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第23話 不和

 さてその晩、僕はフィーの屋敷を訪れていた。

 カイルと二人で……


「……………………」


 フィーの部屋へ向かう途中、カイルはむすっとしたままで口を利いてくれない。

 この前のエーファへの態度もおかしかったし、本当にどうしてしまったんだろう。

 まあそれでも、フィーの前に顔を出してくれるようになったことはいいことか。


「フィー、寂しがってたよ。しっかりと話をしてあげてほしい」


 物理的な危険からフィーを守ることは僕にもできる。

 だけど、彼女の心に安らぎを与えられるのはカイルだけなのだ。


「でも、一発ビンタされるぐらいは覚悟して――」


 そう軽口を言いかけた瞬間、カイルは僕の首元に剣を突きつけた。


「カ、カイル……ただの冗談じゃないか?」


 そこまで怒らせるようなことかと抗議しようとしたが、その瞬間、カイルはゆっくりと口を開いた。


「お前はここまでだ。フィーには俺一人で会いにいく」

「そ、そうか。婚約者だもんな。二人で会いたいか? でも、これは流石にないんじゃないか?」


 僕は剣を指差して抗議する。


「おどけるのは大概にしろ。とにかく、お前をフィーに会わせるわけにはいかない」

「ハハ……流石に意味がわからないよ」


 確かに最近、カイルとは微妙な関係だが、そこまで言われるいわれはない。

 僕が彼にしたことと言えば、せいぜい剣で打ち負かしてしまったことぐらいじゃないか。


「レオン……? それに、この声は……」


 部屋からフィーの声がする。

 すると、カイルは小さく舌打ちをすると、剣をしまった。


「お前が先に行け。だが、妙な真似はするなよ」


 脅しつけられる形で、僕は先行する。

 本当に意味がわからない。

 それから、僕らはフィーと会い、たわいない話を繰り返す。


「でも、こうして三人で会えるなんて久々だな。なんだか嬉しい」


 ベッドに座るフィーがはにかんでみせた。


「最近は一人で修行してたからな。二人には心配かけて、申し訳ないと思ってる」


 フィーの前のカイルは、かつての好青年と変わらなかった。

 まるで、先ほどまでのカイルが、偽物のように感じるほどだ。


「フィー、今日は君に大事な話があって来たんだ」

「大事な話……?」


 フィーが首を傾げてきょとんとする。

 一体、なんだろうか?


「君がドミニクに襲われたって聞いて、俺は胸が張り裂けそうになった。どうして、守ってあげられなかったんだろうって」

「うん……」

「だから思ったんだ。もう逃げるわけにはいかないって」


 なんとなく、カイルの言葉が見えてきた。


「フィー、もう僕らも成人を迎えた。だから、結婚しよう。これからは、僕が側で君を守る」


 なんだって……?

 なんとなく予想はしていたが、それでも僕はその展開に驚く。


「本当なの? 本気で言ってるの?」


 フィーも驚いているようだ。

 原作ではこんな展開はなかった。

 カイルのヒロインはフィー以外にも居て、その中から一人を選ぶか、あるいは複数の相手を攻略してハーレムを築くかできるが、今はまだ本編開始前で、この時点でカイルとフィーが結ばれる要素はないのだ。


「ちょうどレオンが見届け人になってくれる。だから、フィー……」

「ちょ、ちょっと待って! その……まだ、頭が混乱して……」


 フィーはなんだか困惑している。

 今まで避けられていたと思ったら、突然のプロポーズだ。

 彼女もすぐには決められないのだろう。


「ごめん。急だったよね。だけど、想いは伝えたくて。これから先、どんな危険が迫っても君は僕が守る。君は誰よりも優しくて、綺麗な心の持ち主だ。だから、それを汚す者は誰であろうと許さない」


 ぞくりと背筋に怖気が奔った。

 一瞬だが、カイルからさっきのようなものを感じた気がする。


「カイルの気持ちは嬉しい。だけど、考えさせて。いろんなことがあって、ちょっと整理がつかないから」

「ああ。分かってる。いつまでも待つよ」


 その後、カイルは僕の腕を引いて、部屋を出ようとする。


「またこれからも見舞いに来るよ。それじゃ」

「あ、ちょっと待って」


 部屋を出ようとすると、フィーが呼び止めた。


「ねえ、カイル。少し、レオンの話を聞きたいんだ。二人にしてくれる?」

「それは……」


 カイルが言葉に詰まる。しかし……


「実は俺もレオンも稽古で疲れてるんだ。セレナさんのメニューが厳しくなったからさ。だから、後日でもいい?」

「あ、うん……いいけど」


 カイルは強引に僕を連れて行った。

 どうやら、僕とフィーを二人にさせたくないようだ。

 それは、婚約者と別の男を二人にさせたくないとかそういうありふれた感情ではなく、もっと別の意図があるように思えた。


「カイル、いい加減にしてくれ。一体、何を考えているんだ?」


 屋敷を後にして、僕は疑問をぶつけた。


「それは俺のセリフだ。お前は、フィーに何をするつもりだ」

「何をって……フィーは君の婚約者で別に……」


 原作のレオンらしく、彼女に想いを寄せたこともあったが、年月が経って、心の整理もできている。

 今更、どうという話でもない。


「知っているぞ。あのドミニクの妹、奴と何かを企んでるな?」

「企んでるって……それは、フィーのためで」

「俺はお前を信用しない。必ず企みを暴いてやる」


 そう言って、カイルは去っていく。

 なんだ。あの言い草は。

 本当に意味がわからない。

 お読みいただいてありがとうございます!!


 少しでも面白いな!!続きを読んでみたいな!!と思っていただけたら、ブックマークに追加していただいて、下の☆☆☆☆☆を塗りつぶしていただけると励みになります!!


 何卒よろしくお願いいたします!!!!


 また、本作はカクヨムというサイトにも投稿しております。

 最新話はそちらに掲載しておりますので、先の展開が気になる方はぜひご覧ください!

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