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夏の森の泉に
夏の日に見た、森の奥にあった泉の記憶から
白い花の咲く森の奥に
小さな泉があった
夕方になると静かに
水面は夕空を映した
流れる雲とか
黄昏に輝く樹木を愛して
来る日も来る日も
夕空の訪れを待っていた
晴れの日、雨の日、曇りの日
水面は季節を映した
一日中空を見上げて
去年の夕暮れを思い出すこともあった
泉の底のどこかに沈んでいる
春の日の日記を探して
桜の舞う夕空の
透けていく花びらの影を想った
ある秋の日のこと
睡蓮の葉影から水鳥が飛び立った
空に向かう白い羽ばたきを
揺れる水面は映した
水飛沫は夕陽を帯びて、羽は金色に染まり
夢のようにきらきらしていたから
帰って来ないと知りながら
いつまでも夕暮れの空を映した
幾つもの昼と夜を超えて泉は
夜になると星を映す
凪いだ水面に星を映して
泉は眠り、夢を見る
森の木々や花びらを
水鳥を探して
雲の中に、太陽の影に
白い羽ばたきを追う夢を見る
森の朝が明ける時
木々の間から光がさして
朝霧の立つ泉の
水面は輝いている
泉はまだ眠っているから
早起きの小鳥しかそれを知らない
それはある夏の日の
森の泉のことでした




