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きみの悲しみは
きみのかなしみは ぼくのかなしみ
水面にさざなみが立って
ぼくをさらっていく
きみのかなしみがぼくの島に流れ着いたなら
ぼくはそれをそっと掬って
透明な小瓶に入れて、大切に持ち歩いていよう
そのつめたい、やさしい水に手を浸して
流れる雫のきらめきを眺めて
そうして目を閉じて
かなしみの奏でる調べを聴いていれば
片隅に埋もれているままの
ぼくの塵埃も慰められるかもしれなかった
遠い水平線の向こうから聞こえてくる
風の音を聴いていたい
どこか知らない世界への
憧れを呼び起こすその音は
いつまでもぼくの耳から離れてはゆかない
ある晴れた日に
ぼくは一艘の小舟に乗って旅立つだろう
ちいさな小瓶を持って
そうして水平線の向こうから
朝日が昇ってきたら
いい夜明けだねって、笑うかもしれない




