表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/40

第3話「ギルドで大混乱」

ギルドに寄ったら、勇者になってました。俺、旅芸人です。

【○月×日】天気:晴れ。気分は曇り。


 今日、ギルドに寄った。

 理由は単純。昨日の“森のナイフ事件”で「臨時冒険者認定証」なんてものを渡されたからだ。

 紙っぺらかと思いきや、ちゃんとした革製カードに銀の装飾。名前がしっかり印字されている。


《アルル・リオン ランク:B》


 いや、待て。

 俺、ギルド入った覚えないぞ!?

 誰の許可でランクBになってんの!?てか初期ってEとかじゃないの!?


 これはさすがに誤解を解かねばと、正規のギルド窓口に行った。

 町の中心部にある“冒険者ギルド・ロルダ支部”。


 扉を開けた瞬間、空気が凍った。


 いや、誇張じゃなくて本当に静かになった。

 中にいた十数人の冒険者たちが、一斉にこちらを見る。

 受付嬢のペンが止まる。酒を飲んでいたおっさんが口を開けたままフリーズ。


「……勇者、様……?」


 またそれかよ!!


「ち、違います!俺は旅芸人で、昨日ちょっとナイフ投げただけで──」


「ナイフ一閃で魔物を討伐、しかも一点貫通の精密射撃……間違いありません、あの伝説の“光の神撃”だ!」

「黒髪、黒目、若干憂いのある目元……伝説のアルト様と酷似……!」

「まさか、現代に再臨された!?」


 なにこの謎の考察ラッシュ!?

 ネット掲示板かよ!


 受付のお姉さんに至っては、なぜか涙ぐみながら俺の手を握ってきた。


「ご、ご無事で何よりです……。十年前、あなたが姿を消されたと聞いて、ずっと……!」


 いや違う、俺そんな壮大な話の主じゃないの!


「俺はアルル・リオン、旅芸人です!」

「それに、勇者様って“アルト・ライオンハート”じゃ──」

「“アルト様”の甥御さんとか?」

「“ライオン”と“リオン”って……そっくりすぎんか?」

「まさか、隠し子……!?」


 だから何でそこでワイドショーみたいになるんだよ!!


 結局、俺は無理やりギルドカードを正式に登録され、「ランクBからのスタートを許可された逸材」とか勝手に持ち上げられ、

 挙げ句の果てに──


「勇者アルル様、お部屋をご用意いたしました!」


 ……なんで専用個室が用意されてんの!?

 宿屋でもこんな扱いなかったぞ!


 しかもその個室に入った瞬間、「失礼します」と入ってきたのが──


 黒猫。


 いや、猫っていうか……小さめ。ツヤツヤの毛並み。

 そして、喋った。


「……ようやく見つけた。インチキ野郎」


 は?

 何この猫、めっちゃ毒舌。


「その顔、そのナイフの投げ方……どう考えてもインチキ。あんた、本当に勇者か?」


 いやだから違うって言ってんじゃ──

 ……あれ? 今、逆に話が通じる?


「……名前は?」

「アルル」

「へぇ、やっぱインチキだ」


 何その初対面の好感度ゼロ。むしろマイナス。

 てか、なんで猫が喋ってんの?魔法?精霊?幻覚?


「俺はニア。このギルドで《勇者鑑定師》をやってる猫だ。……まあ、自称だけどな」


 ……どんな自己紹介だよ。


 とにかく今日はもう疲れた。

 なんか訳わからんが、喋る毒舌猫に「追跡マーク」なる魔法を付けられて、

「少しの間、監視させてもらう」ってついて来るらしい。


 また、面倒くさいのが増えた。

 いや、ちょっとだけ面白くなってきたかも?

誤解がまた一つ増えました。あと、猫が増えました。

監視されながらも、俺は自由に生きたい(無理)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ