62/100
音の風景
窓を開ければ
風の音
車の通る音
通学路を行く子どもたちの声に
生活の音
遠くの鐘の音
音とともに生きている
ある朝、道を歩いていると
道端の雑草の花が咲いて
ちいさな声で
世界に呼びかけていた
今、その花は綿毛になって
世界の五線譜の音符となって
風となって旅をする
山の近くをゆけば
小川が流れる音
トラクターの音
それが途切れた瞬間の
風の音や、鳥の飛び立つ音
穏やかに流れていく
世界の音
高い空には雲が流れて
ゆっくりと過ぎていく
コントラバスよりも深みのある
大空からの青い音
地上まで降りてきたら
トライアングルが鳴り
虹が生まれた
晴れた初夏の日
入道雲から一変して
叩きつけるように雨が降る
その雨や風の音は
窓ガラス越しにも分かる音
激しく吹く風、叩きつけるような雨の音が
世界の溝を埋めていく
雨上がりの前に
紫陽花の花についた雨粒の
滴り落ちる瞬間から
陽射しがさして
きらきら透明に光りながら
ぱらばら散っていく
乾いた爽やかな音がしている
雨が上がる直前の柔らかな雨音は
きっと世界を祝福している




