表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/25

第10話 夢咲 詩乃-ゆめさき しの- ②

私は詩乃を見つめながら、微笑んだ。


──ああ、ずいぶん落ちぶれたわね。


彼女は今、無機質な取調室の椅子に座っている。

手錠こそされていないが、目の前には警察官、そして付き添いの大人たち。

緊張した様子で、机の端を掴み、硬い表情を浮かべている。


――もう何度目だろうね?


最初はたかが文房具だった。

誰も気づかないほどの、小さな盗み。


でも、それは徐々にエスカレートしていった。


バッグ、財布、ゲーム機、アクセサリー。 そして、ついにブランド物の時計。


でも、詩乃は止めることはなかった。


むしろ、自分がやったことを、「透花のせいだ」 と言い訳するようになった。


「だって、霧野のせいでこうなったんだよ。

最初にあの子がやれって命令してきたんだ。」


「それから、私は万引きをやめられなくなった。」


「その後、霧野が自殺した後も、霧野が頭の中で言うの。もっと、良いものを盗めって。」


都合のいい言葉よね。

まるで、自分には何の責任もないみたいじゃない?



私は彼女の目の前に立ち、ゆっくりと顔を覗き込んだ。


「これは、あなたが望んだ未来なのかしら?」

「『霧野が死んだから、私はこうなった』って。」


そして、少年院送りが決まり、

詩乃は 最後に、こう言った。


「私の人生を壊したのは、霧野透花。霧野透花のせい。」


その言葉を聞いて、私はもう一度、笑った。


「ふふ……そう、詩乃。」


「ずっと、そう思っていればいいのよ。」


「それが、あなたを もっと苛む のだから。」


──少年院の鉄の扉が閉まる。


私は、それを見届けながら、そっと、呟いた。



「ねえ、詩乃。ここを出たとき、何を思うのかしら?」


「また、『透花のせいでこうなった』って言い続けるのかな。」


ふふ、どっちでもいい。


どうせ、私には何も関係のないことなんだから。


反応いただけるとありがたいです。

気に入ったら、「しずくのいちご牛乳」もよろしくね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ