嫉妬の狐火
いい感じの雰囲気が、雪の嫉妬の暴走から
一花に嫌われた、ショックから雪は何処へ?
柔らかい毛並みの感触
ふもふの柔らかな手触り
パタパタと一花が、耳を触る度に動く
夢か現実か分からず、一花が眼を覚ました。
寝息が聞こえ、目線を下げると
白銀の長く柔らかい髪がベッドに広がり
まるで大事な宝物を守るように
一花の腰に抱きついたまま眠る雪。
安心しているのか、静かな寝息が聞こえる。
雪の熱が伝わり思わず叫びそうになったが
喉に痛みを感じ、一花は声が出せずにいた。
一花の気配を感じとった雪が、眼を覚まし
慌てて、ベッドから起き上がると一花に
「一花!他に、痛む所は?」
宿儺の妖の熱風を吸い込んでしまったせいか
自分の喉を押さえて雪に見せると
それを見た雪が、ベッドから起き上がり
呼び鈴をチリンと鳴らすと
すぐに、ノックの音がして狐の妖の姿の女中が
入り口の扉の前で、頭を下げていた。
「一花に、蜂蜜湯を」
「若様、畏まりました」
蜂蜜湯を持ってきた女中が
若様に湯呑みを手渡した。
一花が火傷しない温度にと
ふうふうと蜂蜜湯を冷ましてくれる
雪を見て一花は、座って見ていた。
(何で、こんなに優しくしてくれるんだろ?)
雪が冷ましてくれた蜂蜜湯が入っている
湯呑みを、一花に手渡した。
頷湯のみに口を付けて、蜂蜜湯を飲むと
ほんのり温かくて、蜂蜜の甘さが
体中に広がって、喉の痛みを和らげてくれた。
コクコクと、蜂蜜湯を一花は全部飲み干し
彼女の瞳がキラキラ輝く顔を見た雪の耳と
尻尾が、ゆったりと左右に揺れていた。
雪がベッドにゴロンと寝転ぶ。
べっこう飴の金色の瞳から目が離せなく
学園で初めて見た時も、思ったんだけど
昔……遠い昔に何処かで、雪を見た事があるような
不思議な光景に、眼をパチパチと瞬きをしていた。
「一花、あいつの炎の影響があるから
もう少し、眠って休まないと」
一花は、いつの間にか眠りについてしまっていた。
(もふもふ……)
眼を開けると雪の顔が、近くにあって
びっくりして、後ろに思わず身を引いてしまった。
(うわあ。まつ毛も白いし、肌も雪のように白い)
ジッと雪を観察しているとピクピクと耳が
左右に動いたり、白い尻尾が左右に揺れるのが
どうしても、気になった一花は
少しだけなら触っても起きないかなと
指でちょんちょんと耳を触って
雪の様子を見ていたが起きる気配がなく
一花は小さく、喉を鳴らした。
もふもふしてみようと
耳を両手の掌で
もみもみしてると、柔らかいし温かくて
一花は、すっごい満足感と
幸福感に酔いしれていると、小さく笑う声がし
慌ててパッと手を離した。
(え?まさか、ずっと起きてたの?)
「一花、触り方がくすぐったい」
ポッと一花の頬が、赤くなり
そっぽを向いて、もふもふタイムがと
手をわちゃわちゃしてる姿を見た雪が
一花の耳元で、甘い声で囁いた。
「もっと、触っていいよ。尻尾も触る?
それとも、真っ白な狐に変化すれば
一花ならお腹に、顔を埋めていいんだよ?」
(……ッ!!)
甘ったるい声に、真っ赤になる耳を押さえて
一花が、部屋から走り去る姿に
雪の尻尾がブワッと、膨らんでいた。
「ん"ん"っ!」
「何、見物してんだ?」
部屋の中に隠れてたネズミに
怪訝そうな顔の雪。
天蓋の前で、立っていたのが
狐の妖、雪の従者、夜一が
咳払いをしていた。
「あんまり、花嫁を虐めると嫌われますよ?」
雪が、妖力で煙管を出すと
口に加えた雪がチラッと夜一を見あげた。
小さくため息をついて、ベッドの傍に行き
煙管に火種を付けた。
「で、あの鬼は?」
「はい、厳重に抗議をし
我が花嫁に、怪我を負わせた賠償金と
一切の花嫁の接触を、禁じる書面を。」
「それだけか?」
カンっと火種を、灰捨てに落とす
雪が夜一の生ぬるい報告を聞いて
声色が、変わった。
「今の現代では、出来るのはこれしかなく」
「次、一花に手出したら殺す。それだけだ」
夜一が部屋を後にし扉を閉めると小さく呟いた。
「梅様の生まれ変わりの花嫁様が、一花様」
.☆.。.:.+*:゜+。 .゜・*..☆.。.:*.☆.
一方その頃、勢いのまま部屋から飛び出し
廊下を、全速力で走ったせいか帰り道も
雪の部屋すら分からず、廊下で座り込んでいた。
(何で、この屋敷こんなに、無駄に広いのよ!)
周りを見ても他の狐の妖すら通らない
静かすぎる屋敷に、一花は諦めて
廊下の隅っこで膝を抱えて座っていた。
「ねえ、迷子?」
顔を上げると、どっから出てきたのかと
当たりをキョロキョロと確認するが
目の前に急に現れた、黒い羽がバサッと閉じる。
髪の色は濃い紫で、目の瞳がモスグリーン色で
背が小さい男の子の妖かなと、一花が見ていた。
一花は、喉を指すと声が出ないことに
妖が気付いてくれた。
身振り手振りで、雪の部屋を案内して欲しいと
伝えると妖が、一花の手を掴んで空を飛び
部屋まで送ってくれる優しい妖だなと思っていた。
「着いたよー。あそこに雪が居るよー」
パクパクとありがとうって伝えると
妖は手を振って、何処かに消えてしまった。
カラスの妖って居たっけ?首を傾げながら
部屋に戻ると雪が、天蓋のベッドから降りて
パタパタと、一花の腰に抱きついてきた。
「お帰り。迷わなかった?」
「小さな妖が、案内してくれたんだ。」
(あれ?声が治ってる!)
「ふぅーん」
一花の肩を見ると、黒い小さな羽が付いていて
それを摘むと、雪が青い狐火で燃やした。
パラパラと燃えた羽の灰が床に落ると
いきなり、一花を抱き抱えたまま
ベッドまで運び一花を押し倒すと
雪が、長い髪をかきあげた。
「一花、他の妖が君に触れたら
妖の俺がどうなるか…………教えてあげる」
部屋の雰囲気が、急に変わり空気も
雪の声色もひんやりと、冷たく感じ
一花は、何が起きたのか分からず
雪の顔を見ると、べっこう飴のような金色の眼が
赤く染まって、一花を見下ろしていた。
雪の顔が近付いてきて、キスされると
一花は、思わず目をつぶり、首を逸らした。
鴉天狗の妖力が首についてることが許せなくなり
一花の首をペロッと、舌を這わせた。
「ねえ、ちょっ!何してんの!やめて!」
声にならない声が、一花から漏れたが
抵抗すればするほど、嫉妬の炎に火がついた
雪が、妖力を使い手を一花の喉元に当てると
声を封じたのだった。
「お前は、俺の花嫁だ
髪の1本すら他の妖になんか、渡さない」
首についた不快な匂いが消えるまで
繰り返し一花の首にキスをし熱を刻み込んだ。
「ッ……」
ボロボロと泣いてる一花を見て
我に返った、雪がしまったと慌てて離れるが
時すでに遅く、起き上がった一花が
涙を流しながら雪を睨むと
パーンっと必殺技の平手打ちが
見事、雪の白い頬を赤く染めた。
「ごめん……」
手を伸ばす雪の手を振り払い
一花は、部屋の扉をバンッと開けると
どこかに行ってしまい、雪はベッドに崩れ落ちた。
天井を見上げながら、煙管に火種を付けたが
美味しくなく吸うのをやめた。
「一花様、どちらへ?」
声が出せないから、女中さんに書くものをと
身振り手振りで伝えると慌てて
紙とペンを持ってきてくれた。
「お帰りになられるのでしたら、夜一様を
お呼びしますので、こちらの部屋でお待ちください」
部屋に案内をした女中が
慌てて従者の方を、呼びに走っていった。
待ってる間に、一言何か書いてやろうと
紙に何か書いてると、
ノックする音が聞こえると、部屋に入ってきた
従者の方が、一花に深々と頭を下げていた。
「先程は、主に変わり申し訳ありませんでした」
謝罪をする、従者の夜一さんと名乗り
物腰が低く、落ち着いた雰囲気で
メガネをかけていて、狐の妖には見えなかった。
「一花様、今から、お帰りになられますか?」
激しく頷く一花だったが
夜一が何かに気付き女中に
手鏡を持ってこさせると
夜一さんが、首元を指さして
鏡で首元を見てみると
一花は、びっくりして手鏡を
絨毯に落としてしまった。
「やりすぎだと、私が、主を叱りますので
このお屋敷でもう少し、過ごされてはどうでしょうか?
勿論お部屋は、別でご用意致しますので」
流石にこれで帰ったりしたら
お母さん、玉の輿とかお祭り騒ぎしそうだし
学園に行けば、なんて噂されるかわかんない。
一花は、紙に分かりましたと書いて
夜一さんに、雪にこの手紙を渡して欲しいと
紙に書くと、夜一さんがスッと
立ち上がり、深々と頭を下げて謝ってくれた。
(何なのこれ!どんだけ妖って、嫉妬深いのよ!)
雪の寝室に夜一が行くと
しゅんとして耳と尻尾が垂れ下がり
ベッドで、横たわる主人の姿に
夜一が小さく肩を落とすと
一花から渡された手紙を雪に渡した。
雪が手紙を読むとベッドから転げ落ちていた。
「よ、よ、おい、夜一!」
「夜一は、いますよ」
「こ、これは何だ?」
震える手で手紙を夜一に渡し
受け取り読むと、でかでかと文字が書かれていた。
"最低!変態狐!大っ嫌い!!!"
「だから、やりすぎたら嫌われるって
私は、念を押したはずですよ」
「俺は、もう生きている意味が無い…………」
扇を出すと、妖力で空間を切り
霧の森に消えた雪に、夜一はこればっかりは
嫉妬と暴走しすぎた、主が悪いと暫くは
頭を冷やす時間が必要かなと
夜一は、山積みの仕事をしに戻っていった。
少しでもこのお話が、皆様の目に止まればと
アマチュア執筆を、日々頑張っております。
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