第4話「女騎士、勇者にひざまずく」
朝起きたら「沐浴を」と言われ、昼には女騎士が土下座してました。
俺の旅、どこで選択肢ミスったんだろう?
【○月△日】天気:晴れ(気温高め。汗だく)
昨日、毒舌黒猫ニアに「インチキ野郎」と言われたショックを引きずりつつ、
ギルドの豪華な個室で目覚めた。
羽毛布団。朝食ルームサービス。起きたらすでに水が温めてあって、「勇者様、沐浴を」とか言われた。いや、俺ただの旅芸人なんだってば。
で──
今日はさらに、とんでもないことが起きた。
午後、ギルドの談話室にいたら、突然、鎧姿の女騎士が床にひざまずいたのだ。
「勇者アルル様……。どうか私を、お供に加えてください!」
いや、誰!?
なんで俺、いきなりRPGのイベント発生してんの!?
その女騎士はエミリア・ファルグレアと名乗った。
大剣を背負った金髪の美女で、ど真面目そうな雰囲気。鎧がキラッキラしてる。光反射して目が痛い。
「わたくしは、幼き日に勇者アルト様に命を救われた者……」
「その恩を、彼と瓜二つのあなた様に、今こそ返す時が参りました!」
なんという……理不尽な恩返しロジック。
「いや、俺アルトじゃないんだけど……」
「構いません!たとえ違っていたとしても、わたくしは信じます!」
「勇者様は、嘘などおっしゃらないと!」
あー、だめだこの人、“信仰”の段階まで行ってる。
「なあ、アルル。こいつ、わりとマジでヤバいぞ」
と、肩に乗ったニアがボソリ。
いや、それ俺も思ってる。
「剣の腕には自信があります!忠誠を誓いましょう、勇者様ッ!」
言って、彼女は抜いた大剣を床に突き立てた。
周囲の冒険者たちが、なぜか拍手してる。なんで!?俺、何もしてないよ!?
でも──
エミリアのまっすぐな目。
あれ、ちょっとだけズルい。あの目で「あなたを信じてます」って言われたら、なんとなく「否定するのが野暮」な気がしてくる。
……まぁ、旅は賑やかな方がいいし。
ボケとツッコミの人員が揃ってきた感じだし。
うん、こうなったら──
「分かったよ。一緒に行こうぜ。……ただし、“勇者様”って呼ぶのは禁止な」
「かしこまりました、“偉大なる救世主様”!」
「なんで別の呼び方に変わってんだよ!!」
今日から、俺の旅に女騎士がついてくることになった。
しかも重装備でガチャガチャうるさい。
先が思いやられる……けど、悪くないかも。
仲間が増えました。ツッコミの手が足りません。
呼び名のバリエーションだけ無限に増えてくの何で?