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春の歌
春の終わり、初夏の始め
青緑の風が並木道を通って
葉を鳴らしていく
最後の桜の花びらが空に向かって
飛んでいくのを見ていると
自然と聴こえる
春の歌
空はほのかに青く
雲が渡る
鳥も渡る
遠くの校庭には、リコーダーを吹く子どもたち
体育館のボールの跳ねる音とか
花壇にはチューリップが咲いて
朗らかな歌を奏でている
風の日に、土手を歩いた
見つけたのは
草むらに咲く野の花
たんぽぽのような綿毛の舞う日
春は穏やかに過ぎて
風も穏やかな午後
テーブルには麦茶の入ったグラスが
何年か前と変わらない光のなかで
豊かな時を紡いでいる




