第09話 夜見 結華-よるみ ゆいか- ②
夜見 結華は、常に誰かに見られているかのように、後ろを振り返ったり、左右を見回したりしていた。
落ち着かない様子。
何かを探しているような動き。
──見えもしないのに、ご愁傷さま。
確かに、私はここにいるけれど。
もしかしたら、私の存在を感じているのかもね。
ふふ、それならそれで面白いわ。
次に呪われるのは、夜見だね。
くすっと私は笑う。
私がここにいる時点で、もう呪われているようなものかもね。
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夜見の疑心暗鬼は、日に日に強くなっていった。
教室で、彼女は あの席 をじっと見つめ、恐怖に怯える。
気づけば、挙動不審になり、神経をすり減らし、どんどん精神が追い詰められていく。
そんなある日。
「ちょっと、結華? 大丈夫?」
玲奈が、心配そうに話しかけた。
しかし、夜見は 小さな声で呟くように言う。
「静かにして。……今、見られてるから。あの座席から。」
玲奈は、眉をひそめた。
「またそれ? いい加減にしてよ!」
バンッ
玲奈は机を叩いた。
「毎日毎日、心霊だとか、呪いだとか……そんなの聞かされるこっちの身にもなってよ!」
「違うの! 本当なの!」
夜見は、必死だった。
「信じて! 絶対に、私は透花に呪われてる。」
玲奈は、呆れたように息を吐く。
「そう思うから、そうなっちゃうんだよ。」
「呪いの座席なんて噂、先輩たちは誰も知らなかったよ? だから、ただの噂なの。」
「やめて! そんなふうに言ってたら、透花の怒りを買って、呪いが強くなっちゃう……」
夜見は、突然、両手を合わせて震えながら言った。
「……ごめんなさい、ごめんなさい……透花……」
玲奈は 夜見の様子を見て、諦めたように目を伏せた。
──もう、何を言っても無駄なのかもしれない。
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そして、夜見は、ついに学校に来られなくなった。
因果応報よね。
座席に座る人の気持ちも考えず、
「呪いの座席」なんて 勝手な噂を流した罰。
そこに座っていた人の気持ちを、想像すらしなかったくせに。
幽霊を見る前に、現実を見るべきだったわね。
──本当に、情けない女。
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