第13話「王城演武会、ナイフで挑む勇者様」
王城で演武することになりました。ナイフしか持ってませんけど。
でもまさか、ああなるとは……。
【○月▲日】天気:快晴。空がやたら高い気がする。
王城に来て二日目。
今日はいよいよ──
王城演武会 本番。
なんでも「王城祭」の一環らしく、貴族たちの慰労を兼ねた武芸披露イベントらしい。
騎士団、魔法使い、傭兵、果ては召喚師まで並ぶ中、
俺の出番はトリ。
トリて。
もうね、笑うしかない。マジでオチ担当になってんじゃん俺。
舞台裏では、エミリアが祈るようにして見守ってくれている。
「勇者様の真の力を、王と民に示す時です!」
いや、真の力=ジャグリング技術なんだけど。
ニアは肩で寝てる。こいつだけいつもマイペース。
呼び出しがかかる。
「続きまして──“風神の勇者”アルル・リオン様の演武!」
……うん、よし。
ステージは、広場に設けられた円形闘技場。
王や貴族、民衆がずらりと見下ろす中、俺は立つ。
手に持つのは、いつもの銀のナイフ(芸用)。
心臓バクバク。でも、舞台に立てば不思議とスイッチが入る。
「では、“風の導き”とやらを──拝見しようか」
と王様。重い。圧が重い。
そして始まった。
俺は、ただの旅芸人として、ナイフを投げた。
まずは3本。
クルクルと宙を舞い、的に「カン、カン、カン」とリズムよく刺さる。
「おぉ……」とどよめき。よし、反応は悪くない。
次、ジャンプ回転投げ。
ナイフが月光を反射しながら、特効魔法(風エフェクト)で流星のように飛ぶ。
「おおおおおお!!!」
誰だよ、勝手に魔法重ねたやつ!!!
でも、観客は完全に風神の技”再来”モード。目が光ってる。
そしてトドメの一投──
ナイフを投げた先に、
突然飛び出してきた“野良スライム”がいた。
ピタッ。
ナイフがそのスライムにクリティカルヒット。
スライム爆発。ジュバッッ!!
……うそでしょ?
「一投で……魔物を……消滅……?」
「なんて精密な……」
「まさに神撃……!」
「これが……これが“本物の風神勇者”の一撃……!!」
違う、あれ偶然スライム出てきただけ!!!
でもその瞬間、会場は爆発的な歓声に包まれた。
「万歳!アルル様万歳!!」
「風神勇者、ここに降臨なり!!」
「伝説再演、王都にて完全再現!!」
……やっちゃったな。
演武会は大成功。
王様は「よくぞ力を隠し通していた。そなたの謙遜こそが真の強者」と、
なぜか最高勲章“白銀翼章”を授与してきた。
完全に後戻りできなくなってきた気がする。
でも……
拍手が、悪くなかったんだよな。
あれは芸人として、ちょっと嬉しかったんだよな。
たった一投で、勲章と未来と誤解が増えました。
でも──あの拍手、ちょっとだけ本物だった気がする。




