梅雨の章ーその1一。
皆さんこんにちは……俺が黒い話を記述しそして黒の本棚を取り揃え……そして話を伝える黒乃と申します。
季節がら……梅雨時期ですが………
本日はどんなお客様が来ることやら……あ、いらしたようです。
本日のお客様は……ああ、この方ですね。
そこに座っていたのは一人の二十代の男性だった。
『ここが誰も信じてくれない僕の体験談を聞いてくれるとは本当ですか?』
『ええ……話していただけますか?』
『はい………。』
すると男は語り出したんだ。
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『これは僕の家に昔から伝わる話なのです。』
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僕の家は代々地主をしてきた家系なんです。
そしてこれは僕のおじいちゃんが体験した話なのですが……僕にも関わってきたのでお話にきました。
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僕のひいひいおじいちゃんは大地主でした。
その頃はどこでも裕福ではなく食べる事にも困窮していたようです。
ひいひいおじいちゃんの名は『田栄』と言いました。
『『田栄』様!!今年の米の成長がこの雨で期待できません。』
『田栄』の元を訪ねてきて、そういいながら語ったのは彼に借金をしていた『太助』という男でした。
そう訴えて声をあげた『太助』。
すると『田栄』は言いました。
『ん!?米が取れないだと?』
『はい………今年は雨が多すぎてワシの家の田んぼの稲も危うい状況なのです………それにこれはワシの家だけではございません……………この辺りの農家はどこでもこの問題に悩まされているのです。』
切実にそう訴えてくる『太助』という男。
『ではどうする?あの辺の者たちはお前同様ワシへの借金をしている者たちばかりじゃないか。』
『はい…………ですので今年は少しばかり待っていていただきたいのです。』
『田栄』は表情を変える。
すると彼は考えはじめる。
『田栄』は無類の女好きでも有名だった。
そんな彼は語る。
『『太助』よ…………そういえばお主には年頃の娘がおったな。』
『えっ!?』
『太助』は表情を変える。
『お主の娘をワシの元へ奉公に出せと言っておる。』
『田栄様!?それはあまりにも………………』
『なあ…………太助よ…………これまでお主達を助けてきてやったのは誰なのだ?』
『田栄様です。』
『そうであろう!?ならばそれにこたえんといかんよなあ。』
そう言った『田栄』の表情は鬼そのものだった。
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お読みくださりありがとうございました。