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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その69 酷暑罪

作者: 天城冴

気象災害が続くニホン国では、首都トンキョーで高温が続いていた。利権のため、木を伐採し続けた都知事オオイケは都知事室に閉じ込められ…

「あ…あつい」

ニホン国首都トンキョー

都庁の知事室で、都知事オオイケ・リリィが机に突っ伏して、うめいていた。

7月の終わり、すでに都心では38度以上の暑さが何日も続いていた。エアコンをつけていても、それでも過ごしにくいというのに

「な、なぜ、ここだけエアコンが効かないの!」

エアコンの機械音が止まって、もう何時間になるか。登庁したばかりの時には確かに涼やかな風が部屋に入っていたのに、いつのまにか熱気がこもっている。ブラインドなどで遮光しているとはいえ、照り返しの日差しが強く、午後になってさらに気温が上がっている。都庁は海からも離れ、河もなく、高層ビルの林立する地区にたっているためか、ビルに光が反射し、しかも風も通らず、ますます暑さが厳しい。その中でエアコンが止まるということは

「し…死にそうよ、しかも」

なぜか内線電話が通じない。扉もあかない。エレベーターも動いていない。

「停電かしら…、でも、内線電話に電気は関係ないはずよ。それに非常用電源があるはず、なにより連絡ができないのに、なんで誰も不思議に思わないのよ…」

普段なら、何本の電話がはいり、秘書や副知事などが出入りするはずなのに、予定の会議時間になっても、だれ一人来ない。すでに午後一時をまわっているのに、昼食をどうするか、などすら訪ねてこないのだ。

「いつもだったら、うるさいくらい誰か来るのに。なんで、来ないの。どうして知事である私のことをほっておくのよ!」

どうやら、誰も知事の異常事態に気が付いていないらしい。

「ああ、やっぱり、なんでダメなのよ!」

スマートフォンで片っ端から電話をかけてみるが、全く通じない。電源がはいっていないようだ。

「充電はちゃんとしたわ。そもそもオフィシャルなスマホだけでなく、プライベートのスマホも通じないってどういうこと?今朝はちゃんとしてたのに!」

ガチャン!

いらだって、スマートフォンを床にたたきつけた。

「あ!」

ハッとして床にヘナヘナと座り込むオオイケ都知事。

「ああ、もう…」

唯一の連絡手段をこわしてしまったことに気が付き、頭を掻きむしった。

「暑い…全部暑いのが悪いのよ」

ブツブツ言いながら、スーツを脱ぎ始める。

「暑い、暑い、」

シャツを脱ぎ、スカートも脱ぎ、ストッキングに手をかける。

「ああ、…みっともない恰好…だけど…」

持ってきたペットボトルの水はすでに空だ。ミニ冷蔵庫に入っていた分も飲みつくした。補給できる水分もないのに、暑さのせいでダラダラと汗が出る。体中の水がでてしまいそうだ。

「あ、頭が…くらくら…する」

すでに熱中症の症状が出ている。それもかなり重症のようだ。

「あ…あつ…なんで、こんな」

“だって木を切ったから。神様のとこの木を切るなんてさあ。罰当たりなうえに、生態圏保全っていうの?せっかく昔の人がうまーく森をつくって、いいところにしてたのに、それ壊しちゃ

「え?…誰」

ぼんやりした頭の中に声が響く。

「いやだ…幻聴?」

“あーあ、こんなんだから、大切なことがわかんないんだよね、都知事のくせに”

“だってしょうがないんじゃん。ホントはそんな力量じゃないでしょ。時の人たちにうまーくとりいって、世論とか言うのに、うまくのっかったから。ま、この国じゃそういう人多いけど”

“だから、トンデモなことしちゃうんだよねえ。マトモな人がちゃーんと忠告してるのに、ヒートアイランド現象とかさ。沈んじゃう土地に町作っちゃったのが、分かったのに、対策もしないんだよねえ。区だけの問題じゃないでしょ、都なんだからさあ”

「木?あ、あれは…地権者が…」

都内の某有名神社の森を切ることに許可を出したことをようやく思い出したオオイケ都知事は朦朧としながら口を開いた。

“こんなときでも、政治屋的言い訳をする小賢しい知恵はまわるんだねえ、無駄だけど”

“そうだよ、もう気温はさげられないし、もう被害出てるもん、もう死んじゃったものは生き返らないんだよ、取り返しがつかないんだよ”

“だから、罰をうけなきゃ”

「ば…罰って、何?」

からからに乾いた喉から、声を絞り出すオオイケ都知事。震えているのは熱中症の症状の一種なのか、それとも恐怖なのか。

“だって都民の声を無視して、木を切ったから、その罰

“だって、あんなイベントのために無駄な施設つくったから。日傘だの、水をまいたりぐらいじゃ、温度さげられなかったよね。マラソンとか結局やれなかったし”

“だって市場を壊して、また変なところに市場を作って余計に温度をあげたから。自分の利権とかのために無駄にまた建物作って、緑減らして温度を上げた”

“だって、だって、だって…全部アンタ自身のせい”

“暑さを酷くした罰、首都を、ニホン国をますますオカシクしている罰なんだよ”

「そ…ん…な、私だけじゃ」

“あ、アンタだけじゃないから、安心して”

“アンタが取り入ってた、あのモンリのお爺さん、あの酷いイベントのせいで、大勢熱中症になったり、結果的に死んだりしたからねえ。特に暑さでさ。運動好きだから、真夏の真昼間に地面の上にいるのがお似合いだよねえ”

“都会を離れても無駄だよ、たとえ島とかに逃げたってさ。そこだけ暑くしてあげる。アワンジ島だっけ、一部だけ熱波がおこしたら、建物の中でも干からびちゃうよね。ほら、ブラック通り越して利権むさぼって、地面をコンクリだらけにした派遣会社の会長さん、ダケナカさんとおトモダチとか”

“エアコンで自分たちだけ涼しいって人はエアコン止めちゃって、閉じ込めちゃえばいい。与党とかの政治家さんとか、ヨツビシとかの財閥のお偉いさんとか、ゴマすりのマスコミの人とか。で、誰とも連絡取れなくしちゃえばいいアンタみたいに。埋め立て地のテレビ局なんてさ、閉じ込められてバンバンやっても誰も気が付かないんだよね、あんな暑いとこ、普通誰もいかないもん、いい気味だよ。デマばっかりながしてさ、それにあんなとこにあんなのがいっぱいあってワタシタチすんごく迷惑なんだよね”

“アンタたちみたいなのが、いなくなればさ、無駄な電力も減るしね。いらない施設建設でこれ以上無駄に切られなくてすむし。空き地に生えられるしね。変な道路も作られないから、安心だよ”

”鳥も他の生き物たちもみんな大喜びだよねえ、私たち△〇◇…も“

暑さと渇きに苦しみながら、オオイケ都知事は、自らの力の及ばぬ何かに対して、命乞いをしようとしたが、すでに声は枯れて、やがて意識を失った。


一日で一か月以上の雨量の雨が降るとか、土砂災害があちこちで続くとか、体温を超える気温が続くとか、気象災害というか地球規模の気候変動が起こりまくっているようですが、それを加速化させるような木の伐採などは控えて方がいいと思うんですけどねえ。ハコモノつくって儲かる時代はとっくの昔におわってるというのは、何年か前の国際イベントで証明されてますが。だいたい例のイベントのハコモノ、維持費がかかりすぎて売ろうとしても売れず、負の遺産になりまくってるらしいです。

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