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003:レイナ・アーカム子爵家令嬢①


 ――生前の名前は最神もがみ 玲奈れいな

 享年は18か19か、それくらいだったと思う。

 最神家は庶民に毛が生えた程度の中流家庭で、少なくとも田舎のお祖父ちゃんが大地主でお金をたんまり持っていなければもっと生活は苦しかったはずだと当時の私ですら分かっていた。

 お母さんから見れば実家暮らしと結婚後とですんげー落ちぶれたと内心じゃあ嘆息していた筈だ。

 それで私はと言えば、お祖父ちゃんのスネかじり。

 両親の元を離れた次の瞬間には高級マンションの空き部屋に住み着いて悠々自適なニートライフを満喫していた。

 高校は中退している。

 学校一の美少女なんて持て囃された事もあったけれど、これが逆に仇になってガラの悪い不良達に危うく拉致監禁性的暴行の人生終了コンボを食らいそうになって、まあ結局は怪我も無く保護されたんだけど、おかげで精神的に病んじゃって学校に行けない体になったとかいうオチ。

 ニート生活は三年くらい続いたんだっけか。

 この間に一生引き籠もっているための資金を投資で貯めて、ようやく億が目前って頃に死んじゃった。

 死んだ原因は投資じゃないよ?

 ゲームにハマり過ぎて連日朝から朝まで寝ずにプレイしてたのと食生活的に碌なもの食べてなかったってのが祟って。

 まあ、本人としては行きたくない学校にも行かずにゲーム三昧した果ての出来事なので家族は悲しませちゃったかもだけど後悔とかはあんまりない。


 私が死ぬ直前までプレイしていたのは“蒼い竜と紅い月Ⅱ”。

 単なる紙芝居ゲーだった無印から大進化を遂げた今作は魔法とかダンジョン攻略とかのやり込み要素がめちゃくちゃ増えていて、どちらかと言えばRPG版に近いゲーム内容になっていた。


 そりゃあもうハマったわよ。

 昨今じゃあめっきり見かけなくなったオフライン形式ではあったけれど、他人と関わりたくない私にしてみりゃ願ったり叶ったり。

 周回して全魔法オールコンプリートは当たり前、表ボスになる魔王の最終形態であっても戦闘時間60秒以内の縛りプレイで撃破。

 蒼紅マイスターとは私の事よ!


 ……なんてイキり散らかしていた次期が私にもありました。


 生前の記憶を思い出したのは今から二年前。

 蒼紅Ⅱの主人公“レイナ・アーカム”に転生した私は、そりゃあもう喜んだわよ。

 レイナは最終的には全属性オールマイティの超絶魔法使いになるからね。

 ちょっとツンデレのがあるところもひっくるめて私のお気に入りだったから。

 特に名前が同じってのはポイント高いわね。


 けれど周囲を取り巻く状況が明確になるにつれ絶望感に打ち拉がれる事になる。


 蒼紅Ⅱは前作から場所を移してトルメキア王国が舞台となる。

 アルフィリアからだと北に位置する小国なのだけれども、トルメキアの周りにはドルディア帝国、ユマーシャ王国、ピジアン王国と三つの国が隣接している。

 で、トルメキアの領内には不可侵地域があって、ここに魔法の学校があって主人公は通う事になりますと。

 四カ国の王子様が一堂に会する学校内で誰の好感度を上げるかで国家間の情勢が変わってくるみたいな話だった。


 ところが実際には四カ国どころかこちら魔法学校に通うことすらできない私だったりする。


 ……うん、順を追って話しましょう。

 私、レイナ・アーカムはアーカム子爵家に生まれたご令嬢なのだけれども当家は昔から魔法学に精通した魔法使いの家系なワケなのね。

 それで二年前、一家揃って夜逃げ。

 アルフィリア王国に亡命したのよ。


 なんでそうなったのかと言えば、当時アルフィリア王国を周辺諸国で寄ってたかって侵略しようぜみたいな同盟が締結されて一斉侵攻が始まったのだけれども、この際、ウチのパパ……当主アルカリム・アーカムは戦争に真っ先に賛成したのよ。

 ほら、強大な力って手に入れるとどうしたって使ってみたくなっちゃうじゃない。

 私がパパの立場であったとしても同じように賛成したでしょうよ。


 けれど同盟軍が反撃に遭って壊滅し、おまけに聖導教会の総本山とも言うべきファナゴリア大神殿が街ごと深い地の底へと沈められてしまうなんて話になれば、当然ながら侵攻は取り止めにするしかないでしょ。


 それで一方的に兵士を失っているこちら四カ国が更にアルフィリア王国との和解で莫大な慰謝料を請求されましたともなれば、誰かが責任を取って詰め腹切らされるしかなくなっても、それは自然な流れとしか言い様が無いでしょうよ。


 結果、ウチのパパが責任を取らされる事になりましたと。

 責任を取るといっても記者会見で頭を下げて済むような問題じゃあないから、一族郎党がギロチンに掛けられるといった話になるのも当然よね。


 なのでパパは家族まとめて夜逃げして、アルフィリア王国に亡命。

 国家機密を渡すのと引き換えに保護して貰う事になりましたと。

 そんな話になってしまってるのよ。


 ……ってか、こんなの蒼紅Ⅱには無かったオープニングじゃない。

 何ですかコレ? 超ウルトラハードモード解禁ですか?

 やってらんないわよ、ケッ!


 と、こんな経緯から私は蒼紅(無印)の舞台になっているグランスヴェール魔法学園に通う事になったわけ。


 けれど私が幸運だったのは前世の記憶を思い出したのが二年前って所よね。

 今に至るまでの二年間、私がただ安穏と日々を過ごしていた筈が無い。

 ゲーマーとしての攻略魂の導くままに、真夜中に抜け出しては魔物を狩りまくったわ。


 おかげさまで今の私のステータスはこんな感じよ


****


レイナ・アーカム (15)


 Lv:98

 体力:730/730

 気力:820/820

 魔力:27000(+2000)/25000

 統率:35

 武力:55

 知略:80

 政治:50

 魅力:70


技能:

 魔導の極み ランク2

 全属性魔法適性 ランク5


称号:

 子爵家令嬢

 大魔導士

 魔物の群れを屠る者


****


 ふっふっふ。

 レベル98は伊達じゃあないのよ!


 数値がSLG形式なのは気に入らない――RPGと違ってレベルが上がったからといって上昇しない。色々と条件を満たさないと能力値は上がらない――けれど体力・気力、特に魔力は、これだけあれば充分に通用するわ。何なら魔王だって一撃で葬れるでしょうよ。

 というかこのステータスで最も重要なのは技能スキルとして持っている「魔導の極み」。

 基礎魔力が上乗せされる上に発動させた魔法の効果を最大で10倍まで増幅させるとかいうぶっ壊れスキル。

 しかも奥義クラスの魔法をぶっ放す為の前提条件になっているから、何が何でも手に入れる必要があった。

 延々とパワーレベリングしたのだって、結局の所このスキルを手に入れるためだったのよ。


 まあ、何にしたって魔法学園に新入生として入り込むまでに間に合わせることが出来た。

 あとは私の無双状態、ずっと私のターン!

 魔法学園といえば魔力測定があるわけだし、実技の授業だってある。

 ここで全員の度肝を抜いて「わたし何かやっちゃいました?」ってとぼけた顔でもしてりゃあもう有名人でしょうよ!


 ふははっ、私の勝利よ!


 ……なんて思っていた時期が私にもありました。



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