富豪とバイクとスピナの妄想
朝霧に包まれたノアの高台に、静かに陽が昇りはじめた。
白く霞む街並み。その遠くを見下ろすように、古い石造りの洋館が建っている。 屋根の上には小さな蒸気塔。細い白煙が空へと溶けていく。
アスマ・オルテオスは、その館のテラスに立っていた。
黒のジャケットに、手には銀のパイプ。
まだ若々しさを感じさせる、だが老成した雰囲気も漂う男。
40代前半、かつて父の背中を追い、そして追い越した者。
――父は、戦時中に無線を独占し、戦後には巨大な街頭ラジオを設置して娯楽を広めた。
アスマ自身は、それを小型化し、各家庭にラジオを行き渡らせた。
蒸気の街ノアで、「誰でもラジオが聴ける世界」を作った男。 そして今、巨万の富を築きながらも、権力を誇示することには興味を失っていた。
朝の静けさの中、庭で小さな作業が進んでいる。
金色に輝く――いや、やや煤けた金色の蒸気バイク。 若き日のアスマが、勢いだけで造らせた成金趣味の遺物。
リグオンたちが、それを慎重に運び出している。 ひときわ華奢な少女型のリグオンたち。
笑顔を張り付けたような表情で、静かに作業をこなす。
(ああ──同じ"人形"でも、リグレインは、違う)
アスマは、灰色の瞳でそれを見つめた。
昨夜、古い友人オオタから連絡があった。 「面白いものが見つかったぞ」と。
かつて蒸気文明が生み出した奇跡──リグレイン。
それを見るためなら、バイクくらい貸してやってもいい。 戻ってこなかったとしても、惜しくはない。
アスマは、軽くパイプを吹かしながら、金色のバイクに視線を向けた。
「いいさ。持って行け」
小さく呟いた声は、朝霧の中に溶けていった。
アスマは館の門に向かって歩き出した。 静かに、しかし確かな足取りで。
朝のノアは、今日も蒸気に煙っている。
【以下スピナ妄想 本編とは関わりません】
スピナは椅子に深く腰掛けて、天井を仰いでいた。
(……憂鬱だ。オオタと会う前ってだけで空気が重い)
ふと、意識がふわりと宙に浮く。
そして、気づけば彼はまったく別の時代、まったく別の制服を着た世界にいた。
制服を着たリリと屋上へ続く階段で待ち合わせ
クラスの優等生リリと不良みたいな俺が付き合ってるなんて
誰も思いはしないだろうな」
メガネをかけてるリリが俺に会う時だけ外す
──そう、ギャップ萌えってやつだ!
しかも階段の下にいる俺には見える!ビバ太もも!
そして……あれ、見え──
見えそうで見えないのところで現実に引き戻され、
フェルに「……何それ」と冷たく言われる。
フェル「リリに言ったらぶっ飛ばされると思う」
スピナ「内緒でお願いします。イブキにも」
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
スピナの妄想は本編とは関わりありません。AI画像で遊んでるスピナのせいで
作者の趣味だとかではありません。ビバ太もも!
やめろ不快だ!もっとやれ!どっちのコメントでもよろしくお願いします。
増えたり減ったりします。
本作は毎日17時更新を目標に、少しずつ蒸気の街ノアの物語を広げていきます。
挿絵も多めに入れていく予定ですので、ビジュアルでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
もし「続きが気になるな」と思っていただけたら、ブックマークや応援してもらえると励みになります!
ではまた、明日の17時にお会いしましょう。
――作者より