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花散里からの手紙
ある日、郵便受けにひらりと
一通の手紙が届いたのです
開いてみましたらさらりと
風が吹き抜けてゆきました
差出人の名前は分からないまま
けれどもふわりと温かい気配を残して
便箋は薄紅色の花びらになって
はらりと解けていきました
それから空が一瞬だけ花色に染まったと思うと
花びらはみな遠くへ舞いあがって
一枚、一枚と空の彼方の道を通って
花散る里へと還ってゆきました
花びらを見送った後の夕空を眺めていると
きらりと何かが瞬くのが見えました
それは一番星だったかもしれません
静かな夕暮れ時のことでした




