【閑話休題】スピナの妄想【夢の中では頭が働かない】
朝、目が覚めると、リリが笑っていた。
工房の隅、朝の蒸気がまだ立ち込める作業台の影。
静かに佇むその少女は、タンクトップとミニスカート姿のまま、
ただぽつんと、柔らかく口元を緩めていた。
あまりに自然で、あまりに穏やかで――
スピナは、自分がまだ夢を見ているのだと思った。
「お、おい……リリ……? なんかいいことでもあったのか?」
寝起きの声でそう尋ねると、リリは一瞬こちらを見て、小さく首をかしげた。
そして、ほんの少し頬を緩めたまま、こう答える。
「みんなに……初めて会ったときのこと、思い出してました」
瞬間、スピナは盛大にむせた。
「おまっ……それ、そんな顔で言うなって……! 死ぬぞ!? 俺が!」
悶絶するスピナを見て、リリは不思議そうに瞬きをした。
「えっと……何か、まずかったですか?」
「ちがっ……そうじゃないけどっ……!!」
スピナの魂が蒸気に溶けて昇天しかけたその朝――
誰よりも静かに、誰よりも穏やかに、リリの「人間らしさ」が芽吹いていた。
スピナは見た。
――白シャツの前を開いてタンクトップそしてミニスカート
片膝を立てて座るリリ。
蒸気でもないのにこちらの体温が急上昇する。
さっきのタンクトップより露出してないのに。
目線のやり場に困ったスピナは、真顔で水道の蛇口をひねった。
(……これは、だめだ。人として、というか男として、いろいろと終わる)
(デジャブな感覚があるんだが、前もなかったかこれ)
リリは無垢な顔で、ただ座っているだけ。
にもかかわらず、露わになった太ももが強烈に視界を支配してくる。
しかも手にはナイフ。何故か似合っているのがまた恐ろしい。
「何を見ていますか?」
リリの声。まっすぐな瞳。問いかけは純粋。スピナはあたふたした。
「いやっ!なんでもない!見てない!断じて見てない!あとごめんなさい!」
「? 反応が奇妙です」
「いやもうその“奇妙”で刺してくれ、頼むから」
リリは不思議そうに小首を傾げたまま、ナイフの刃先をじっと見つめていた。
その仕草も、なぜか妙に様になる。
(……これが天然ってやつか。最強じゃねぇか。てかなんでナイフ持ってんの)
スピナは静かに、心の中の鐘を鳴らした。
――これは、戦争だ。全くもって、平和ではいられない戦いが始まったのだと。
スピナの価値観がアップデートされそうだった。
AIの使い方に慣れてきたか。挿絵が自分好みに近づいてる気がします。
透明水彩だったりアニメ塗りだったりありますが、透明水彩の方が想像の余白が多いので
多用しています。好みを感想などで頂ければ、試してみますのでぜひお願いします。
それではまた明日