骨組みと雨
蒸気が立ちこめる倉庫の梁から、ナツメは音もなく降り立った。前を歩く人影に気が付かれることなく。
双剣で挟み込むようにその首を落とす。続けて二つ。突入のきっかけは作った。ナツメは外に合図を送る。
即座に突入して来るのは、レイグの私兵。慣れた手つきで倉庫内の残党を制圧していく。
その様子を見ることもなく。ナツメは現場をさる。何度も似た首を落とす作業。
せめてそれの半分でも見たくないの想いと、表と裏を分けるスイッチとしてナツメは眼帯をつけている。
私は人間ではない。いっそリグオンのように感情を持たなければ、もっと楽に切り捨てられたかもしれない。
だが今日は少し眼帯をした目が熱い。
ナツメが去った現場では作業が続いていた。
首の落とされたリグオンが3体。通常ならスチームギアをつけた兵士が2人がかりで1体を相手する。
それを二振りの剣だけ、ものの数秒で片付けるナツメにレイグの私兵達は畏敬を持つ。
仮にナツメの刃がこちらを向けば太刀打ちできない。
レイグもそれを承知の上で自分たちを現場に向かわせていると考えると身震いする。
だが金庫番ことレイグの金払いは良い。他の仕事では稼げない兵士たちは選べない。
制圧したアジトを後にし、兵士たちも闇に消える。
暴走リグオンを使いリグオン反対と自作自演する組織は後を経たない。
人形に仕事を奪われる。そう考える人も少なくはないのだ。
かつてノアを名乗る一族はリグレインとともに都市を作り。繁栄させた。
だが時代は、一党独裁を許さなかった。
ノア一族は、都市の名前だけを残し、没落した。
その中で一部の人間が、復興を目指している。レイグもその一人であり。
その力は今、レイグ自身の力で取り戻しつつある。
家名を名乗らず。金庫番と呼ばれることに甘んじながら、政府に貢献するように過激派を潰して回る。
ナツメに居場所を与えたのは諜報活動の一環。
リグオン絡みには私兵の数を減らさないために、ナツメを使う。
「もともと隠密用につくられたリグレインです」
かつてオオタが苦言を言ってきたが、レイグは気にせず使い続ける。
戦時中に発見されたリグレインを元にナツメタイプは複数作られた。
その中の1体が今のナツメなだけだ。
ノアの一族はリグレインと共に繁栄した。
だがそのリグレインは党が変わろうと君臨している。
ノアの一族は利用されたのか?
ならばこちらも利用すればいい。
機械人形はどうせ道具だ。
だが道具は壊れることがあることも知っている。
だから、次が欲しい。壊してから作り直してもいい。
ナツメのように複数体作れるなら尚いい。
材料探しが難航しそうだが、金はある。
鍵を使うのはまだ先でいい。切り札は切りどきが重要だ。
金庫番の鍵がくるくる回る。
鍵の意味もレイグの思惑も誰も知らない。
空を見上げるナツメ。現実から目をそらした方が泣いている。不可解な現象。
私は壊れてきているのかもしれない。でも、もう少し花屋の時間を楽しみたい。
楽しみたいと思った自分に気がついた時、ナツメは両目から泣いていた。
眼帯だけでは涙を隠すことはできなかった。
ナツメ眼帯を外し、静かに花屋へ戻る。
お付き合いありがとうございました。
毎日ちまちま書いております。
「ちょっと気になる」でも「リリが可愛い」でも「ナツメがせつない」でも、何か心に引っかかったら、評価ポチッといただけると励みになります。
ちなみに評価が増えると、なろうのランキングに載りやすくなって、新しい読者さんの目に止まるようになります。じわっと効くやつです。
それではAIとプロレスしながら挿絵仕上げてきます。また明日。