揺れた。


 嫌なほど、

 見覚えのある感覚。


 満ちる。

 静かに。

 確実に。


 俺は、

 目を逸らしたくなった。


 だが、

 逸らせない。


 表示が、書き換わる。



《装備名:無銘のショートソード》

《攻撃力+4》

《付与効果:なし》

《耐久度:100 / 100》

《売却価格:――》



 ……まただ。


 二度目。


 今度は、

 言い訳が効かない。


 戦っていない。

 鍛えられていない。


 それでも、

 強くなった。


 理由は、一つしかない。


 だが、

 まだ言葉にはしない。


 青年が、

 小さく息を吐く。


「……なぁ」


 独り言のように、

 俺に向けて。


「最近さ」


 少し、間。


「成長、早すぎないか?」


 答えは、ない。


 俺も、

 答えを持っていないふりをする。


 ただ。


 勇者が補充され、

 死に。


 そのたびに、

 俺が強くなる。


 それが、

 二度起きた。


 偶然という言葉は、

 もう、使えない。

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