スチームと太ももの駆動
太ももバイオレンス――これは、二人の“限界”が交差する物語。
太ももに、涙をこぼす物語。
スチームと歯車の都市ノアを舞台に、
少女たちの「人間らしさ」と「壊れること」を描きます。
挿絵はAIで制作していますが、物語と同じく、人間の手で調整・選定しています。
どうぞ、“スチームパンクと太ももの世界”へ。ようこそ。
「壊れかけって言うけど、それもう壊れてるわよね。そう思わない? リリ」
ナツメの冷たい声が夜の街に響いた。
赤い目。蒸気の音。
少女の身体は限界を超え、太ももから白い霧が噴き出していた。
蒸気が歯車と社会を回す、蒸気都市ノア。
その片隅での機械仕掛けの少女たちの物語である
リリと呼ばれた少女は、太ももをむき出しのレザースーツに、白いコート。
研がれていない青い刀身のバスターソードと蒸気を背負った少女、静かに剣を構える。
髪は金色のボブ。ゆるくパーマがかった毛先が雨に濡れて垂れた。
頬を伝うのは、水か、涙か。否――霧雨だ。
肌は透き通るように白く、表情は機械のように無機質。
だがその蒼い瞳の奥には、強い意思が渦巻いていた。
蒸気がより濃くなる。
目の前には赤い瞳が怪しく光る
「……壊れてるよね、それ。『壊れかけ』なんて甘い言い方じゃ済まない。ねぇリリ!」
再び赤い瞳が、リリを呼ぶ。
「ナツメ」
リリは呟くように名を呼ぶ。
ナツメと呼ばれた少女、その片目は眼帯で隠され、
残る赤い瞳が、蒸気の中にぼうっと光を灯していた。
ナツメは手に構えた双剣、身を低く構えその時を待つ。
赤い瞳だけが激しく燃えていた。
視界が蒸気で曇る。二人の背から白い蒸気が立ち昇り、
ナツメの白い太ももからも、過負荷排熱の霧が静かに噴き出す。
限界を超えたとき、彼女の身体は“蒸気で叫ぶ”。
その瞬間、胸の奥で、蒸気がうねるように脈打った。
鋼鉄製のワイヤーと鉄の骨組み、そして無数の歯車が彼女らを動かす
ただの機械人形ではない。蒸気機関を内蔵し、
自らの意志で動く上位個体。――リグレイン。
それが、彼女たちの名である。
質量と力で叩き潰すバスターソードの剛腕。金髪の下で、リリの青い瞳は、静かな炎を宿していた。
背中から蒸気が立ち上り、リリの白い肌の太ももからも、音もなく排熱が行われる。機械としての設計。動き続けるための排気孔。それは呼吸の代わり、熱と力の代償。限界を示す、機械たちの吐息だった。
「ナツメ!」叫びと共に、リリは石畳を蹴る。
バスターソードと少女、直線一撃必殺の突進。
刃は研がれていない。だが、速さと質量はそれを補っていた。
並の者なら、この一閃で沈む。
ナツメは、速度と精密さで切り裂く双剣の連撃。機械仕掛けの脚を駆動させ、
霧雨を断ち、バスターソードの刃をすり抜けて迷いなく斬り込む。
その片目は眼帯で隠され、残る赤い瞳が光を放ち、夜の闇に赤い軌跡を残す。
見ているものには赤い光しか見えていないかもしれない。
それほどまでに早く静かにナツメは駆動する。
「浅いか」双剣に残る感触に手応えはない。
交差する二人は再び向かい合う
冷たい紅。揺るがぬ蒼。
相反するようで、同じものを抱えていた。
――この物語を始めるリグレインである。
スチームパンク都市ノアの片隅。“二つの限界”が交差していた――。
“蒸気を太もも”にまとい、限界を超えて戦う機械少女たちの夜。
では、この夜の数日前の話から始めよう。
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