011:ルナの行脚⑩ 愛が止まらない
半壊したまま補修も最低限で済ませているディザーク侯爵家邸宅。
三人の妹分に加え鷗外などの護衛役を引き連れ神殿から文字通りに飛んで帰って来たルナは、ご神体として祀られ崇められてしまった事で精神的に削られているのかどこか疲弊した面持ちで自室に帰り着くなりベッドに身を投げ出し仮眠を取る。
神殿の周囲を埋め尽くす人々の熱心なお祈りというのは、何というか無数の情念を向けられる側にしてみればひどく疲れる代物なのだ。
ベッドに横たわる身をユサユサと揺さぶられて目を覚ませば、専属メイドのアンナが愛おしい物でも見るような顔で「夕食の支度が整いました」と告げる。
「ありがとうアンナ」
「いえ、これが私の役目ですから」
礼を述べつつベッドから這い出し屋敷一階の食堂へ。
長テーブルには既に見知った顔が並んでいて、おまけにお父様の顔まであった。
「お父様、お帰りなさい」
「ただいまルナ。君が目を覚ましたと聞いて飛んで帰って来たんだよ」
優男といったイケメンフェイスでお父上が笑いかけ、手招きした。
勿論ジル侯爵閣下は空を飛べるワケじゃあないので比喩的な表現でしかない。
何だろうと彼の袂まで進み出れば、優しく優しく、壊れ物を扱うような手つきで頭を撫でられた。
「本当に良かった。私の可愛い娘」
「お父様、その……皆さん見てますしそのへんで」
ほんのり頬を赤らめてしまう恥じらい多き娘さんである。
席に就いているのは母サラエラと義妹シェーラだけでなく、マリアとアリサの顔もあった。
二人は家族ではないけれど、今じゃ家族ぐるみの付き合いがあって、なので一緒に食事を摂ることにも違和感は無い。
好奇の視線から逃れるように自分の席に就くルナお嬢様は、それから淑女然とした立ち居振る舞いで目の前に置かれた皿を啄み始める。
(ああ、そうか。私は、こういった食事がしたかったんだ……)
不意に思い至った少女。
前世では、こんな家族団らんと言えるような食事風景は無かった。
家族は居たけれど、楽しいと心の底から思える食事なんて一度として無かった。
愛されていなかったし愛してもいなかったからだと、今なら分かる。
当時の妻や子供らは、一体何を考えて強さばかりを求め続ける男と共に在ったのか。
終ぞ聞く事も知ることも無かったが、今世に至ってようやく、何となくであっても察する事が出来た。
(私は家族から逃げた卑怯者だったのかも知れない。だから臨終の際には誰一人として見舞いにも来なかった……。ちゃんと向き合っていれば一人寂しく死んでいくことも無かったのにね)
つい自嘲の笑みを浮かべてしまうお姉様を見て妹分たる三人が怪訝そうな顔をしたけれど、彼女らの疑問に答えることはしなかった。
それからお風呂に入って汗を流す。
お母様には帰り着いた早々、教会が差し向けたであろう間者どもをあらかた処理した旨を報告しておいたし、だから後の対応についてはお任せするばかり。
足下を踏み固めた次の問題は、やはり王子様との婚約問題なんだろうなと陰鬱な気持ちになった。
「お姉様! お背中流します!」
一人湯船に浸かりホッと息を吐いていれば女の子達が入ってきた。
普段であればアンナがその役目なのだけれど、どうやら本日は仕事を奪われてしまったらしい。
可愛い妹たちに囲まれて、背中を流して貰う女の園。
極楽である。
「じゃあ今度は私が洗ってあげるわね」
そう言ってルナはマリア、アリサ、そしてシェーラを順々に洗ってあげた。
彼女達はほんの少し触れただけで艶めかしい息を吐きトロンと蕩けた顔になっちゃって、そんな美少女達が可愛くて更に更にと熱を込めて洗ってあげる。
「あっ♡ お姉さま♡ そんなところ……っ♡」
「ひゃん♡」
「凄いぃ♡」
するとどうなったのかと言えば、全員揃って13歳とは思えない扇情的な雰囲気と仄かに上気した肌もそのままに浴室を抜け出すとかいった話になる。
絵面だけ見れば、めっちゃ淫靡な光景に思われた。
「く……私の楽園が……」
下着を身につけ寝間着を被る間際、皆の衣服を準備したであろうアンナが脱衣室の壁際に佇み何かを呟いたかに思われたけれど、ルナとしては苦笑するしかできない。
そして当たり前のような顔でお泊まり会。
ルナの部屋まで枕持参でやって来た妹たちと同じベッドに潜り込む。
会話といっても、ガールズトークと言えるほどキャッキャとはしゃいだ言葉もなく。
けれどお風呂場での一幕から妙な空気が続いていて、そのせいなのか真夜中のある瞬間を境に堰を切ったように妹たちが抱きついてきて。
温いやら柔らかいやら、揉みくちゃにされつつも目を閉じれば瞬く間に深く眠ってしまうルナちゃん。
目が覚めた時、なぜだか他の子達は艶々の満足しきった、なのにどこか気怠そうな面持ちだったけれど理由までは分からなかった。
◆ ◆ ◆
(お姉様、好きぃ♡)
真夜中の事。
私たちは先を争うようにお姉様に抱きつきその肢体を堪能していた。
お姉様の身体は柔らかくて暖かくて、触れているだけで身も心も溶けてしまうかと錯覚しちゃうくらい気持ち良い。
貪欲で強欲な私。アリサ様もシェーラ様も同様で、まるで何かに取り憑かれでもしたかのように夢中で貪る女神様の温もり。
そんな中でスヤァと寝息が聞こえてきてお姉様が寝入ってしまった。
だいぶお疲れだったのかも知れないと労りながら、けれど一方でお姉様が眠っている隙に普段は触れられないような場所さえも余すところなく蹂躙しようと手を伸ばす私たちは、自分で思っていたよりも余程邪なのかも知れない。
そう分かっていても辞められない止まらない。
「はぁ、はぁ、はぁ♡ お姉様♡ おねえさまぁ♡」
アリサ様が荒い息遣いと共にお姉様の胸に頬ずりし始める。
お姉様のおっぱいはこの一年、彼女が眠っている間にも成長していて実はCカップほどの大きさがあることを浴室内で確認していた私。
いや大きさもさることながら、形と大きさのバランスがとにかく美しいのだ。
こんなの世の男共が見れば、もう理性なんて吹き飛んで飛び掛かってしまうこと間違い無しってくらい魅惑の女神ボディである。
「あぁ……お姉さまぁ……私のおねえさまぁ♡」
私はお腹の奥で無尽蔵に膨らんでいく欲望をぶつけるように、お姉様の腋の間に身を滑り込ませアリサ様がやってるように赤ちゃんみたいに胸に縋り付く。
全身がフニャフニャになったように気持ち良くなって、プツリと頭の奥で何かの切れる感覚があって、彼女の身に付けるネグリジェの上から胸を揉みしだこうと手を伸ばしていた。
キィィィィ……ン!
そんな折りに、眠ったまま安らかな寝息を立てているお姉様の身体から光が溢れ出す。
その華奢な身体が盛り上がったかと思えば背中に生え出した純白の翼が顔を覗かせた。
目を白黒させている私たちを、お姉様の翼が丸ごと包み込む。
「ひあぁぁんっ♡」
その瞬間に強烈な幸福感が私の全身に流し込まれ、死んじゃうかと思うほどの激しい波が押し寄せてきて私やアリサ様を飲み込んでしまった。
何度も何度も、光に包まれ身悶え昇り詰める私たち。
五回くらい大波に意識が攫われたところから記憶がなくて、気付けば朝になっていた。
「はぁ……♡ すご……かった……♡」
全身の気怠さもそのままに身を起こせばお姉様の翼は綺麗さっぱり消失していて、部屋は薄暗さに包まれている。
夢でも見たのかと一瞬思ったけれどアリサ様やシェーラ様の四肢が微かに痙攣しているのを感じ取って、寝惚けていたわけでも何でもなく、女神様のご寵愛を賜った結果なのだと察する事が出来た。
「……下着、変えなきゃ」
まだ幾ばくか下腹部に熱を感じつつ、他の方々を起こしてしまわないよう一人こっそりとベッドを抜け出す私である。
今回は詳細に書いちゃうとなろうから追い出されてしまいそうなのでサラッと流しております。ご了承下さい。