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俺には二人の妹がいる  作者: 一木空
第四章 高校生の思い出
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意識

 俺たちがこれから乗る予定のジェットコースターは、宙返りがないタイプ。代わりに急降下や急上昇などの移動が激しいアトラクションだ。


 最高速度は優に120を超え、高低差も70近くあるらしい。


「うう~……。ナズナちゃんの希望とはいえ、やっぱり怖いよぅ……!」

「だ、大丈夫……。僕も無茶苦茶怖いから……。一緒に乗り越えよう……!」

 もうすぐジェットコースターに乗る番が回ってくるためか、俺の目の前で翔と真帆がお互いを鼓舞し合っていた。


 元々二人は、俺とナズナがジェットコースターに乗っているところを、地上で見ているだけのつもりだったらしい。

 だが、ナズナが皆で乗ろうと言い出し、結局断ることができずにここまでやって来てしまったのだ。


「大地……。僕が気絶しちゃったら、真帆ちゃんのこと頼むね……」

「おいおい、なに情けないこと言ってんだ。お前が真帆のことを守るんだろ?」

 もちろん気絶したらしたで介抱するつもりだが、気絶するのが前提ではさすがに困る。


 それは隣に座るであろう、真帆も同じ気持ちだろう。


「ナズナちゃんはすごいね……。怖がるどころか楽しそうなんだもん……」

「もちろん、わらわも怖いぞ。じゃが、それよりも楽しみという気持ちの方が強まっておるのじゃ。マホさんもそう思うと良いのではないか?」

 ナズナのアドバイスは真帆には通用しなかったらしく、青い顔から変化することはなかった。


 そして、とうとう俺たちのひとつ前に出発したジェットコースターが戻って来る。


「お次の方、どうぞ」

「ほら、順番が来た。さっさと乗り込もうぜ」

「うう……。わかったよ……」

 尻込みをする翔の背を押しつつ、ジェットコースターに乗り込む。


 俺とナズナが乗り込んだのは、翔たちの席の一つ後ろ。

 恐怖に襲われ、悲鳴をあげ続ける翔を、後ろから眺めてみたいからだ。


「では、発進します。良い絶叫の旅を!」

 係員の言葉が終わると同時に、ブザー音が鳴る。


 その音に不安と期待感を抱きつつ、ジェットコースターは発進した。


「おお、動き出したぞ! これから一番高いところまで移動するのか……。ドキドキするのう!」

 恐怖も不安も抱く様子を見せず、ナズナは無邪気にはしゃいでいる。一方の翔たちは、無言で来る衝撃に備えているようだ。


 コースターは坂を登りきり、視界が一気に開けていく。

 見上げるほどに高かったはずの建物たちが、いまでは眼下に存在する。


 普段は見れない光景に、心を躍らせた瞬間――


「うわあああ!?」

「きゃあああ!?」

 翔と真帆が大きな悲鳴をあげ、コースターが速度を上げる。


 俺が乗った席も引っ張られるように地上へと落ちていく。


「うおおお! ハハハハ!」

「ワッハッハ! すごいのう、すごいのう!」

 翔たちとは真逆に、俺とナズナは笑い声をあげる。


 発進する前に抱いた不安も吹きとび、俺は異常な速度と衝撃を楽しんでいた。


「ひいいぃぃ!」

「ううぅぅぅ!」

「すげーな! ナズナ、向こうが俺たちの住む県じゃないか!?」

「おお、そうかもしれんのう! 学校や家はここから見えるじゃろうか!」

 悲鳴をあげるグループと、高速で移動していく景色すら楽しむグループ。


 異なる楽しみ方をしている内に、あっという間にアトラクションは終わりとなり、最初の乗り場へと戻っていく。


「あれほどの速さで動くとは……! まるで、空を飛んでいたかのような気分じゃ! もう一度乗りたいのう!」

「俺も同感だが、くたくたになってる奴らがいるから我慢してやってくれ」

 安全バーが外され、ジェットコースターから降りると、疲れ切った表情を浮かべた翔と真帆も降りてくる。


 二人とも、激しい恐怖と衝撃で体力を大きく削ってしまったようだ。


「二人とも、よくそんな元気でいられるね……。僕はもう無理……」

「私も……。外に出て休憩しよ……?」

 俺たちは預けておいた荷物を受け取り、アトラクションから出ていくことにした。


 近くにベンチを発見し、翔たちが休憩のために座ろうとしたその時。


「んあ? 何だよナズナ。ちゃんと前見て歩けよな」

 背後を歩いていたナズナが、俺の背にぶつかってきた。


「む……? ああ、すまん。先ほどの凄まじい衝撃により、少しふらついてしまったようじゃ。わらわも休憩したほうがよさそう――」

「お、おい、ナズナ!?」

 ナズナの体が地面に向けて倒れていく。


 なんとか抱き止めることができたが、そのまぶたは開いていなかった。


「ナズナちゃん!? 大地、ベンチに寝かせてあげて!」

「すまん、悪いな!」

 急いでナズナをベンチに寝かせ、様子を見る。


 呼吸はしている。意識を失っただけのようだ。


「な、何か飲み物……! 買ってくるね!」

「真帆も疲れてるんだから、俺が買ってくる。二人はナズナを見ててやってくれ」

 返事を聞く前に、近くにある自販機に駆け寄る。


 飲み物を買いながら、近い未来に起きるであろう出来事に向け、俺は思考を始めるのだった。

ご覧いただきありがとうございます。


次回のお話は、観覧車に乗るお話です。

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