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悪役無能女帝に成り代わって今度こそ推しを幸せにします!  作者: 永久保セツナ


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第32話(最終話)夢は終わらない

 目が覚めると、そこは現代の鈴華の部屋だった。

 フローリングのワンルームで、あの女帝の部屋のふかふかのベッドとは大違いの、固いせんべい布団で目を覚ました。


「――はぁ。やっと夢から醒めたのかぁ」


 デジタル時計を見ればまだ朝の六時。日付も、鈴華が最後に寝た日から夜をまたいだだけだ。

 ――あんなに長い、長い夢だったのに。


 そこからは、ゴミを出して、大学に行って、友人と何気ない話をして。

 大学の部室棟にあるサークル室で、あの乙女ゲーをやった。


「あれ? 鈴華、皇子は攻略しなくていいの?」


「まずは女帝と仲良くなって、好感度を上げれば悪政はしないんじゃないかなって」


 そして、結果は思い通り。

 女帝は仲良くなるとすぐに主人公に好意を示し、国の政治は良くなって、四皇子が殺されるルートから脱出した。


「お~。すごいじゃん。攻略サイト、とうとう見たの?」


「見てないよ」


 鈴華は笑いながら首を横に振った。

 寂しいのが友達に伝わったかもしれない。

 やっと攻略できたのに、変な顔をされたから。


 こうして、とうとう推しと――最百華と結ばれた主人公は、結婚エンドを迎えた。

 まごうことなきハッピーエンド。その主人公――魅音の顔を思い出すと、なんとも言えないけど、あれは並行世界の魅音だし。


 友人と、ハッピーエンドを迎えたお祝いに、居酒屋で奢ってもらって、お酒飲んで美味しいもの食べて、家に帰る。

 自宅でも、テレビにゲーム機を繋いで、ストーリーの回想を読み返す。


「やっと、幸せにできたよ、百華」


 鈴華は笑えているはずなのに、ボタボタと目から温かい水が溢れて止まらなかった。


「――逢いたいよ、百華、経朱……!」


 ああ、お酒飲みすぎたかもしれないなあ。

 ゲームのキャラにこんなに感情移入するなんて思わなかった。

 あの変な夢のせいだ。


 ズビズビと鼻をすすって、枕を涙で濡らして寝た。


「――ああ、お目覚めですか、スズカ」


「え?」


 目が覚めると、そこはあの宝菜国だった。

 女帝の私室とは違う。客間のようだ。

 仰向けに寝ている鈴華の顔を、百華が覗き込んでいる。


「そろそろスズカが起きる頃合いかと思ったが、時間通りじゃの」


 声のする方を見ると、ちょうど経朱が部屋に入ってきたところだった。


「ちょっと待って、どういうこと?」


「実は金龍のちからを使うときに、ちと細工をしてな?」


 経朱はいたずらっぽく笑っていた。


「そなたが肉体を手に入れれば元の世界に戻る可能性があると察した賢い妾は、そなたの魂を吹き込んだ俑と元の世界の繋がりをこっそり作ったのじゃ」


「こちらの世界が昼のとき、スズカの世界は夜。ここは貴女の夢の世界と繋がっているのです」


「そんなことできるんだ……」


「他の世界にも干渉できてしまう禁術……妾、恐ろしい子……!」


「はいはい」


 女帝の言葉を適当にいなし、百華は鈴華の前にひざまずいた。


「わたくしがスズカの近衛兵として侍ることになりました。貴女は大切なお客様ですから」


 そして、彼は鈴華の手を取り、甲に口づけする。


「これからも、よろしくお願いいたします。スズカ」


 花がほころぶような笑顔を向けられて、鈴華は失神寸前であった。


 ――彼女は今度こそ、推しを幸せにできたのだ。


〈了〉

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